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「一番チャンスがあるのはマスターズ」ザンダー・シャウフェレが語るメジャー、ヒデキ、日本愛【独占インタビュー】

2021年のマスターズで松山に惜しくも敗れ、東京五輪ではその借りを返すかのごとく金メダルに輝いた。日本育ちの台湾人の母親とドイツとフランスのハーフの父親の間に生まれ、実は本人以外、家族全員が日本語を話せるという、おそらくPGAツアーいちの日本びいき。そんなちょっと不思議なアメリカ人プレーヤーが、メジャーのこと、日本のこと、松山のこと、いろいろと話してくれた。

取材・撮影/田邉安啓

ザンダー・シャウフェレ
PGAツアー4勝。1993年生まれの28歳。アメリカ代表として出場した東京五輪で金メダルに輝いた

GD これまでPGAツアーで4勝して、昨年は東京五輪で金メダルも獲りました。次の目標は、いよいよメジャーですね。

シャウフェレ そうですね。マスターズは同じコースですし、全米オープンはボストン近郊のブルックライン(ザ・カントリークラブ)、全米アマでプレーしたコースです。全英オープンはゴルフの聖地セントアンドリュースですね。実はまだ1度もプレーしたことがないんですけど、現地に行ったことはあります。カーヌスティの大会の後、セントアンドリュースまで行って、何ホールか歩いてみました。全米プロはオクラホマのサザンヒルズですね。あそこは、ジュニアの試合で行く予定だったんですが、大会が中止になったので、プレー経験はゼロです。マスターズと全英オープンは伝統的なコース、全米オープンと全米プロは長くてタフなコースでプレーするということになりますね。

GD 勝つチャンスが高いのはどのメジャーでしょうか?

シャウフェレ 数字だけ見れば、マスターズがこれまでいちばんいい成績なんです。全英オープンでも2位タイになっていますし、全米オープンもそれほど悪くはありません。全米プロだけはあまりいい記憶はありませんが……。マスターズは何度か優勝争いをしているので、チャンスがあるかもしれませんね。

GD マスターズと相性がいい理由はなんでしょうか?

シャウフェレ 自分のゲームプランにマッチしているのだと思います。ティーショットの精度、コースマネジメント、そして、パッティングが重要なことです。何度かいいプレーができたことで「やればできる!」と思い込めるのも大きな理由かも(笑)。

GD マスターズで勝つには何が必要だと思いますか?

シャウフェレ どの大会でも同じですが、たった1ストロークが勝敗を分けるんです。だから、いまやっていることをやり続けるだけです。何かを変えようとは考えていません。いままで、このプレースタイルを貫いて、優勝してきたわけですから。

GD ツアーのデータを見ると、年々、飛距離アップしていますが、自分では飛ぶようになったという実感はありますか?

シャウフェレ 今年のニューモデルのドライバーがとても調子よく振れるので、そのぶん飛んでいるのかなとは思っています。

GD スウィングで何か取り組んでいることはありますか?


シャウフェレ つねに何か取り組んでいますね(笑)。アプローチなどはいつもいろいろと試してみてはいますが、スウィングにおいて何かを変えると他の部分に影響が出てしまうので変えることは難しいんです。けっこうトリッキーなんですよ。

GD 昨シーズンのデータを見ると、ストローク・ゲインド・パット(パットの選手平均値に対して、何打優れているかを示す)の数値がいいですね。

シャウフェレ パッティングはここ最近とても安定しています。グリーン形状や芝の違いに対応できていて、好不調の波を小さく抑えられていることが成績にも表れています。たとえば、スクランブル率(パーセーブ率)は、いい年と悪い年が交互に来るような波がありました。でも昨年は、アプローチが過去最高によかったと思います。そんな好不調の波のいい波がハマれば、今年はもっと勝てると思います。“トリガースタット(Trigger Stat=キーになる統計)”がよければ勝てる、という言い方をするんですが、僕の場合はアプローチがよければ勝てるんです。

ヒデキは無敵のプレーヤーになるかもしれない

GD なるほど。統計や数字だけで見れば、松山プロのパッテングはパーフェクトとは言えませんがマスターズに勝てた。何が勝敗を左右したと思いますか?

