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【ゴルフはつづくよどこまでも】Vol.177「短所を直そうとする前に、長所に目を向けてみては?」

高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。

PHOTO/Shinji Osawa

前回のお話はこちら

スウィングをよくしようというときに、多くの人は短所を矯正しようとしがちですけど、もっと自分の長所に目を向けてみてはどうでしょう。

昨年シニア入りした増田伸洋くんの話。レギュラーツアー時代、短い期間やけど、僕とは一緒に試合で回ったこともありましたし、シニアになってからもたまに話をしたり、兼本貴司と3人で練習ラウンドを一緒にしたりしておりました。


昨年の能登CCで開催された日本シニアオープンのとき、練習場で球を打っておったら増田くんが、「奥田さんちょっと質問があるんですけど」言うてきて。聞くと、「僕はダウンスウィングでちょっとあおるようなクセがあって、それを直したいんですけど、どうしたらよいかわかりますか」言うんです。

わざわざ聞きに来てくれた増田くんに、僕も真面目に答えました。

「確かにダウンスウィングで下半身があおるような形になっておるけど、普通は下半身があおり気味になったらクラブが寝て入ってきてあおり打ちになるんやけど、増田くんの場合そうはなってない。上半身が下がらんから、あおり打法にはなっていない。力も抜けとるし、切り返しの間とか、軌道もほぼ同じところを行って返ってくるのでクラブが寝ずにそのまま下りてきてる。これは自分の長所と違うんかな。もちろん直すんやったらやり方はある。でも僕は基本的には、クラブが寝て下りないあのダウンスウィングはすごくエエから、そのままで行ったほうがいいんとちゃうか」と言うたんです。

その試合、僕は予選落ちやったけど、増田くんは最後まで優勝争いに残ってましたし、そうこうしていたら11月の「すまいーだカップ」でシニアツアー初優勝しました。

その後会ったときに、「奥田さんに、そのままでいいんだって言われすごい自信になりました」言うてくれてね。社交辞令やとは思うけど、そうやって覚えていてくれたのが嬉しかったですね。

小さい欠点を直そうとして全体を台無しにする“角を矯めて牛を殺す”やないけれど、ゴルファーは自分のスウィングの欠点を気にするあまり、下手にスウィングいじって長所を殺してしまうケースは多いかもしれません。

「小さい欠点を直そうとして全体を台無しにしてしまうケースは多いかもしれませんわ」

奥田靖己

おくだせいき。1960年、大阪生まれ。93年日本オープンなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂び、温故知新を追求する

週刊ゴルフダイジェスト2024年5月21日号より