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【選手を支えるパパコーチ】#1 山下美夢有 未経験の父とゴルフを始め、年間女王に上り詰めた

年間女王に輝いた山下美夢有をはじめ、古江彩佳、菅沼菜々、尾関彩美悠など、いまをときめく女子プロたちのなかには、父親がコーチを務めているケースも少なくない。専門の「プロコーチ」全盛のいま、なぜ父に教わっているのか、どんな指導を受けているのか、女子プロの「パパコーチ」事情を調査した。

PHOTO/ Hiroyuki Okazawa、Tadashi Anezaki、Shinji Osawa、Hiroaki Arihara、Tsukasa Kobayashi、Takanori Miki

山下美夢有は“未経験”の父と頂点へ
「自分のことを一番わかってくれている」

史上最年少で今年の年間女王に輝いた山下美夢有。ゴルフを始めたときからずっと父親が指導してきたが、当初、父もゴルフは未経験。娘と一緒にゴルフキャリアを歩んできた。プロになり、女子プロゴルファー日本一になった今でも父への信頼は揺るぎないという。

「本当に小さいときから教えてもらっているので、自分の状態が悪くなると修正して直してくれる。私も安心してついていけたので、親子で頑張れたと思います」と感謝する。

ゴルフ経験のない“パパコーチ”について、プロコーチの先駆け・内藤雄士プロは次のように語る。

「中嶋常幸さんとお父さんの関係は有名ですが、昔から“パパコーチ”はいました。ただ、皆さん、ゴルフ経験が豊富でした。

僕が日本にゴルフ理論を持ち込んだ約30年前は、すべてアナログで、アメリカで学んできたことを生徒に教えるには、直接言葉で伝えるしか手段がありませんでした。その後、レッスン本を出したり、テレビでレッスン番組をやるようになり、直接指導しなくても、正しい情報を広めることができるようになりました。『昔、家に内藤さんのレッスン本がありました』と言ってもらえることも多いのですが、本やテレビでゴルフを勉強をして子供に教えていた親御さんも多かったはず。

それが最近はネットであらゆる情報から映像まで手に入る。さらに計測器を使えばスウィングのすべてが数字として把握できる。正しい情報さえあればゴルフ経験がなくても問題ないんです」

食事面も管理して後半戦を乗り切った

昨年は疲れから後半戦に食が細くなり、調子を落としたといい、今季は栄養士を付けて食事管理。それでも「目を離すとすぐ食べなくなる」と、父か母のどちらかが一緒について、ご飯を食べさせ続けた(写真左:母・有貴さん、写真右:父・勝巨さん)

プロ1年目に父に“借金”
弾道計測器「トラックマン」を購入

20年夏に約300万円を父親に“借金”してトラックマンを購入したが、すでに返済完了。そのデータを参考に、三菱電機レディスから試合ごとに9.5度と8.5度のドライバーを使い分け、伊藤園レディス優勝につなげた。「番手ごとのキャリーだけでなく、スピン量と入射角にも注目して、ショットの精度アップにつなげています」(美夢有)

米女子ツアー初勝利を挙げた古江彩佳も
ゴルフ未経験の父がコーチ役

昨シーズンのメルセデス・ランキングで1位に輝いた古江。その資格で複数年シードを手にし、今年は海外でも活躍したが、彼女のコーチも父親。ゴルフ未経験ながら雑誌やテレビを見て独学で理論を学び、娘をプロに導いた。TOTOジャパンクラシックで帰国した際は一緒に練習場に行ったといい「自分では正確には把握できていないので、見てもらっています」と古江

週刊ゴルフダイジェスト 2022年12月13日号より