シャウフェレ 昨年のマスターズの週だけ見れば、ヒデキのパッティングは最高でした。さらにスクランブリングもとてもよかったですし、ボギーもほとんど打たなかった。そしてバーディをたくさん取った。それに、ヒデキのパッティングは決して悪いわけではない。今年のソニーオープンのプレーを見れば一目瞭然です。彼のキャリアで、もっともパッティング率がよかった週だったのではないでしょうか。だからこそ勝てたんです。パットが入れば、ヒデキはすぐ優勝ですよ。トリガースタットは、僕でいえばスクランブリング、ヒデキの場合はパット。トリガースタットがいい週は、勝つチャンスがやってくるんです。

GD 松山プロのことを、選手として、友人としてどのように思っていますか?

シャウフェレ 大変なリスペクトを持って見ています。ヒデキほどよく練習する選手は他にいませんし、彼のチームはいい人ばかり。キャディのショータも友だちです。おもしろいヤツですしね。この2〜3年のヒデキのプレーは決して最高のものではなかったけど、いまはもうそうじゃない。マスターズで勝ち、ZOZOで勝ち、ソニーで勝った。いわゆる、あまり調子のよくない時期=“オフイヤー(Off Year)”のときにどれだけ努力していたかが、いま報われているのだと思います。そして、いまの“無敵”が本来のヒデキの姿。元々ヒデキはそのポテンシャルを持っていたんだと思います。

セントリートーナメントの2日目、9番のティーショットを終えて、松山と並んで歩き出すシャウフェレ。「ヒデキはパットが入ればいつでも勝てる男」と絶賛する。4月のマスターズではまた2人の激闘が見られるだろうか

日本にいるおじいちゃんと
鰻の名店に行ったことがあるんだ

GD あなたのお母さんは台湾生まれの日本育ちで、日本語を流暢に話す。お父さんはドイツ系で日本語を少し話す。母方の祖父母は日本に住んでいる。それであなた自身はアメリカ人。このようなバックグラウンドが、プロキャリアや人生にどんな影響を与えていますか?

シャウフェレ とても国際的だと思っています。ときどきややこしくも思いますけどね(笑)。母は台湾生まれですが、育ったのは日本なので、むしろ日本人っぽいですね。僕は台湾にも行ってますが、台湾よりも日本に行った回数のほうが多いんです。

GD ご自身のなかに日本人的な要素を感じることは?

シャウフェレ 簡単に答えられる質問ではないんですが、私自身は家族のなかでただ一人アメリカで生まれ育ったんです。生まれてからずっと何らかの形で日本の文化に触れてきたわけですから、日本の文化は一般のアメリカ人より理解しているとは思います。日本人的な部分があるかと問われるとそれは疑問ですし、日本語は5%もわかりません。でも他のPGAの選手よりは日本に慣れ親しんでいることだけは確かですね。

GD 好きな日本食はなんですか? 

シャウフェレ スシもサシミも好きですし、ウナギも好き。おじいちゃんがウナギの名店に連れて行ってくれるというので、1時間半も列に並んで食べたこともあります。トンカツ店にもラーメン店にもうどんのお店にも行ったことがありますね。(食べ物の名前はすべて日本語)。沖縄で食べたうどん、オキナワソバでしたっけ? あれもおいしかったです。妻が沖縄出身なんです。ハーフですね。沖縄にいる妻の両親にも会いに行きました。だから、いろんなオキナワソバを食べてますよ(笑)。日本人が普通に思い浮かべる食べ物はだいたい食べてますね。アメリカで“スシ”って言うと、アメリカ人は1種類だと思いますが、私はスシに何十ものネタがあることを知ってますよ。

(左)電話中にカメラマンを見つけると、手を振ってくる人懐っこさが人気の秘密。「日本はおじいちゃんとおばあちゃんがいる大好きな国だ。みんな、ヒデキだけじゃなく、僕のことも応援してくれよ」/(右)フェニックスオープンのプロアマ終了後、大勢並んだちびっこファンにサインするシャウフェレ。サインだけではなく、求められるままに写真にもニッコリ笑顔で収まるとは、さすがファン想い

週刊ゴルフダイジェスト2022年3月8日号より

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