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【ゴルフはつづくよどこまでも】Vol.97「イップスはメンタルの弱さとは関係ありません」

高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。

前回のお話はこちら

イップスは、原因はようわかっておりませんが、精神的なもんが大きく関与しておるいうことは間違いないでしょう。普段のラウンドでも、茶店で誰がサインするかがかかった瞬間にストロークがおかしくなりますからね。

精神的なもんが関係しているというと、メンタル面が弱い人がイップスになるんやと思う人も多いでしょうが、これは違います。極端な話、プロでも強くて上手い人ほどイップスになってますからね。ジャンボ(尾崎)さんもパターイップスになったいうことを自分で言うてはりますけど、じゃあ精神的に弱かったのかといえば、逆です。僕は90年代のジャンボさんの強かったときに何度もラウンドさせてもらいましたけど、見てたらパターなんかえげつない動きしておっても、入るんです。それはもう半端なかった。弱気もイップスもねじ伏せる気合いです。


名人クラスの人でパターイップスになっておらんのんは青木(功)さんくらいですけど、青木さんはアプローチがイップス的な感じでした。いつか青木さんがユーティリティでアプローチをやりだしたのを見て、勝負にかける気持ちがすごいなと思いました。方法を探しているんです。それこそ24時間態勢で、毎日ですよ。この人たちが精神的に弱いはずがない。

じゃあ何でこういった名人がイップスになるかいうたら、それは完璧を求めるからです。頂点を極めた人たちは、次第に完璧さを求めるいうんはよくあることですから。

僕の場合、名人たちとは違い、技術的にダメやからイップスは生じるもんやと思うてしまう傾向があって、そういうんが邪魔して回復に時間がかかるんかなと思ったりもします。

僕が2000年頃から悩んでいたパターイップスは、長尺パターで何とかしました。長尺は、構えもストロークも格好が全然違うので、違うゲームしてる感じになる、これがええみたいです。

それでもたまにイップス系の動きになることがあって、試合中に喉を突いてダフってね、それで棄権したこともあります。まあ、それでもパターは何とかなりましたが、問題は、今悩んでいるショットイップスなんです。

名人やからイップスになるんです。

「それでも名人は、ねじ伏せる気合いがあり
ます」

奥田靖己

おくだせいき。1960年、大阪生まれ。93年日本オープンなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂び、温故知新を追求する

週刊ゴルフダイジェスト2022年9月27日号より