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飛距離アップのカギは「骨盤開き」<前編>カタチを真似る前に“飛ばせる体”を手に入れよう

TEXT/Tomohide Yasui
PHOTO/Hiroaki Arihara、Blue Sky Photos
MODEL/Nanoka Hagiwara(GOLULU)

世界のトッププロたちは300Y超えが当たり前の時代だが、我々一般ゴルファーは変わらず飛距離不足に悩み続けている。渋野日向子の専属トレーナー斎藤大介氏によると、飛ぶ人と飛ばない人の大きな違いのひとつに「骨盤」の使い方があるという。詳しく話を聞いてみた。

解説/斎藤大介

柔道整復師、鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師の国家資格を取得。16年より米女子ツアー選手のトレーナーを務め、20年から渋野日向子の専属トレーナーとして活動。小誌で「らくトレ、ゆるスト」連載中

プロゴルファーが300Yを超えるショットを打つようになったのは20~30年前のことだが、今や400Y近く飛ばす選手も出てきた。一方、アマチュアの飛距離はほとんど変わっていない。プロゴルファーがフィジカルトレーニングに力を入れるようになり、それが飛距離の差につながっているのは間違いない事実だが、それだけではないようなのだ。

かつてレッスンの世界では「体は開かず、ボールを体の正面で打ちましょう」という教えがあった。だが、スウィングの動きを解析する技術が進化すると、腰を開いた状態でインパクトするのが自然な動きと言われるようになってきた。実際、米ツアーのトップ選手たちは、例外なくインパクトの瞬間に骨盤が開いている。

渋野日向子の専属トレーナー・斎藤大介氏によると、

「プロは骨盤を開くことでボールにパワーを伝えています。ですが、アマチュアはそもそも腰周りが硬すぎるので、骨盤を開こうとしても開けないケースが多いんです。また骨盤の開きをマネしようとしても、形をマネしているだけでパワーがまったくボールに伝わっていないパターンもあります」

斎藤氏は、最近のレッスンでよく使われる『腰を切れ』という表現が、アマチュアの誤解を生んでいるのではないかと推測している。

「『腰を切れ』という言い方をすると腰だけを先行させて、軸が抜けたスウィングになりやすいんです。地に足が着いていないような状態で腰だけをクルッと回すと、体に大きな負担がかかるだけです。左足を地面にしっかり踏み込んで(軸)、下から力が伝わってくることが大事で、それができていないとまったく意味がありません」

骨盤を開くことでパワーを伝えるスウィングをマスターするには、いくつかの条件が必要だという。

「まずは骨盤をしっかり開ける体を作ることです。次に胸を閉じた状態で骨盤を開き、上半身と下半身が分離した動きを習得すること。そしてインパクト時でも前傾姿勢が崩れない、柔軟性を確保することが必要不可欠です」

トップ選手は
インパクトで骨盤が開いている

【Point 1】
骨盤の開きは40~60度

「注目してほしいのはお尻の見え方です。右のお尻は完全に見えていますが、左のお尻は見えている範囲が少なめ。骨盤は完全に開いているわけではなく、40~60度の向きが理想と言われています」(斎藤・以下同)

【POINT 2】
胸は開いていない

「お尻の見え方だけでなく、肩の見え方にも注目です。左のお尻は見えているのに左肩はあまり見えていません。つまり胸は開いていないので、上下の捻転差でパワーが生まれているのです」

【Point 3】
前傾が崩れない

右肩と左肩の高さの違いも重要なポイント。ダウンスウィングで右のわき腹を縮めて肩をタテに動かすと、アドレスの前傾姿勢をキープしたまま、ボールにしっかりとパワーを伝えることができる

男性はストレッチやヨガ
女性は筋トレが適している

プロゴルファーのように骨盤を開いたスウィングをマスターするには、まず男女の体の違いを知っておく必要があると斎藤氏。

「男性は筋肉量が多く、筋肉も硬いので関節の可動域が狭いです。骨盤も開きづらいので、開きやすくさせる必要があります。一方、女性は筋肉量が少なく、筋肉が柔らかいため、関節の可動域が広い。骨盤も開きやすいので、ゴルフの場合、軸が抜けたインパクトになる傾向が強いんです」

