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【名手の名言】岡本綾子「どうしてみんな“真っすぐ打つ”練習ばかりするんだろう」

レジェンドと呼ばれるゴルフの名手たちは、その言葉にも重みがある。ゴルフに限らず、仕事や人生におけるヒントが詰まった「名手の名言」。今回は日本女子ゴルフの礎を築いたレジェンド・岡本綾子の言葉を2つご紹介!


どうしてみんな真っすぐ打つ練習
ばかりするんだろう

岡本綾子


岡本がまだバリバリで、日本女子ツアー界の女王だったころ、練習場で若い子たちの練習を見て独り言のようにいった言葉を紹介する。

この頃には岡本を慕う若い女子プロが多くいたが、岡本は仲間で群れたり、派閥などつくるのは大嫌いで、それがイヤで米ツアーに旅立ったというのもあながちうがった見方ではない。

どのグループにも属したくない岡本は、優柔不断的に女子プロたちに接したため、ニックネームも「フニャ」だった。

だから高みからモノをいうのがイヤで、公式的には名言の類いはそんなに残していない。

そういう意味で冒頭の言葉も教訓的に若い子に直接いったわけではなく、自分の経験から疑問を呈したにすぎない。

「なぜ真っすぐにいかせる練習ばかりするんだろう。曲げるボールをあれこれ打つのは楽しいし、修行時代わたしはよくやったわ。そしてそれがタメになったのは、本番でボールが曲がったとき慌てないこと。曲げる経験から、曲がる原因はすぐに解明できますからね」

かのジャック・ニクラスも「真っすぐの球がまだ打てない」と語っていたが、真っすぐを追い求めるよりも、曲がることを楽しみながら練習したほうが、上達につながるのかもしれない。


プレー中、喜怒哀楽をわたしは見せなかった

岡本綾子


2008年の全米女子プロ選手権、テレビ中継で解説した岡本は、短いパットを外しながらも顔色を変えないあるプレーヤーのことについて、おおよそ以下のような話をした。

「プレー中に喜怒哀楽を見せたところで、一緒に回っている人はいい印象は持ちません。それだったら一緒に回るグループでいい流れをつくって、その中で自分もいいプレーをすることが優先されるべきではないでしょうか……」

岡本は現役時代も表情を崩さずに、飄々とプレーするタイプであった。

派手なガッツポーズはなく、しかしそれが女王の風格を作っていったともいえる。

むろん反対の意見もある。プロスポーツである以上、観せるためには喜怒哀楽を前面に出して、人間臭さをアピールしたほうが人気も出るという意見だ。

例えばジャンボ尾崎、野球なら長島茂雄。アメリカのゴルファーならアーノルド・パーマー、タイガー・ウッズ。

以上が“動”なら、喜怒哀楽を表に出さない“静”は戸田藤一郎、王貞治、ジャック・ニクラス等が例として挙げられよう。

アマチュアゴルファーでは、かの中部銀次郎が「場面場面を柔らかく受け止め、対応する」ことが上達の近道といっている。

すなわち窮地においてもアタフタすることなく、バーディが来たからといっても舞い上がらない。それが上達の秘訣でもあり、アマらしいプレースタイルだと。この伝でいえば、岡本の冒頭の言葉は我らアマチュアのためにこそ有意義であろうと思えるのだ。

■岡本綾子(1951年~)

おかもと・あやこ。広島県生まれ。今治明徳高校~大和紡績ではソフトボール部に在籍し、エースで4番バッター。国体優勝の祝勝旅行のハワイでゴルフに出会い、帰国後、1973年に池田CCで修行を始めるや、翌74年秋には2回目の受験でプロテストに合格。するとデビュー年となった75年に初優勝。81年には年間8勝して賞金女王に輝いた。翌年から米ツアーに参戦すると、こちらもその年に初優勝し、以来主戦場を米ツアーに置く。そして87年には4勝を挙げ、日本人初の米女子ツアー賞金女王となった。国内44勝、海外18勝。05年世界ゴルフ殿堂入り

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