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【世界基準を追いかけろ!】Vol.89「目標を達成するための課題を書き出してみる」

目澤秀憲と黒宮幹仁。新進気鋭の2人のコーチが、ゴルフの最先端を語る当連載。今回はジュニアゴルファーのメンタルを強化する際に心掛けていることを話してくれた。

TEXT/Masaaki Furuya ILLUST/Koji Watanabe

前回のお話はこちら

GD ナショナルチームのガレス・ジョーンズコーチは選手の日常生活の指導もするということですが、JOCが掲げる「人間力なくして、競技力向上なし」という選手強化スローガン(※1)とも通じるものがありますね。こういった広い意味でのメンタル分野の指導は、2人ともコーチとしてどう対応をしていますか。

黒宮 もし僕らがそこまでやるなら、まず組織を作らなければできないです。そういう意味では大学ゴルフ部は強みがありますね。

X いろんな分野の専門家や研究者がいますからね。

目澤 IMGも同様ですよね。そういった組織でないと、メンタルのことなどを正確に指導することは難しいですし、僕らスウィングコーチでは限界があります。

GD 本格的な取り組みでなくても、何か人間力と競技力の向上に役立つプログラムを、コーチとしてやったことはありますか。


黒宮 大谷翔平が高校生の時にやっていた目標達成シート(※2)があるじゃないですか。あれを福井工大の中・高・大学生65名に書かせたことがあります。真ん中に目標を書いて、その目標を達成するための項目を周りに8つ設定し、さらにその周りに8個の課題を作るんです。

GD 具体的に皆さんどういうことを書いていたんですか。

黒宮 例えば、真ん中に「優勝」を目標として書き、その周りに「メンタル」、「フィジカル」、「技術」といった目標達成の課題を8つ書きます。その「メンタル」の周りには、「遅刻をしない」とか「テストで赤点を取らない」などといった課題を書くわけです。ただ問題だったのは、それがすべて書けた子は3割くらいで、あとの子たちは81個のマスを埋められなかったんです
よ。

GD 頭の中に課題が出てこないわけですから、何をしていいのか分からない状態ですね。

黒宮 そうなんです。大谷翔平の高校時代に作ったシートの中には「運」という項目があって、それを実現させるために、その項目の周りに「ゴミ拾い」とか「あいさつ」や「本を読む」といった具体的な課題が明確に書いてあったんです。運も自分で引き込もうということですよね。

目澤 まさに、人間力の向上が競技力の向上につながるという例ですね。

GD そういう目標達成シートを書くと、結果も良いわけですか。

黒宮 高校のゴルフ部のメンバーに、中心の目標に「団体戦優勝」を置き、それを達成するための項目を設定するシートを作ってもらったんです。そうやって自分たちが優勝するためにすることを明確にさせた結果、団体戦で優勝できました。

GD ビジネスにおいても、自己啓発として「目標設定」は大事と言われますから、成人したゴルファーもやったほうがよいかもしれないですね。

目澤 身近な目標を立てて、それを達成するには何をしなければいけないのかということを明確にすることは大事ですよ。

(※1)JOC(日本オリンピック委員会)は「人間力なくして、競技力向上なし!」を選手強化のスローガンに掲げる。背景には多くのアスリートが幼少期から長い年月を競技に費やす結果、一般社会と距離が生まれてしまうことも要因としている。(※2)大谷翔平の目的達成シート。高校1年生の時に野球部の監督の指導で作ったもの。目標達成に必要な行動・要素をシートに書き出したもの。中央に最終目標を置き、それを達成するための課題を周囲に8つ設定する。さらに、その8つの項目を達成するための課題を周りに8つ書き出す。合計で81のマス目に目標と課題が記入されたものが出来上がる。通称「曼荼羅チャート」

目澤秀憲

めざわひでのり。1991年2月17日生まれ。13歳からゴルフを始め、日大ゴルフ部を経てプロコーチに。TPIレベル3を取得。2021年1月より松山英樹のコーチに就任

黒宮幹仁

くろみやみきひと。1991年4月25日生まれ。10歳からゴルフを始める。12年関東学生優勝。日大ゴルフ部出身。淺井咲希、宮田成華、岩崎亜久竜らを指導

X氏 目澤と黒宮が信頼を置くゴルフ界の事情通

週刊ゴルフダイジェスト2022年6月7日号より