そういった特徴を考えると、意外なことにスウィングを安定させるために適しているのは、男性はストレッチとヨガ、女性は筋トレです、と斎藤氏は断言する。

「男性のなかには飛距離を伸ばすために筋トレに励んでいる人がいるかもしれませんが、骨盤が硬くて開きづらいのであれば、むしろストレッチやヨガで体(とくに股関節とわき腹)の柔軟性を高めたほうが効果的です。逆に女性は骨盤が開きすぎてスウィングが不安定になるケースがありますので、筋肉をつけて関節の可動域を狭めることで、スウィングが安定する可能性が高いです」

米ツアーの選手でもジョン・ラームやブルックス・ケプカなどは筋肉量が多く、関節の可動域が狭くなっており、スウィングが非常にコンパクトだ。女性がそこまで鍛える必要性があるかどうかはさておき、関節の可動域が広すぎる女性は筋トレこそが、スウィング安定の特効薬になるのだ。

男性=筋肉が硬く骨盤が回りづらい

男性は一般的に筋肉量が多く肉質が硬いため、関節の可動域が全体的に狭い。それに加え、ガニ股や骨盤が後傾している人が多いので、インパクトで骨盤を開くことができず、骨盤が閉じたままボールを打ってしまう傾向が強い

女性=筋肉が柔らかく骨盤が回りやすい

女性は一般的に筋肉量が少なく肉質が柔らかいため、関節の可動域が全体的に広い。それに加え、内股や骨盤が前傾している人が多いので、インパクトで骨盤が開きやすく、軸が抜けた状態でボールを打ちやすい傾向がある

そんな男女差を踏まえたうえで、老若男女を問わず取り組んでほしい3つのテーマが「前屈・側屈・回転」だと斎藤氏はアドバイス。

「この3つはどれも大事な動きですが、前屈の動きが正しくないと側屈や回転で正しい動きができても意味がありませんから、まずは前屈の動きを身につけましょう」

前屈に関しては、男女で注意点が異なるという。

「男性は骨盤が後傾して腰が丸まる傾向がありますから、背筋を伸ばして股関節を折り曲げる意識を持つことが大事です。逆に、女性は骨盤が前傾して反り腰になる傾向がありますから、必要以上に前屈が深くならないように注意してください」

側屈で大事なのは、左右のバランスを揃えること。そして回転で大事なのは、上下を分離させて動かすこと。この3つの動きがバランスよく組み合わさることによって、骨盤を開いたスウィングを身につけることができるのだ。

前屈
股関節から折り曲げる

骨盤を開くためには股関節から折り曲げて前傾姿勢を作ることが何よりも大事。お尻を後方に突き出し、股関節を蝶番のように曲げ伸ばしするヒップヒンジを習得しないと、骨盤がスムーズに開く動きは身につかない

側屈
左右のわき腹を縮める

アドレス時に作った前傾姿勢をキープするには、わき腹を縮めて肩をタテに動かす側屈の動きが重要になる。その動きを実現するには、体を横に傾けた際に右手と左手が両方ともひざのあたりまで届く柔軟性が必要だ

回転
上下を分離して回す

腰だけを回す

腰を回す際、腰と一緒に胸まで回ってしまうケースが多い。正しい前傾姿勢を身につけ、骨盤を開いて使うコツをマスターすると、胸を回さず、腰だけを回す感覚がつかめてくる

胸だけを回す

腰だけを回す感覚がわかれば、腰を回さずに胸だけを回す感覚もつかめる。上半身と下半身を分離させて動かせるようになれば、捻転差によってパワーが生まれ、ボールを遠くまで飛ばせるようになる

>>1日3分でOK!
スウィングが激変する
ストレッチメニューは後編をチェック

週刊ゴルフダイジェスト2021年9月14日号より