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【ゴルフ野性塾】Vol.1739「スコア支えはアプローチ」

古閑美保、上田桃子など数多くの名選手を輩出してきた坂田塾・塾長の坂田信弘が、読者の悩みに独自の視点から答える。

前回のお話はこちら

昨日の事は浮かばないが、

フッと10年前を想う事がある。
昨日の夕食、何を食べたかを考える時、少しの時間必要となるが、10年前のあのきつねうどん旨かったな、との想い生じるは瞬時だ。
私は自宅の食堂のテーブルで原稿を書く時、東と南の街と山を眺めながら執筆を続ける。
ギラついた白き雲、東の山の上に浮んでいる。
この景色、何処かで見た景色と思う。
あれは、沖縄、那覇の空だったか。
現在時6月23日午後1時52分。
晴れている。
東のビル、南寄りの日射しを受けて輝く。
飛行機過ぎる音が聞こえて来た。
しかし、機の姿は見えない。
暫く経って、ようやく南から北へ向って着陸態勢一機、ゆっくりと降りて行くのが見えた。
梅雨の最中の晴れ。
女房殿、洗濯で忙しそうだ。

距離ピッタシのアプローチを磨け。

何度も70台の壁に阻まれています。ベストスコアは80、ハーフでは37です。なんとか70台で回ろうと、一生懸命練習してきましたが、どうしても壁を破ることができません。最後のホールがダボでも70台、というときもティーショットがOBでした。前半30台が出ると、後半に崩れることが多く、前半スコアが悪いと、後半は30台が出たりとチグハグです。塾長、どうすれば70台を出すことができますか。(東京都・村山優真・38歳・ゴルフ歴12年・平均スコア88)


ハーフ37で回れたならばラウンド74で回れる筈。
研修生時代の私はそう考えていた。
ハーフ35で回れた時、ラウンド70で回れると考えた。
常識的に考えれば図々しい考えである。周りから己の力を知らぬ傲慢むき出しの考えだ、ゴルフをなめ過ぎている、それ程の才能か、との批判も受けた。
常識は批判の力を持つ。
その力に屈した者は多い。
ゴルフに於ても他の領域に於てもだ。
そして常識に飲み込まれ、いつの間にか常識側に立つ人となって行った人を多く見て来た。
平成5年、熊本塾を開いた。常識から生じた批判だけはすまいと覚悟した。
才能は信じず、子供の努力だけを信じて行こうと思った。
その為には平等が要った。
練習環境、指導環境の平等を目指した。
そして努力だけは不平等。塾生達それぞれの努力に平等はないが故にだ。

練習環境、指導環境の平等を生むには道具、練習場、ゴルフ場の無料が必要だった。
そして親の負担は送り迎えの労と運動靴だけとした。
テレビ熊本にも熊本の財界人にも5つの練習場にも熊本の6つのゴルフ場にもダンロップにも図々しいお願いをした。
皆、聞いてくれた。受けてくれた。彼等の支援なしで無料の旗印挙げる事は出来なかった。
熊本には愛と寛大さと付き合いの良さ持つ郷土体質があった。
それが熊本塾、そして熊本に続く札幌、福岡、船橋、名古屋、神戸塾開塾の力となったは確かだ。
29年過ぎた今、塾が成功したのか、失敗したのかは分らない。
ただ、その事、私が判断する事ではない。周りにやって貰えばいい事だ。
男女合せて95名がプロテストに通り、13名が一度はシード権を得ている。
神戸塾は残す。プロテストに通る数もシード権得る者の数も増して行くと思う。

私はゴルフ始めて3年と11カ月でプロテストに通った。
ハーフ33で回ればラウンド66を目標スコアとした。
研修生に金の為のゴルフはない。プロになって初めて金の為のゴルフが始まる。
研修生のゴルフはプロテスト合格の為だけである。
ハーフ33で回れば後のハーフは36で充分との考えが研修生の、そして指導者達の考えであった。
ハーフ33であれば残りのハーフも33で、はプロテストに通り、ツアー参戦している者の考えである。
常識より一歩先に行けば非常識だ。
研修生の私は一歩先に行ってただけであり、非常識との思いは持っていなかった。
ツアー参戦した。
一歩前を見られないプロになって行った。予選通る事を最優先とした。
私は常識人となった。
試合に出るからには優勝、優勝するからには日本一、そして世界一とゆう一歩先を見る事の出来ぬプロになっていた。
勝つ者は戦いが楽しいと言う。
当り前だ。勝って楽しくないと言う者がどこにいる。
私は楽しくなかった。
最初は楽しかったが、徐々に苦しくなって行った。
常識で生きて行って成功はしないと思う。常識の一歩先を歩かなきゃ駄目だと思う。
その一歩先が見えてりゃ何とでもなる。頑固さも素直さも生き行く武器となる。だが一歩先が見えぬと頑固さ、素直さは悪しき性癖となって行く。

抽象的な事を述べた。
貴兄の悩みへの答えを述べる。
ハーフ37のゴルフだ。
ラウンド74を目指せ。
80切りを目指せばハーフ37の後はハーフ42を目指す様になる。
となれば5打の臆病、慎重、躊躇、そして不安が生まれる。
ハーフ37の後、ハーフ36を目指せとは言わぬ。
それは爪先立ちであり、理想倒れとなる可能性が生じる。
ハーフ37であればハーフ37を目指すが常識の一歩先の発想と思う。
人間、一歩は一歩。
一歩が二歩三歩の歩きの幅、生む事はない。一歩が大切。
貴兄は一歩が乱れている。
覚悟が乱れている。
腹を叩け。
腹を叩けば背は伸びる。
いつの時もハーフ37が貴兄の目標である。
前半37で回ろうが、45叩こうが50叩こうが後半、37を目指せ。
前半50叩いても後半、目指すスコアは37である。それで常識の一歩先は歩ける筈。

私は歩けなかった。
塾生には歩けと教えた。
人の多くは前に進んでいる様でも己の半径の中をグルグルと回り続けている様な人生を送っている。
私がそうだ。前に歩むは結構難しいものである。

常識持つは悪い事ではない。
常識学ぶも悪い事ではない。
常識が出す批判に乗じるが悪い事と思う。
そうなった時、己の生きる場は己の半径の中となろう。
ハーフ37を目指せ。
その為に何が必要か。
アプローチだ。
カップ迄ギリギリの距離で打って行けるアプローチを目指せばよい。
方向よりも距離。オーバーやショートよりもピンピッタシの距離出せるアプローチが必要。
方向は右2メートル3メートルにズレてもいい。距離が合った時、自信が生じる。
方向が自信生む事はないが、距離は自信を生む。
それが一歩先の常識だ。
以上。

坂田信弘

昭和22年熊本生まれ。京大中退。50年プロ合格

週刊ゴルフダイジェスト2022年7月12日号より