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最近道で人に追い抜かれることが多くなっていませんか? ゴルフ上手は“歩き”上手。歩く力を鍛えよう!

ラウンドや日常生活で「あの人歩くのが速いな」と思うこと、ありますよね? そういう人の体つきや雰囲気を観察してみてください。きっと引き締まったボディと若々しさをまとっているはず。なぜなら歩くのが速い人は体を鍛えている人だから。そのメカニズムとメソッドを紹介します。

PHOTO/Yasuo Masuda

解説/菅原賢

東京都新宿区四谷の「トータルゴルフフィットネス」支配人で、数々のプロゴルファーのフィジカルトレーニングをサポート

歩きの“要”はお尻から太ももの大殿筋

ある試合で、勝みなみらの組についていたギャラリーの一人が「プロって歩くのが速いなあ。どんどん置いていかれる。急いでいるふうじゃないのになんでかな?」とポツリ。確かに、決してピッチが速いわけではないのに、グングン進んでいくのはなぜ?

「それは筋肉の差です」とトレーナーの菅原賢氏。歩くスピードは、当然ながら足の回転数(ピッチ)と、歩幅で決まる。女子プロゴルファーら体を鍛えているアスリートたちは歩幅が広い。ちょこまか歩いているプロゴルファーは見当たらない。「プロゴルファーの場合、身長にもよりますが、1歩1ヤード前後のケースが多いです」。1ヤードは約91センチ。この歩幅は一般の人にしたら、かなり広い。「1歩1ヤードというのは歩測のため、というのももちろんありますが、筋力と筋肉の柔軟性の違いは大きいです」。つまり、一般の人の歩幅が狭く、歩くのが遅くなってしまうのは足の筋肉の衰えのせい?

「足の筋肉と一口で言ってもさまざまです。歩くときは足を上に上げるので、たとえば、太ももの前面の大腿四頭筋が思い浮かぶかもしれませんが、実は大きな役割を果たしているのはお尻から太ももの裏側の筋肉である大殿筋、さらに、ふくらはぎのヒラメ筋やその外側の腓腹筋なんです。前に踏み出した足ではなく、グッと押し出す後ろの足の筋肉ですね」

プロはそれらをまんべんなく鍛えている。グッと押し出せると歩幅は広くできる。広くできると、早く歩ける。もっと言えば、押し出す後ろ足の大殿筋やヒラメ筋、腓腹筋がしっかり使えれば、骨盤のアライメントが整い、上半身が後傾して外股になったり(男性に多い)、逆に前傾になって内股になったり(女性に多い)することがなくなる。よく「ゴルフがうまい人は歩き姿でわかる」などというが、要は体がしっかり鍛えられているから姿勢よく、スッスッと歩けるというわけ。

「ひざが痛い」も筋力不足が主原因

では「下半身の筋力が低下している」サインとは……。まず、女子プロの歩く速さにとてもついていけないのは、一般人としては仕方ないとして、横断歩道を待っていて青になって渡り始めたが途中で点滅し始めたら、それは危険と言えるだろう。そのほか、ほんのわずかな段差でつまずく場合は「骨盤の前面の腸腰筋が弱っていることが考えられます。腸腰筋は下半身と上半身をつなぐ大事な筋肉です。ここは鍛えたい。あとは、足を上に引き上げられていないということですから、太もも前面の大腿四頭筋が弱くなっている、または柔軟性の低下も挙げられます」とのこと。そのほか、椅子に座っていて片足で立ち上がれない、片足で立って靴下がはけないなど、思い当たる人は多いだろうが、どれも残念ながら衰えのサインだ。

1つでも当てはまったら要注意!
“筋力低下”6つのサイン
(1)横断歩道を渡っている途中で点滅に変わる

青信号の時間は本来、人が渡り切れるだけのタイムが設定されているはずだが……
(2)歩いていると、ほかの人にどんどん追い抜かれる
競争をする必要はないが、自分より背の低い人や年配者にどんどん抜かれたら「おや?」と思って
(3)1センチなど、ほんのわずかな段差につまずく
バリアフリー化が進むのはいいが、玄関マットにつまずくようでは……
(4)椅子に座っていて片足で立ち上がれない
安全を確認しながら右足、左足、両方で試してみよう。「片方だけできる」では△
(5)片足で立ったまま、靴下をはけない
(4)と同様、転倒に注意しながら両足ともできるかやってみよう
(6)階段の昇降時やトイレで立ち上がる際、必ず何かにつかまる
トイレットペーパーホルダーが壊れていたら誰かが立つときにギュッとつかまったのかもしれない

