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【頑固オヤジ】Vol.160「ピン型パターを“トラス”風にアレンジすることはできる?」

東京下町でゴルフ工房を営む店主がギアに関する悩みに答える連載「頑固オヤジのクラブ工房」。今回は、「自前のピン型パターをトラス風にチューンしたい」という声にお答え。

ILLUST/Kochi Hajime

前回のお話はこちら

Q. ピン型パターを
“トラス”風にチューンできる?


ネック部分が三角形のヒレ状になっている『トラスパター』が気になっています。試してみたいんですが、手持ちのピン型パターをチューンして、機能的に近づけるような方法、ありませんか?(44歳・HC8・会社員)


重量の配分を考えてみる

年の瀬とかオフシーズンのグリップ交換、ここ数年でめっきり減っちまったな。新品のクラブを持ち込んで、こだわりの仕様で挿し替える、てのは相変わらずなんだけど、使い込んで擦り減ったから替える、てのが全然ないんだよな、最近。

ラバーより丈夫な樹脂系が増えたとかもあるんだろうけど、使い込む前に中古屋に売って、買い替えちゃうのかな。特にドライバーとか。

必ずしもチューンやフィッティングより、最新モデルでスコアが良くなる、とは言いきれないと思うんだけどね。そういや先日、珍しくパターのチューン依頼があったな。

「オヤジさん、女子プロが使ってる『トラスパター』、オススメでしたよね」

30歳でゴルフを始めた製薬会社の営業マン。昨年までハンデ10で足踏みしてたのが、コロナ禍でラウンド数が減ったのがきっかけで、コースマネジメントを工夫したらシングル入りできたんだと。

「ああ、あれは優れモンだからな。試して損はないよ」

「たとえば、手持ちのピン型を、その『トラス』っぽくできないですかね、チューンとかで?」

パターに求められる寛容性、やさしさはオフセンターヒット時のヘッドのブレにくさなんだけど、実はもっと大事なものがある。ヘッド軌道と打点の狂いにくさだ。

『トラス』の構造は、ネックが2本のバーになっていることよりもフェースの上部に重量があることのほうが効いていて、打点と打面の向きが整いやすいんだとオイラは思っている。

「だから鉛貼りの工夫で近づけられると思うよ、『トラス』に」


ネック近辺に鉛を貼りつける

「でも、自分じゃどこに貼ったらいいかわからないので……オヤジさん、やってくださいよ」

「パター、持ってきな。ああ、普通のクランクネックだな、ちょっと貸してみな」

企業秘密、なんてことはないんだが、ヘッドの重量、重量配分の具合で鉛の重さや貼る位置は調整が必要。まあ、最初はネックに巻きつける感じかな。

「薄い鉛テープ、あるよな。あれをまず2グラムぐらい、クランクの細い部分に巻きつけてみる。これだけでも感覚が変わるんだ」

最近のパターヘッド重量は300グラム超。たった2~5グラムで重心位置は変わらないんだが、慣性モーメントが結構変わる。ネック、つまりヒール上部が重くなると、フェースの開閉が抑えられるんだ。

「ドライバーとかはヒール寄りを重くすると、フェースターンしやすくなるんですよね?」

「そこがヘッド重心を振り回すクラブと、シャフト先端でヘッド重心を引っぱり続けて打つパターとの違いさ。センターシャフトとか、重心距離が短いのと近い感じになるんだよ」

以前、ヒール後方にフィン(ヒレ)が付いたパターとか、逆L字型とか注目されたことがあったけど、パターの場合はトウ側とヒール側がシンメトリーにならないほうが打面も打点もコントロールしやすくなるんじゃないかな。

「2グラムで足りなかったら、4~5グラムまで増やしてみる。昔のピンパターぐらいヘッドが軽かったら、鉛が少なくても結構変わると思うけどね」

「フェースバランスとかセンターシャフトのものも変わりますか?」

「もちろん。ネックが重くなると重心深度が浅くなる感じで操作しやすくなるし、ヘッドのタテ方向の慣性モーメントが若干上がるから、打点の上下のブレに強くなるかな。1ミリぐらいだろうけど」

でもこの1ミリ、ヘッドや打ち方によっては転がりの安定性、距離感のズレを減らす要因にもなるから、試す価値はあるよ。

月刊ゴルフダイジェスト2023年2月号より