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【ゴルフ野性塾】Vol.1696 「音が振り抜きの体勢を作る。」

KEYWORD 坂田信弘

古閑美保、上田桃子など数多くの名選手を輩出してきた坂田塾・塾長の坂田信弘が、読者の悩みに独自の視点から答える。

今日7月28日。午後1時35分。

本稿、ファックス送稿の後、長男雅樹と共に周防灘CCへ向います。そして、明日と明後日、ゴルフだ。
この暑い時にとは思うが、雅樹運転の車だと1時間半で行けると言うし、ワクチン接種も終ったし、少しは歩いてみるかと思って決断した次第です。雅樹も大手前大学ゴルフ部員も1回目のワクチン接種終えている。
今日も暑そうだ。
入道雲の輝きが強い。

シャフトの風切る音を聞け。 

ゴルフ歴16年の月イチゴルファーですが、いまだに100を切ることができません。ドライバーもアイアンも、ボールに当てようとするあまり、インパクトで合わせるように打っているとゴルフ仲間に指摘されます。どうすればヘッドスピードを落とさずに振り抜けるでしょうか。また、念願の100切りはできるでしょうか。(長野県・田中真一・55歳・ゴルフ歴16年・平均スコア110)

振り抜くコツなれど、音を使えばいいと思います。
シャフトの起こす音、クラブヘッドの起こす音、そして心の中の音を使えばいい。
スウィングの型、体の動き様、スウィングリズム、あるいはボール捉えるタイミング等を振り抜く目安とされてる方は多いが、それ等はボール毎に変るものである。
そしてミス一つ、自信の浮き沈みで変って行く。
ミス一つで変らぬ目安を持つ方の上達は速い。
自信が浮いてる時の体・技・心のバランスはいい。
自信が沈み始めた時の体・技・心のバランスは崩れ始めていると思う。
自信は消え行くものではない。浮くか、沈むかである。

私はトロフィーのある勝利は1つ、残り5つの勝利は賞金だけとゆう三流半のプロなれど、トロフィーある試合での勝利、自信の浮きを感じていた。
どう打っても曲らぬ、距離の前後のズレも5ヤード迄と思って打っていた記憶がある。
自信が沈めば不安が生じる。
ミスへの恐れも生じ、スウィングか、感覚か、ボール位置か、アドレスか、呼吸か、何も考えずに成り行き任せとゆう己を投げたる気持ちのどこかで対応せねばならぬと思うが、上手く行った記憶はない。
愚鈍、凡才の身ゆえに同じミスの繰り返し続けて来たが、ツアー参戦時、自信の浮き沈みある事、浮き時の維持、沈み時の対応に気付く事はなかった。
一流と三流半違いははっきりとしている。
30歳の時の体と技はそのままに心を現在の己のものに差し換える事出来ると考えた時、一流は心も30歳の己に勝る結果は出ないと思うであろう。
三流半は30歳のゴルフよりは心、今のものであればいいゴルフ出来るとの考え持つと思う。
一流は常にベストを作る。
三流半はいつも不足を感じる。
我が身がそうであった。
一流は過去に生きず、今とすぐなるこれからに生きる。
遠いこれからに生きる事はない筈だ。
三流半は過去と今に生きる。
そして、その差は大きい。

今に生きるは人の常なれど、今に生きる気持ち、強く持つ者程、強き戦い出来ると思う。
弱き者の戦いは今に生きる気持ちと覚悟、弱い様な気がする。
私には覚悟が足りなかった。
覚悟なきプロゴルファー生活続けて来た。
今は分る。当時は分らなかった。
自信を持てと人は言う。
その自信、どこから持って来ればいいのかを明確に教える人は少ないと思う。
練習せよ、と人は言う。
その練習が何を生み、そして己の身にくっ付く自信生むのかを教える人はこれまた少ないであろう。

自信を生むはアプローチ練習である。
アプローチが寄ればパッティングへの気持ちの負担は少なくなる。
入れて溜息、外して溜息のゴルフだと、次のティーショットへの気持ちの負担は強まるが、溜息出ぬホールアウトに次のティーショットへの負荷はないと思う。
溜息は自信を沈める。
グリーン外しても、俺はアプローチ上手いから外しても怖くない、との想いあれば愉快なゴルフは出来る。
アプローチへの不安生じると楽しさは消える。
自信は己の中のどこかに宿り続けるものと思う。
姿を現したり、消えてしまったりの蛍の灯りみたいなものじゃない。気持ちの中に沈めなきゃいいんです。
常に浮き続ける自信が欲しい。
自信は眼に宿る。
眼の力、強き者は浮きの自信を持つ。
眼線、左右に揺れる者は沈み掛けの自信で生きているのではと思う。

私においしい話を持って来た者がいた。
眼を見た。
強い力を感じた。
ただ、軽いと思った。
その話は断った。
おいしい話を持って来た男のその後は知らない。
眼の力には強さと重たさがあると思う。
「人相は悪い。好かれるよりは嫌われる人相だ。眼と鼻と口の形は悪いし、バランスも悪い。でもね、一つだけいいところがある。眼の重たさだ。そこだけだ、取り柄は」
口の悪い爺様だった。
いつも酔っ払っていた。
私はその爺様の飲む酒を買いに行かされた。
柔道師範だった。
父は銃剣道師範。
父よりは遥かに年上の方だったが、父は爺様の長逗留を喜んでいた。
父は製菓業を営み、工場一つ、菓子店舗4つを持つそこそこの経済力を持つ男だった。
爺様は小学1年の私に柔道を教えた。
最初は私の家の畳の上だったが、1カ月せぬ内に公園の土の上が指導の場となった。
家の中では埃が立ち過ぎる、床が抜けると母がクレーム付けたからである。
畳の上でも公園でも投げられっ放しだった。
「受け身は体で覚えよ。それがお前の身を助ける」と爺様は言った。
教わった投げ技は一つ。大外刈りだった。
組手は両襟を持つ古武術の組手だった。
喧嘩には役に立ったが、競技柔道は柔道場に通う弟の方が強かった。

爺様のその後は知らない。
流浪の人だったと思う。
爺様がいなくなった後、父は一人で酒を飲んだ。
爺様と飲んでる時は大声で笑い合っていたが、一人で飲む父に笑いはなかった。
母は喜んだ。
「信弘、暫くの間、痛い思いせずに済むよ」と言った。
爺様に投げられても痛くはなかった。
最初は痛かったが、身を半身にする事で痛みから逃れる術を覚えていたからである。
爺様は父の工場で暇潰しのあんこ練りをしていた。
父のいい友だったと思う。

今、鏡を見る。
眼の重たさと爺様は言った。
貴兄はシャフトの風切る音を聞け。
それで振り抜きの体勢は生れる筈だ。

坂田信弘

昭和22年熊本生まれ。京大中退。50年プロ合格

週刊ゴルフダイジェスト2021年8月17日号より