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【岡本綾子 ゴルフの、ほんとう】Vol.863「姿勢や身なりに気遣いできると華のある選手になっていくと思います」

KEYWORD 岡本綾子

米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。

TEXT/M.Matsumoto

>>前回のお話はこちら


仕事で人と会った瞬間、この人はデキる、デキないというのは大体分かります。ゴルフでもこれはいい選手、そうではない選手というのが分かるものですか? 分かるとするとその判断基準は何でしょう?(匿名希望・HC6)


初めて会った人の性格や能力を予備知識なく瞬時に見抜いてしまうことは、普通では考えられませんが、不思議なことはあるものです。

初対面で強い第一印象を受け、それが会う回数を増すほどに間違いではなかったと判明する、ということを経験したことはありませんか。

わたしも比較的カンが強いほうだとは思いますが、初対面でその人となりや性格など、おおまかなことに見当がつくことがあります。

ちょっとした所作やしぐさ、会話をするときの目線の向きや表情の変化、身ぶり手ぶりの際の体の動かし方を目にすれば、ジャンルを問わず、アスリートとしてのある程度の能力までもが見えてくることがあります。

この判断の信用性は思いのほか高く、第一印象が後になって違ったということはあまりないかもしれません。

運動神経が優れていて、日頃からトレーニングで鍛えている人は、日常的な動きにもその能力が表れるという点から、一見するだけで高い身体能力を推察できますよね。

こうしたカンは特殊能力というわけではなく、誰にでも多かれ少なかれ備わっているものだと思います。


それは合理的な根拠があって判断したのではなく、あくまで個人的な体験が直観に訴えてくる“第六感”というカンであって、説明のできないひらめき的なものですね。

わたしが新人の選手を目にしたとき、その人のどこを見るかというと、強いて言えば、体全体のバランスや骨格、筋肉の付き方です。

あと、人と話しているときの目の動きや表情の変化も見ています。

もちろん、スウィングの細かい動きにも目はいきますが、それ自体にそれほど関心は持ちません。

スウィングは練習や考え方で簡単に変えられるからです。

わたしのカンは意外と当たることがありますね(笑)。

でも、ある時を境にとくに若い人に関しては口外しないように決めました。

将来性について高く評価した選手本人ではなく、それを耳にした身内が有頂天になってしまうことがあり、本人とは関係ないところで余計な混乱を招いたケースがあったからです。

良かれと思った評価が、思わぬ方向へいってしまうことがあるので、「この子は将来有望だな〜」と思っても簡単には言わないように心がけています。

わたしは、駅や空港の片隅で雑踏を眺めながら、行き交う人々の様子や表情から、これまでのさまざまなストーリーを想像するのが昔から好きでした。

現役時代、プロアマ戦に年間30回は出たとして、初めて一緒に回るお客さんがほぼ100人くらいですよね。

それ以外にもお会いするゴルファーは、毎年ざっと500人は超えるかと思います。

それを十数年以上も続けてきたのですから、人間観察の経験に不足はないはずです(笑)。

そんなわたしはこう言いたいです。

「見た目は大切。人が人に与える第一印象をもっと大切にすべき」ということです。

下を向いてため息をついてばかりいたら、それは印象が良くないですよね。

ため息をつきたくなったら反対に天に向かって一息つくようにするとか。

スウィング同様、課題のある点は意志の力で直したり変えたりすることができると思います。

変わろうと努力することは大切ですが、ゴルフスウィングと同様、すぐには変われないことを改めて分かってほしいと思います。

何度も言わせてもらいますが、コツコツとやり続けることが一番大切なのですよ。

「“カン”について考えていると改めてすごい力だと思います」(PHOTO by AYAKO OKAMOTO)

週刊ゴルフダイジェスト2025年6月17日号より