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【ゴルフはつづくよどこまでも】Vol.174「タイの“お坊さんプロ”に力をもらう」

高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。

前回のお話はこちら

2月28日から3月1日までの3日間、タイで開催された『サンワード・シニアチャンピオンシップ/ZEN CUP2024』の話をさせてもらいます。

日本からは倉本昌弘さん、芹澤信雄くん、藤田寛之くんなど12名のプロが参加、タイはもとより、オーストラリア、マレーシア、他のアジア各国のシニアプロ180名が出場した大会で、優勝は昨年、日本プロゴルフシニア選手権でも優勝したタイのタマヌーンでした。

大会が行われるのを僕が知ったんは昨年10月のこと。

芹澤くんから「奥ちゃん、あんたの弟子の中村映禅が来年タイで試合をやるんだよ」と聞かされ、“エイゼン”って誰やと、最初はわからんかったんです。というんも、彼が20年前に日本に居たときは確かに僕の弟子やったんですが、当時、僕は彼を本名の

“なかむらあきのり”の名で呼んでいたんです。“映禅”は法名で、今、彼はタイではこの名前で活動をやっていて、それで、にわかにはわからんかったのですが、その映禅が大会を開くなら行かなアカンと思い、僕も出場したんです。

映禅は、奈良の大きな浄土宗のお寺の跡継ぎなんですが、20代の頃にプロゴルファーを目指したけど叶わず、半ば諦めてお寺を継ぐべく、30歳からはゴルフは趣味程度に続けておった。そんなときに、僕が知り合いのお坊さんのコンペに出た彼と出会い、また真剣にゴルフをやりたいと僕に弟子入りしたんです。

当時は坊さんと掛け持ちで、袈裟に足袋という姿でゴルフ場に来ることもたびたびでした。その後、ゴルフへの思いが立ち切れず、親と喧嘩をして、奥さんと家出をするみたいにして16年前にタイへ行きよったんです。

当初は、ゴルフスクールのアシスタントで日本人を教える仕事に就いたけど、お客さんが来なくて飯が食えず、屋台の焼き飯を女房と半分に分けてしのいだいう話を聞いていましたから。

そこから頑張って独立してバンコクでNo.1のゴルフスタジオを持ち、ついにはシニアのトーナメントを開催するまでになったわけです。

今回、映禅の頑張りを目の当たりにして、自分もまだまだやれるという気持ちにさせられました。

「僕の弟子やった、いうんも嬉しいもんです。人生も諦めんと、道は開けます」。写真はインスタグラム@eizen_thai より

奥田靖己

おくだせいき。1960年、大阪生まれ。93年日本オープンなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂び、温故知新を追求する

週刊ゴルフダイジェスト2024年4月23日号より