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【笑顔のレシピ】Vol.85「信頼関係を築くには、ある程度の時間が必要です」

TEXT/SHOTANOW

メジャーチャンプ・渋野日向子を育てた青木翔が“コーチング”のこだわりを語る連載「笑顔のレシピ」。ゴルフだけでなく、仕事や育児などでも役立つヒントが満載!

人に何かを教えるのは、とても時間がかかります。特に選手に自立を促すコーチングの場合、成長までにかかる時間をコーチがコントロールすることはできません。

まず、コーチは選手との信頼関係を築く必要があります。なぜなら、選手にかける言葉一つとっても、互いによく知らない関係で言われるのと、信頼している人に言われたのとでは、納得度が違い、それは取り組み方にも“差”として表れてしまうためです。これは日常生活で、知り合って間もない人に深刻な悩みを打ち明けづらいのと同じことです。

ちなみに、オーガスタ女子アマを制した梶谷翼。僕は彼女のコーチを務めるようになって2年が経ちますが、最近になってようやく「信頼関係が築けてきたかな」と思うようになりました。

お互いに同じ目標に向かっている者同士でも、距離を縮めるのにはとても時間がかかり、特別な近道はありません。理解するためにたくさん話をして、時間をかけるのが唯一の方法なのです。

信頼関係ができあがっていても、新しい取り組みをするときにはこれまた時間がかかります。

先日、幼稚園に通う息子にひらがなを書くというお題が出されました。自宅で字を書くのは初めてのこと。でも、彼がやりたいのはお絵描き。書いてみてごらんと促してみてもなかなか筆が進みません。だから僕はひざの上に乗せて、一緒に鉛筆を握りながら楽しくなぞることから始めました。

結局「あ」の1文字を書くのに、かかった時間は20分(笑)。無理やりやらせれば、3分程度で終わったかもしれません。でも、それでは字を書くことの楽しさを見つけることができず、これから先、書くこと自体をつまらないと感じてしまうかもしれません。一度そうなったものを軌道修正するのは、さらに時間がかかります。信頼関係を築くにも、新しい取り組みに夢中になってもらうのも、時間は惜しみなく使うようにしています。

すぐに結果を出せなくても慌てず、焦らず、じっくりと待ってあげることも大事です(PHOTO/Hiroyuki Okazawa)

青木翔

あおきしょう。1983年生まれ。福岡県出身。渋野日向子をメジャーチャンプに導き、三ヶ島かななどツアープロや、全国トップレベルのジュニアゴルファーの育成に努めている

週刊ゴルフダイジェスト2021年7月13日号より

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