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【ゴルフはつづくよどこまでも】Vol.58「宮本慎也さんに学ぶ引退後の自分磨き」

高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。

PHOTO / Tsukasa Kobayashi

前回のお話はこちら

元ヤクルトスワローズの宮本慎也さんとまわったときの話です。

野球のことをよう知らん人のためにちょっと解説すると、2000本安打を打ちゴールデン・クラブ賞にも輝いたすごい内野手やし、アテネ五輪、北京五輪ではキャプテンを務めた名手です。

意気投合して、上がってからお茶しながらしばらく話をしました。

「宮本さんは長いことヤクルトにおって、仕えた監督のなかで一番やと思う人は誰ですか?」と聞きました。そうしたら「現役のときに思ったことですか、それとも今振り返ってのことですか?」と聞き返すので、「今思うとる人です」と言いました。

「やっぱり野村克也さんやね。野村さんは、現役のときはほんまに鬱陶しい思いをして、何でこんなんしてるのに、怒られなあかんのや思ったもんです。けど、今となってはすごいことを教わっていたというのがわかる」と言うのです。


確かに、そのときは鬱陶しいと思っても振り返ればありがたいというのは僕にもあります。

「現役を終わるときに野村さんにあいさつに行ったら、『引退するのだったら、これからは講演をやりなさい。講演をやると自分が伸びていけるから』と言うんです。野村さん自身引退した直後に講演を依頼されて、やってみたものの、1時間半の持ち時間やのに、しゃべり始めたら20分で終わってしまったと言うのです。あまりにもものを知らんことに衝撃を受けたと。これではあかんとものすごく本を読むようになったそうです。「『宮本くんも講演で自分を磨きなさい』と教えてくれました」と宮本さんも本を読むようになったそうです。

それで「僕も野村さんの本はだいぶ以前やけど2冊ほど読みました」と言ったら、「奥田さん、10冊ぐらい読まなあかんですよ」と言われてしまいました。

野球の選手は、引退したら基本的に仕事はありません。監督、コーチ、解説者になれるのは、ほんの一握りで、多くは飲み屋とか始めて大半は失敗するそうです。

「NHKの解説をさせてもらって、仕事があるだけでありがたいです。それも野村さんのおかげです」と言うのです。

プロゴルファーにはシニアという次のステージがありますけど、そこに出られるのは60~70人程度。出られるだけでも感謝せなあかんのですけど、自分磨きも忘れたらあかんなと、宮本さんと話をして、つくづく感じさせられました。

本をたくさん読みましょ!

「野球の宮本慎也さんにええ話を聞かせてもらいました」

奥田靖己

おくだせいき。1960年、大阪生まれ。93年日本オープンなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂び、温故知新を追求する

週刊ゴルフダイジェスト2021年11月30日号より