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【ゴルフ野性塾】Vol.1720「長所を伸ばせば全体のレベルは上る」

古閑美保、上田桃子など数多くの名選手を輩出してきた坂田塾・塾長の坂田信弘が、読者の悩みに独自の視点から答える。

前回のお話はこちら

今日2月3日、マンション15階

から外へ出ぬ日が続く。
福岡市内の小学校中学校の休校の報が入って来る。コロナ絶好調の時と思うが、いつ迄も続く絶好調はない筈だ。そう信じて外へ出ぬ日々を過す。
私は頑固者である。
人が右と言ったら眼を閉じる偏屈さを持つ。世が騒ぐ時、眼を閉じてその騒ぎを無視する偏屈さである。
松山英樹がマスターズに勝った時、テレビ、雑誌、新聞が私のコメントを求めて来た。
私は断った。本稿にも書かなかった。松山英樹とマスターズの一文字もだ。
一昨年2月、コロナの文字が踊り始めた。踊るのは嫌いだ。踊らされるのはもっとイヤだ。踊りたくて仕方ない人は多いと思う。踊りたい人、騒ぎたい人に踊って騒いで貰えばいいと思う。
私は評論家ではない。私は沈黙する。コメンテーターなんて肩書き、真っ平御免。私は山手線の外に住む人間である。
松山英樹とマスターズの文字、初めて書いた。松山のゴルフはオーガスタで何年も続けて見て来たからある程度の事は分る。松山を書く時期とゆう気はする。
ただ、迎合しない。誉めて称えてなんて原稿には鳥肌が立つ。
勝てば周りは騒ぐ。
そして、騒ぎは消える。
それがイヤな偏屈者、肥後モッコスなのであります。
長男雅樹が言った。
「親父ってこんなに頑固でせっかちだったかな。俺の知ってる親父はもっとゆったりした性格と思っていたけど」
「年なのよ。でも年取って角が出て来るなんて珍しいよネ。付き合う方は大変だけど、コロナで外に出る事もないし、丁度いいんじゃないの。上手く出来てるわ、人の世の中って」
雅樹も女房も分ってない。
73歳過ぎて熊本の県民性が出て来ただけだ。肥後モッコス。
然り気なく過しております。
体調良好です。

打てるクラブを練習せよ。6カ月で変る。 

フェアウェイウッドが打てません。一応、3Wと5Wをバッグに入れていますが、コースで使うことはめったにありません。今日は調子がいいぞ、と思って使っても、だいたいトップ、そうでなければダフリ。3Wなどは、当たったと思ってもユーティリティより飛びません。パー5のセカンドショット、3Wで2オンを狙うゴルフがしたいのですが、チョロを恐れてユーティリティかアイアンでしのいでいます。塾長、どうすればフェアウェイウッドを打てるようになりますか。(愛知県・木村勇斗・41歳・ゴルフ歴7年・平均スコア95)


私の経験で申すが、練習に希望や期待持っていた時、そして練習もコースラウンドも楽しかった時、不得手とするクラブはなかったと記憶する。上手く打てないクラブは練習したし、コースラウンド時の球1発で不得手意識、解消出来た事もあった。
私のゴルフは鹿沼CCの倉庫の中から選び出したミズノの7アイアン1本から始まったが、そのクラブは忘れ物クラブだった。
そして、鹿沼に入社して10カ月後の従業員コンペ、貸クラブでプレーした。7本セットの貸クラブでウッドはドライバーと3ウッド、それに5、7、9アイアンとサンドウェッジ、パターの7本セットだった。ラウンドボールと練習ボールに不自由する事はなかった。
北コース1番の左と9番はOB。
マムシ注意の看板が立つホールであり、OB打ってもキャディさんが捜しに行く事のないホールだった。雑木の繁るOBゾーンであり、私も行かなかった。
OBの中の斜面は急であり、滑り易くもあって、打った人も捜して来いとは言わなかった。鹿沼CC36ホールの中で捜さないでいいのはこの2ホールだけだった。
週休日の月曜、私は北コース1番と9番のOBの中に入った。
ゴムの長靴を履き、軍手と首にタオルを巻いて入った。
1週間分のOBボールは多かった。新球もあった。1時間捜せば50球、多い時は70球のロストボールを見つけた。蛇に出会う事はなかった。湿地であり、蛇もいたと思うが会わなかった。
ゴルフ始めて10カ月後、栃木県のアシスタントプロ研修会に出させて貰ったが、鹿沼CC北1番のOBボールでプレーした。
インパクトの感触には無頓着の頃であり、傷付いていないボールであればどんなボールでも良かった。クラブは貸クラブから卒業し、先輩からタダで譲り受けたクラブを使っていた。
一日2ラウンド競技、6カ月平均12ラウンドの上位3名はプロテスト受験の資格を得る競技会だったが、私の初陣スコアは88・76の164だった。コースは日光CC。翌月、72・72のパープレーで優勝した。コースは小山GCだった。
そして、ゴルフ始めて3年と11カ月でプロテストに通った。
新品のクラブを使った事は一度もない貧乏研修生だった。

