Myゴルフダイジェスト

【ゴルフはつづくよどこまでも】Vol.98「言葉ひとつで驚くほどゴルフは変わる」

高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。

前回のお話はこちら

あんまりイップスの話ばかりするんは嫌でしょうが、もう少しお付き合いください。今年の4月から始まった僕のショットイップスは重症で、バックスウィングの途中からウワァ~とくるのでクラブをまともに振れません。

イップスやスランプにハマったとき、プロが何とかしようとたどる道はほぼ決まっておって、まず「形」を作ろうとします。それが上手くいくこともあるけど、これまで何年もそのスウィングをやってきたんやから、形をいじって即よくなるいうことは、まあないです。

次はメンタルです。本を読んだり、座禅を組んだり、滝に打たれたり、まあ最後は神頼みになるんやけれどね。それでもダメなら最後は運任せですわ。次の信号に引っかからなければ今日はイケるとか、占い的なことに救いを求めるようになる。

でも僕の経験から言うと、スランプ脱出にいちばん効くんは自信と言葉です。

1995年にカシオワールドで勝って以降、優勝がなくシニア入りしてもパッとせず、スランプを感じとったときです。2011年のツアー外試合の「のじぎくオープン」の最終日の前の晩に、芹澤信雄と夜中の3時くらいまで飲んだんです。自信喪失しかけとる僕に対して芹澤は、「奥ちゃん、あんた日本オープンの優勝者じゃない。ゴルフ、メッチャ上手いのに何を悩んでるの」と言われ、「そうや、俺は上手いんや!」と酔っぱらって叫んだ翌日、優勝です。そう、自信ひとつで人間はコロッと変わるんです。

「のじぎくオープン」で勝ったけど、ツアー競技では7年半勝てておらんので、確たる自信は持てていない状態で臨んだ2013年の富士フイルムのとき。練習日に青木(功)さんと回ったんです。突然、青木さんから「オマエなんだ、もっとボール曲げてみろよ!」と言われハッとしました。成績が出らんからせせこましいゴルフをしておる自分を青木さんは見通しとるんですわ。

それでこの試合、僕はスコア度外視でプロゴルファーらしいゴルフをしようと決め、狭いホールでもなんでも、もう思い切りいったったんです。そしたら優勝ですわ。言葉一つでこれほど変わるんやって思いましたね。

「自信一つで、言葉一つで、人間はコロッと変わるんです」

奥田靖己

おくだせいき。1960年、大阪生まれ。93年日本オープンなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂び、温故知新を追求する

週刊ゴルフダイジェスト2022年10月4日号より