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【林家正蔵の曇りのち晴れ】Vol.270「父親の新盆で悲しい出来事」の巻

ILLUST/アオシマチュウジ

最近では、東京でのコロナ感染者が4000人を超すなど、かなり多くの感染者が出てしまっています。緊急事態宣言も出てしまい、不要不急の外出はしにくいなか、僕の友人が父親の新盆のために山形に帰ったそう。そこでかなりの嫌な事があったらしく、怒りに満ちた感じで電話をしてきたんです。こんなご時世だからこそ、みんな温かくいたいですよね……。

前回のお話はこちら

密を避けてのマイカー帰省もしづらい時代

ゴルフ仲間より着信があり、折り返しの電話をしたのだが、すぐに留守電になってしまった。「なにかありましたか。気がつかず、電話を取れませんでした」とメッセージを残しておいた。それから数時間たってから、友人からのコールバック。ものすごい勢いでしゃべり始めたのは、やるせない怒りだった。

その内容は、こういうことだ。彼の実家は山形にあり、父親の新盆なのでお線香をあげるために里帰りしたそうだ。本来ならば新幹線で家族そろって里帰りをする予定だったそうだ。

ところが、このコロナのご時世、密になるのも怖いので、マイカーで彼一人が山形へ向かった。その日は泊まり、翌日はゴルフが大好きだった彼の父親のホームコースで、親戚とともに1組でゴルフをした。亡き父親の愛したコースで親戚のものだけ。たった4人で思い出話をして、いいご供養になった。

ここまではよかったのだが、彼が乗ってきた東京ナンバーの自家用車のフロントワイパー部分に紙が挟んであり、赤マジックの太い大きな字で「コロナ野郎! 山形にばい菌を持ってくるな! さっさと東京へ帰ってくれ」と書いてあったそうだ。

車自体には傷もタイヤのパンクもなかったので、あえてコースのフロントにこんな嫌がらせがあったという報告をすることはしなかったそうだが、せっかくの父親の新盆での帰省がとても複雑なものになってしまった。今は怒りよりも悲しい気分で心がいっぱいになってしまったと話していた。

その話をしたら東京から戻ってくるものに、ずいぶんひどい仕打ちをする地元の人も結構多いというのだ。帰省ならまだしも、勤めていた会社がコロナで倒産してしまい、コックになる夢が破れて、次の職もなく、泣く泣く実家に戻ってきた若者にも「コロナ野郎」とか「ばい菌」などという悪意のこもった言葉を投げつける人もいるのだという。とても悲しいことだ。

外出禁止を守り東京五輪で感動を味わう

東京は日々、感染者が急増している。不要不急の外出は禁止とのことだから、仕事以外はとりあえずこの原稿を書いている現時点では、9月までゴルフへ行くのはお預けにしようと考えている。本当は行きたい気持ちでウズウズしている。

2回目のワクチン接種も終えて、新型コロナウイルスワクチン予防接種済証なるものをいただいている。マスク着用、会話を控えて周りに人がいないときは、炎天下などの状況でマスクを外してゴルフをしている分には、構わないようだが、それでも現在4000人以上の感染者。ステージ4、緊急事態宣言下、一都四県も入っているので、いつものコースに軽々に行く気分にはどうしてもなれないのが正直な気持ちだ。

なかには、ゴルフは大丈夫、屋外なんだからといっても、県をまたいでの行動には慎重にならざるをえない。だから、時間があるとオリンピック観戦をして、スポーツから感動と勇気をもらっていた。

松山選手が出場した男子ゴルフも中継で見ていた。国内でゴルフ中継をしているのだが、国内ツアーとは違ったカメラのアングルがそこかしこにあり、大変お金のかかったカメラワークに感心してしまった。

58年の人生においてたった一度、東京五輪の会場である霞ヶ関カンツリー俱楽部でプレーしたことがある。もう20年以上前のことだ。ある会社の会長さんからのお誘いで伺った。とても素晴らしいコースだった。気品というか、高貴なという言葉にふさわしい風格があった。

フェアウェイも緑のじゅうたんで敷き詰められているような感じで、メンテナンスもお見事だった。

霞ヶ関と自宅近くでのカラスの共鳴

俺も一度、ここのコースを回っているんだよなーと感慨とともに、なにか日本ならではの、諸外国と違った和の趣のあるコースの素晴らしさに感動した。

一流選手のプレーにくぎ付けになっているものの、マスクを外したときに談笑し、握手しハグをし、のびのびとゴルフをしている様子を見ていると、部屋にこもり、必要最低限の外出以外、表に出ない自分がいることに驚きを禁じ得なかった。

しかも、隣の埼玉県が会場。同じ日本で緊急事態宣言下。まるで異国の光景を目の当たりにしているような違和感を持ったのは私だけだろうか。

松山選手が8番のティーショット。カラスが「カァー」と鳴いたため、一度プレーを中断し、仕切り直したら同じタイミングでカラスが鳴いて、このパー5、本来ならばどうしてもバーディが欲しいところを痛恨のボギー。カラスのやつめ!と画面に向かって叱りつけた。すると窓の外の電線に止まっていたカラスが「カァー」と鳴いた。こんなこともあるもんだな。どうせなら部屋の中よりコースで聞きたいものだ。

ゴルフがのびのびできる日は、いつになることやら。

無観客 カラスの鳴き声 こだまする

月刊ゴルフダイジェスト2021年10月号より