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【世界基準を追いかけろ!】Vol.43「実績のないころはほぼ無償でコーチングしていました」

TEXT/Masaaki Furuya ILLUST/Koji Watanabe

松山英樹のコーチを務める目澤秀憲、松田鈴英のコーチを務める黒宮幹仁。新進気鋭の2人のコーチが、最先端のゴルフ理論について語る当連載。今回は「なぜ2人はコーチになったのか?」その経緯を話してくれた。

GD お二人がコーチ業をやり始めたきっかけは?

黒宮 以前も話しましたが、大学3年生の時に、ケガをして、当時受けたQTに落ちたんです。同時期にイップスに悩んだことも重なって、もう選手をやめようと思い、その時に梅山知宏からショートゲームを教えてほしいと言われて始めたのが最初です。その後、正式にコーチとして選手と契約したのは松田鈴英が最初ですね。

GD 目澤さんは?

目澤 大学卒業時にプロを目指すか就職かで悩んでいた時にTPIという存在を知り、それで卒業後に渡米してTPI(※1)のレベル1を受けました。プロテストの最終テストまで行ったんですけど、2回受けて2回ともダメで、それで25歳の時にコーチになろうと決心しました。

GD 当初、一番困ったことって何ですか。

黒宮 最初に困ったのは、今の自分たちが受けることができる報酬はどれくらいかということです。契約金とインセンティブがどれくらいかが分からなかったし、相談する相手もいなかったんですよ。

GD  一般に知られている話では、コーチの報酬は獲得した賞金の数パーセントということですが。

黒宮 実際、それだけでは職業としてやっていけないんです。コーチが得る報酬はそのようなインセンティブ(出来高報酬)と契約金のセットが基本なんです。

GD なるほど。契約金の相場は決まっていたんですか。

黒宮 それは出す側の問題なので、僕らは何とも言えないんです。

GD でも、契約金が安い場合、選手の成績が上がらないと“奉仕”のようなことになりませんか。

黒宮 一年間試合をやっていくのに、最初に大きな金額を貰ってしまうのは良くないとコーチを始めたころ思っていたので、最初は契約金も安くして、ほぼボランティアのような形でやっていました。そこは二人とも熱量がありましたし、これを仕事の形にしようよという気持ちが強かったんです。

GD 最初はほぼ無償でやっていたということですね。

黒宮 自分たちに実績もなかったですし、まだ何もやっていなかったので。最初の2年間はTPIの講習を受けたり、フライトスコープなどの機材を入れたりして、いろんな情報をインプットしました。それは自分たちのためじゃなく、選手のためにやるべきだと思ったことです。その考え方はTPIで教えてもらったことなんですよ。TPIで言われたのは、あなたたちはあくまで選手をサポートする立場なんだよということ。コーチやトレーナーが、いくらきれい事を並べたてても選手が勝たなきゃ認められないので、そういう選手を世界に向けて出し続ける、その気持ちでやっていました。そこから5年で目澤くんがコーチとして松山英樹のマスターズ優勝という結果をひとつ出してくれました。

目澤 コーチを目指そうという人のためにも、コーチ界を良くするためにも、まだまだ頑張らねばと思います。いくら稼げるか分からないような状態じゃ、今後、若い人が目指せないですから。

※1「TPI」=Titlist Performance Institute。最先端の分析技術施設を備える、認定インストラクター の養成機関。世界60カ国以上のインストラクターが認定取得する。TPIの共同創設者のデーブ・フィリップスは、米国ゴルフダイジェスト誌におけるゴルフインストラクタートップ50に選出されている。目澤はTPIのレベル3を取得

目澤秀憲

めざわひでのり。1991年2月17日生まれ。13歳からゴルフを始め、日大ゴルフ部を経てプロコーチに。TPIレベル3を取得。2021年1月より松山英樹のコーチに就任

黒宮幹仁

くろみやみきひと。1991年4月25日生まれ。10歳からゴルフを始める。09年中部ジュニア優勝。12年関東学生優勝。日大ゴルフ部出身。松田鈴英、梅山知宏らを指導

週刊ゴルフダイジェスト2021年6月29日号より