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【わかったなんて言えません!】Vol.79 石坂友宏 #3「アプローチは“打つ”より“運ぶ”」

「ゲンちゃん」こと時松隆光がプロを招いてトークをする連載「わかった! なんて言えません」。今回のゲストは前回に続き、若手の注目株・石坂友宏。世界で戦っていくために「飛距離」と「精度」、どちらを追い求めるべきか。2人の見解は?

TEXT/Yuzuru Hirayama PHOTO/Hiroaki Arihara

ホスト/時松隆光

1993年生まれ、福岡県出身。ツアー通算3勝。プロ10年目。テンフィンガーグリップで戦う。愛称は“ゲンちゃん”

ご指名/石坂友宏

1999年生まれ、神奈川県出身。19年プロ入り後、何度も優勝争いに絡み、昨季賞金ランク17位。今後の活躍が期待される若手。爽やかな笑顔も印象的

前回のお話はこちら

時松 将来的な目標は、どんなところに定めているの?

石坂 やっぱり、プロとしてやるからには、アメリカのPGAツアーを目指したいです。

時松 するとやっぱり、どうしてももっと飛距離がほしくなるよね。僕たちは飛ばしで勝負するタイプではないにしても、「ゴルフは飛ばしじゃない!」とは言い切れん(笑)。

石坂 はい、飛距離をもっと伸ばしつつ、やはりショットの精度は磨いていきたいです。

時松 ショットの精度ね。今のままの飛距離なら、PGAの選手の9番アイアンくらいの精度が3番アイアンであるなら、戦えるかなとも思う。実際に、ケビン・ナ選手とか、ザック・ジョンソン選手とか、飛距離を武器にしなくとも、精度を武器に勝てているし。ケビン・ナ選手なんて、5番ウッドでもワンピンにつけられたりする。

石坂 二兎を追う者は一兎をも得ず、じゃないですけど、自分がどっちのタイプでやっていくか、考えややることを絞っていくほうがいいのか。時松さんは、精度、ですか?

時松 うん、どっちも追い求めてどっちも成功するようには、俺は思えないんだよね。年齢的に挑戦する時間も限られてくるわけだし。それならば、300ヤードオーバーの球を打てるようになるより、ショットの精度かなと。それと小技。あくまでも、可能性が高くなるのはどっちか、という話だけどね。

石坂 何歳くらいからそう思い始めたんですか?


時松 24歳くらい。2018年に全英オープンやアメリカの試合に出させてもらってから。

石坂 なるほど、僕は22歳なので、これからそう感じてくるのかもしれないです。確かに、時松さんがおっしゃること、とてもよくわかるんです。自分もどっちを追求したいかといえば、精度を磨いていくほうがいい感じがしますし、それに好きでもありますね。

時松 とにかく、2打目でピンに絡んでいく。100ヤードならカップインを狙う、みたいな。

石坂 はい、時松さんのショットの精度は、参考になるところが多いです。たとえば、テンポがいつも一定で、どんな場面でもそれが崩れないところとか。

時松 石坂くんのスウィングは教科書通りという感じで、きれいだよね。それは幼い頃からのレッスンで身につけたの?

石坂 もともと野球をやっていたんですけど、小学4、5年生の2年間に地元の練習場でジュニアメインのレッスンを受けたんです。そのときの教えは頭の位置を一定にすること。それぐらいしか言われなかったので、ずっと大きくは変えずにやってきています。

時松 一貫して同じスウィングで自信をもってやれているのがいいのかもしれないね。

石坂 ただ、谷口徹さんとご一緒させていただいたとき、「上手いというところがいくつかあるより、1つだけでいいから天才的なところを見つけて伸ばせ」というお言葉をいただいて。「いくら2位を何度取ろうが今のままじゃ勝てないぞ」と。

時松 石坂くんが得意なのは、アプローチだよね。

石坂 はい。もともと小技が好きで、時松さんが今100ヤードならカップイン狙い、とおっしゃいましたけど、まさにそんな練習をしていきたいなと。父のそばで練習していた幼い頃から、アプローチで球数を打って遊ぶのが好きでした。上手くなろうというよりは、楽しくて300球くらい平気で打っていました(笑)。

時松 楽しくやっている練習って、自然と伸びていくというのはあるのかもしれないね。

石坂 アプローチの練習は、いくら打っていても飽きないんです。今でもそうです。

時松 100ヤード以内、コツをアマチュアに教えるとしたら、どうアドバイスするの?

石坂 見ていると100ヤード以内の短い距離なのに、球を「打つ」という感じの人が多いですよね。だから「打つ」のではなく、「運ぶ」ですよと。

時松 「打つ」じゃなく、「運ぶ」。うん、いいと思う。

『運ぶ』イメージなら、グリーンの落としどころも自然と考えられるようになります」(石坂)

石坂 それと、パチンと「打つ」と、球とクラブフェースが一瞬しか接点がない感じがしてしまいますよね。「運ぶ」だと、長い時間、球がフェースにくっついて、そっと狙えるというか。

時松 うん、右手で球を持ってポーンと「運ぶ」感じだよね。

石坂 そうです! 右手で。たとえばドライバーショットは左手の甲で球を「打つ」イメージでも構わないんですけど、アプローチは絶対に右手で「運ぶ」イメージです。

時松 「打つ」のではなく、「運ぶ」だと、無駄な力みもなくなりそうだね。

週刊ゴルフダイジェスト2022年5月10・17日合併号より