研修会に出させて貰った時は11本セットのクラブでプレーし、プロテストは14本のクラブでプレーした。ウッドは3本、アイアンは2アイアンからサンドウェッジ迄の10本。そしてパター1本。ボールはダンロップが無償支給してくれた。グローブはなしの素手プレーだった。
不得手と思うクラブはなかった。
得意なクラブばかりを練習していたと記憶するが、得意なクラブを練習すればいつの間にか不得手クラブは無くなっていた。
14本のクラブの中にバッグの飾り物クラブを入れておくのは損だと思った。それで得意なクラブの練習に励んだ。結果、クラブへの不得手意識は消えた。
不得手なクラブを練習すれば得手のレベルは落ちると思う。
熊本にジュニア塾を開塾して1年後、ジュニア塾一期生に問うた。
「打てないクラブはあるか?」
14名の熊本塾一期生全員があると答えた。バラバラだった。
ウッドを苦手とする者もいればミドルアイアンを苦手とする者もいた。
苦手意識を取り除きたければ2番手離れたクラブを打てと命じた。
ドライバーが苦手であれば3ウッドか5ウッドを打て。3アイアンが苦手であれば5アイアンを打てと命じた。苦手なクラブ、ミス頻発するクラブは打つなと命じた。1発もだ。
長所を伸ばせば全体のレベルは上る。短所を矯正しに行けば、長所の練習量は落ちて長所のレベルは下がり、全体のレベルは平均化する。
ハンディゼロ迄のゴルフは長所と短所の差はあった方がいいと思う。長所と短所の差、無くなるのは常にアンダーパーで回れる様になってからだ。
多くの方はハンディゼロに達する前に苦手意識の克服に眼を向けている。早過ぎた。

貴兄は3Wと5Wを入れているが、バッグの飾り物となっている様子。
だったら抜いた方がいい。
稽古事の上達には覚悟も決断も要るが、打てないクラブ抜くのも覚悟と決断で抜けばいいと思う。そして、打てるクラブの練習に精出せばいいのです。
苦手意識解消よりは得意クラブを伸ばしに行く方がスコアは良くなるものだ。
坂田ジュニアゴルフ塾指導の根幹は得意クラブへの集中練習であった。徹底して6アイアンを打たせた。
ドライバーが苦手であれば3ウッドか5ウッドを打たせた。
7アイアンを苦手とする子には9アイアンを打たせた。
そして、苦手とするクラブはバッグから抜かせた。
飛距離の出るドライバーを使いたい。しかし、曲る。飛距離も出ないではバッグに入れておく意味と価値はない。意味と価値のないクラブは飾り物である。
ドライバーを打ちたいと塾生は願った。3ウッドの練習は増えた。そしてドライバーが打てる様になり、バーディとパーの数は増えた。それがゴルフ始めて1年の塾生のゴルフだった。

貴兄は3Wと5Wを外せ。
3Wと5Wの飛距離と球質に頼るから今度は上手く打てるのではと期待するのです。
期待を捨てた時、覚悟と決断生じると思う。
貴兄の今は期待を捨てる時。
飾り物クラブは外すが最善。
それで貴兄の覚悟と決断、新たなものを生むであろう。
平均スコア95の方であれば6カ月で変る。

坂田信弘

昭和22年熊本生まれ。京大中退。50年プロ合格

週刊ゴルフダイジェスト2022年2月22日号より