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【世界基準を追いかけろ!】Vol.90「中島啓太のパットが良くなった理由とは」

目澤秀憲と黒宮幹仁。新進気鋭の2人のコーチが、ゴルフの最先端を語る当連載。今回は、中島啓太のパットをチェックした目澤が気づいたことを教えてくれた。

TEXT/Masaaki Furuya ILLUST/Koji Watanabe

前回のお話はこちら

GD 目澤さんはここのところ、中島啓太君のパッティングに関して、パッティングコーチの橋本さん(※1)と一緒に取り組んでいるということですが。何か発見はありましたか。

目澤 ここしばらく自分自身が、パットの勉強をしたり、データをとったりしたことで、いろんな視点からのアプローチの仕方を持てるようになっていました。そのうえで中島君のストロークをチェックしたのですが、彼はストローク中のスウィングの円弧の半径が変わらない素晴らしいストロークをしていました。ストロークが悪いと、円弧の半径が変わって振り子運動でボールをとらえられないんです。ただ、中島君の場合は、それで打点がフェースの上めに当たりやすくて、たまにボールの手前を打つダフリっぽいミスが出ていたんです。

X まあ、あのレベルでのダフリっていうのは我々の考えるダフリとは内容が違うわけでしょうけれどね。


目澤 そうなんです、微妙な話ですが。でも、それをどうやって解決しようかということになって、橋本さんがクインテック(※2)のポールさんという人に直接メールをしたんです。そうしたら、「まずパターをもっとフェースの厚いディープフェースにすること。そして次にボールの下にコインを置いて、パターでコインに当たらないように打つ練習をすればいいんじゃないか。そうしたら芯の上にも当たりづらいし、ダフりづらくもなるから。ディープフェースのパターで重心が高いほうが、フェースの上に当たってもそんなに飛んでいかないでしょう。そうしたらボールのパフォーマンスも変わるし、タッチも出てラインも出せるようになってくると思う」という返信が来たんですよ。

X ディープフェースのパターってジョーダン・スピースが使っていた、スッコティ・キャメロンの009みたいなパターですよね。

目澤 そうですね。コインを置いたのは入射角度を安定させるためで、このコインドリル自体はシンプルな発想だから僕らもやっていたと思いますし、対策としてはインパクトゾーンでヘッドを浮かせて当てないといけないことは分かっているわけですよ。でも、パターをディープフェースにしようという考えは思い浮かばなかったですね。

GD そこに違った視点からのアプローチを感じたわけですね。

目澤 はい。中島君のようにクロスハンドの人は、ディロフト(※3)傾向に当ててしまうので微妙なミスが出る。でもグリップを変えたり、ストロークをいじりたくない。そういう時に、じゃあディープフェースのパターを使ってみればという発想ですよね。でもこれってよく考えてみたら、ドライバーショットとかでディロフト気味に当たる場合の対処法としては、僕らもやってはいたんですよ。それをパッティングでもやるという発想が無かったわけです。

GD 木を見て森を見ずではないですが、技術的な方向からのアプローチで何とかしたかったんでしょうね。

(※1)橋本真和。エンジョイゴルフ&スポーツジャパン所属。パッティング専門コーチ。(※2)クインテックボールロール(Quintec Ball Roll)は、パッティング時に転がるボールの動きをとらえて分析し、ボールがどのように回転したかを計測する機器。(※3)ロフトを立てて打つこと。deloft=ロフトを減らす

目澤秀憲

めざわひでのり。1991年2月17日生まれ。13歳からゴルフを始め、日大ゴルフ部を経てプロコーチに。TPIレベル3を取得。2021年1月より松山英樹のコーチに就任

黒宮幹仁

くろみやみきひと。1991年4月25日生まれ。10歳からゴルフを始める。12年関東学生優勝。日大ゴルフ部出身。淺井咲希、宮田成華、岩崎亜久竜らを指導

X氏 目澤と黒宮が信頼を置くゴルフ界の事情通

週刊ゴルフダイジェスト2022年6月14日号より