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【ゴルフはつづくよどこまでも】Vol.178「切り返しの極意」

高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。

PHOTO/Shinji Osawa

前回のお話はこちら

スウィングで難しい部分と言われるのが、トップからの切り返しです。この切り返しのときに、クラブをどう下ろすんかいうことを聞いてくる人が多いんですが、実は、クラブはどう上がるもなければ、どう下ろすもないんです。クラブは勝手に上がって、勝手に下りているだけの話なんです。

どう下ろすんかを聞いてくる人は、要するに、適正な軌道やタメを作るにはどういうふうに手で下ろすんかを知りたいわけです。でも手でクラブを切り返しているように見えるけど、実は切り返しいうんは体が向きを変えるだけのことなんです。


もちろんスウィングは一つやないから、「いや、ダウンスウィングは手でクラブを下ろしている」いう人もおるでしょう。でも切り返しに関して言うと、やっぱり手やないんですよ。手に見えるけど実際は体、それも下半身で切り返しているんです。

世界中のプロゴルファーのスウィングは、皆、そうなっています。「自分は手やクラブを意識して切り返す」いう人も、実際は無意識に体を使っているもんです。バックスウィングが下半身リードで動いてくるとダウンスウィングも下半身のリードで下りてくる。そうやってボディの動力が無意識に動いていないと、上手く切り返せんし、そうなっていない人は文字通り手打ちになっとるわけです。

意識いうんは厄介なもので、僕なんか「あごは1センチも動かん意識や」とか言うてましたけど、優勝した頃の自分のスウィングを見たら、体は人の50倍くらい動いとるわけですよ。

だいたい人は、意識とイメージで動いています。せやからコーチは、まずその人がどういう意識で動いているかを見抜き、そのうえで、その意識ではなく、このイメージでやってみたらといったアドバイスができるのがよい指導者と思います。

たとえば切り返しにおいて、手でクラブを下ろす意識が強い人には、バックスウィングで右を向いた体がフォローで左に向きを変えるように動くと、無意識に下半身が動きそれに連動して上体や腕も勝手に動いてくる。このイメージで体が動くと、切り返しは簡単にできるようになる思います。

「バックスウィングで右を向いた体がフォローで左に向きを変えるように動くと、無意識に下半身が動きそれに連動して上体や腕も勝手に動いてきますわ」

奥田靖己

おくだせいき。1960年、大阪生まれ。93年日本オープンなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂び、温故知新を追求する

週刊ゴルフダイジェスト2024年5月28日号より