そしてスッスッと歩きたいが「ひざが痛い」がネックになる人は少なくないだろう。これは、ひざの動きに問題がある。「筋力の低下で歩く際、ひざが内側に入り、ねじれるような動きになり、それが痛みにつながるんです」。ということは、ひざが痛いならサプリで軟骨成分を……という前に、まずはトレーニング。「大殿筋を鍛えましょう」

たとえば「普段、立つときにお尻の穴をキュッと締め、おへそ周りをへこます感じでも効果は期待できますよ」とのこと。確かに、そのイメージで立つのはかなりキツい。しかし、同時にスッと美しい立ち姿になり若々しく見える。エレベーター待ちや信号待ちで立っているときに習慣にすればしめたもの。プラス「いつまでも歩きたい」と願うなら、今から歩くこと。厚生労働省の推奨歩数は、男性なら1日約9000歩、女性は8500歩ほどとされている。カートでなく“歩きゴルフ”を選択すれば余裕でクリアできる数字。ただし、歩きすぎは、特に年配者の場合、逆に体を痛める場合もあるので注意は必要。さらに「できれば続けて20分以上歩く時間を設けるといい」とのこと。これから、だんだん涼しくなるウォーキングシーズン到来。一駅歩く、もおすすめだ。

「筋肉はいくつになってもつけられる」は、もはや合言葉。年だからといって諦めることはない、少しずつでも筋肉は鍛えられるし、柔軟性アップも望める。ウォーキングや歩きゴルフを楽しみながら、スクワットなどトレーニングを少しでもやる。日常生活ではエスカレーターより階段を使う、信号待ちでお尻を締める、などなど。ちょっとした工夫で、5年先、10年先に差が出る。簡単なストレッチやトレーニングを紹介するのでぜひ参考にしてみて。

“歩ける体”づくり<日常生活編>


【1】階段の上り下り
駅でエスカレーターと階段があったら、階段をチョイス! 実は上りよりも下りのほうが筋肉にとってはハード。昇降、両方やるのが◎

【2】その場足踏み
エレベーターや信号を待つとき、テレビを見ながらなど、隙間・ながら時間を有効活用しよう

【3】その場かかと上げ下げ
【2】と同様いつでもできるのがメリットで、目立たずできるのもポイント。上げるときも下げるときもゆっくりやると効果アップ。上げるときは母趾球に体重を乗せるイメージで

【4】片足立ち
利き足で立つのがラクなので、つい偏りがちだが左右ともやろう。股関節や足首の安定性につながる。電車内でやるときは、急な揺れに用心して

【5】床や風呂、トイレなどの掃除
腰を折り曲げると「イタタ」となる場合もあるが、スクワットのように腰を落としてやれば、立派な運動に。家族にも喜ばれ一石二鳥

【6】デスクワーク時に足上げ
椅子に座ったまま両足を浮かせてしばらくキープ。後傾しないようにするためには腹筋にグッと力を入れて。腸腰筋、腹筋のトレーニングに。足首を曲げたり伸ばしたりすると前脛骨筋のトレーニング、足首の柔軟性アップにも

“歩ける体”づくり<トレーニング編>

【1】ヒップリフト(10回)
>>大殿筋のトレーニング

仰向けになり、お尻を浮かせ、ゆっくり下ろす

腕を上げると不安定になるので、トレーニングのレベルはアップ。辛い人は床につけて体を支え、慣れたら上げるようにして

【2】腸腰筋、大腿四頭筋伸ばし(左右3回ずつ)
>>腸腰筋の柔軟性アップ&大腿四頭筋のトレーニング

片ひざを着けて立ち、つけた足をギューッと伸ばし5秒キープ。左右ともやる

【3】スクワット(10回)
>>大殿筋、大腿四頭筋、ハムストリングスのトレーニング

両足は肩幅より広くして立ち、つま先は外側(45度くらい)を向ける。ゆっくり腰を落とし、ゆっくり元に戻す。戻すとき急いで立ち上がらないようにする。腕を上げて行えば広背筋のトレーニングにもなる

週刊ゴルフダイジェスト2022年10月11日号より