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【ゴルフはつづくよどこまでも】Vol.81「谷口徹との練ランで学ぶ」

高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。

PHOTO /Tadashi Anezaki

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久々に谷口徹プロと練習ラウンドを一緒にしました。お昼どきに谷口とおしゃべりしておりましたら、もう30年も前の「のじぎく杯」の話を始めたのです。

そのとき僕は2位に7ストロークぐらいの差でぶっちぎりの優勝をしたのですが、谷口は同組だったそうです。僕はまったく覚えていません。

「僕がトッププロと初めて一緒にまわった試合でした」と谷口は言います。30年前、まだ「日本オープン」には勝っていませんでしたけど、「ゴルフダイジェスト」やら「大阪オープン」やら、勝ち星を重ねてノリノリだったころかもしれません。


「16番だったか、終盤に入ったころに、マーカーのおっちゃんが『奥田プロ、トップですよ』と言いに来たら、奥田さんは『聞きもせんのに黙っとけ』と言うんです。ボールは飛ぶし、ボギーなんか打たへんし、プロの厳しさ、プロゴルファーとはこうやねん、というのを教わった」と谷口。

僕は覚えてへん話です。せやけど、後輩にそう見てもらったことを知って、嬉しい気持ちになりました。

それから谷口が「奥田さん、何もやっていないでしょう」とトレーニングの話を始めました。「何でわかるんや」と聞いたら「いやいや、見てればわかりますよ。バットぐらい振ってください」と言われました。

「究極の選択で、キャディとトレーナーのどっちかを選べという話になったら、僕は迷わずトレーナーを選びます」と谷口は言います。

それだけ自分の体が老化していく自覚があるから、スウィングもしなやかさを保って、飛距離を維持しておるんやな、と思いました。手嶋多一なんかもそうですけど、あの年で活躍し続けるのは、やっぱりなかなかの選手です。

クローズスタンスでスウィング的に共通する部分もあって「系統は同じですよね」と谷口に言われましたけど「いやいや、お前のほうがずっと進化しているよ」と応えておきました。

30年前、谷口に僕のプレーが影響を与えて、30年後の今は、僕が谷口から刺激をもらいました。

「年下ですけど、すごい刺激にもいい勉強にもなった練習ラウンドでした」

奥田靖己

おくだせいき。1960年、大阪生まれ。93年日本オープンなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂び、温故知新を追求する

週刊ゴルフダイジェスト2022年5月24日号より