【名手の名言】倉本昌弘「3歩・3秒で打つ」
レジェンドと呼ばれるゴルフの名手たちは、その言葉にも重みがある。ゴルフに限らず、仕事や人生におけるヒントが詰まった「名手の名言」。今回は、AONと並び日本のゴルフ界を牽引してきた倉本昌弘の言葉を2つご紹介!
3歩・3秒で打つ
倉本昌弘
小柄な体格ながら、思い切りのよいスウィングで豪快に飛ばし、ツアー通算30勝、永久シードを獲得した倉本昌弘。2014年にはPGA(日本プロゴルフ協会)会長の重責を担いながら59歳にしてシニア賞金王に輝くなど、息の長い活躍を見せている。
そんな倉本のプレー哲学が「3歩・3秒」だ。
ボールの後ろに立って目標を定めたら、3歩でアドレスに入るというプレショットルーティン。そして構えたら3秒以内に打つ。
倉本いわく、ゴルフは考える時間が長いので邪念が入りやすい。だから何も考えないように、打つ前に3歩で構えに入る練習を普段からしておくのだという。
そして3秒以内に打つのは邪念の問題もあるが、もうひとつは人間が集中できる時間は3秒だということからきている。
「4秒以上構えたらリズムもなくすし、筋肉も固まる。人間がせいぜいじっとしていられるのは3秒だ」とは、倉本の師・福井康雄の教え。日本初のプロゴルファー・福井覚治の長男で、30万人以上を教えてきた名伯楽だ。ジュニア時代に受けた教えを守り続けたことが、倉本の息の長い活躍につながっている。
パーがいちばん難しい
倉本昌弘
2010年、名門・鳴尾GCで行われた日本シニアオープン。勝利したのは倉本昌弘。そのときのことを振り返って語ったのが表題の言葉だ。
最終日、14番のバーディで2位に4打差をつけた倉本は、「最後の3ホールは全部ボギーでいい」と思っていたというが、その真意についてこう語っていた。
「例えば18番はパーであがろうとする。しかし、実はパーがいちばん難しい。バーディならがむしゃらに狙えばいい。ボギーでいいと思えば絶対大叩きしないルートとショットでつないでいける。(パーを取ろうと)鳴尾という舞台を力で制するのはおこがましい気がした」
「パー」というのはそのホールの基準になる打数。プロにとってパーは取れて当たり前という気もするが、鳴尾という難コースで、優勝争いの最終盤で、その当たり前のパーを取るということがいかに難しいかがこの言葉から伝わってくる。
松山英樹も優勝した昨年のマスターズ、2位と2打差で迎えた18番でパーを逃しているが、世界トップクラスのプレーヤーでさえ、極限の場面で狙ってパーを取ることは決して容易なことではないのだ。
「ボギーでいい」という発想、我々アベレージゴルファーでいえば「ダボでいい」と置き換えて考えれば、少し気が楽になってくるのではないだろうか。
■倉本昌弘(1955年~)
くらもと・まさひろ。広島県出身。ジュニア時代から天才として名を馳せ、高校3年のときに日本ジュニアで優勝。日本大学ゴルフ部時代は日本学生4連覇をはじめ、アマチュアタイトルをほぼすべて獲得した。日本アマ3勝。81年、2度目の挑戦でプロテスト合格、同年は年間5勝で賞金ランク2位と活躍。その後も勝ち星を重ね、ツアー通算30勝。永久シードも手に入れている。82年の全英オープンでは日本人最高4位。03年には59ストロークという世界タイ記録もつくった。10年には、初のシニアツアー賞金王。14年、PGA会長。練習時間もまったくとれないなか、日本シニアオープン他2勝で2度目の賞金王に輝いた。
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