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【PGAツアーエキスプレス】Vol.10 タイガー・ウッズ「ゴルフというスポーツを変えた男」

ゴルフの最先端、PGAツアーの旬なネタをお届けする「PGAツアーエキスプレス」。第10回は、ゴルフ界の大スター、タイガー・ウッズを取り上げる。

PHOTO/Tadashi Anezaki

タイガー・ウッズ
1975年生まれ、アメリカ出身。1996年にプロ転向、翌97年にマスターズを初制覇。98年には世界ランク1位に輝く。今までPGAツアーで積み重ねた勝利数は82

前回のお話はこちら

プレーだけではない大きな功績

2021年に世界ゴルフ殿堂入りをしたタイガー・ウッズ。しかし、その式典は新型コロナウイルス感染拡大の影響で今年に延期となり、先日のプレーヤーズ選手権で執り行われた。ゴルフ史に残る活躍をした人やゴルフ界に貢献した人が選ばれる世界ゴルフ殿堂。ウッズの実績からすればゴルフ史に残る活躍という意味では誰も疑いの余地はないだろう。そこで今回は、ウッズの輝かしいキャリアについて振り返ってみたいと思う。

アーニー・エルスがかつてインタビューに答えたときのこと。当時ウッズは39歳、エルスは45歳だった。記者からの「ウッズ対エルス」のライバル関係が激しくなるのでは? という予想にエルスは「彼はもう、15年以上も前から僕に勝っているよ」と笑った。

当時、ウッズのライバルといえば、エルス、フィル・ミケルソン、ビジェイ・シン、レティーフ・グーセンの4人。しかしエルスは「ライバルという感じではない。なぜなら、僕らは4人合わせてメジャー15勝。ウッズは1人でその数字に迫っているのだからね」と話した。言われてみれば確かにそうだ。そして、世界ランク1位に君臨していた期間においても同じことが言えるかもしれない。4選手が世界ランク1位になったのは合わせて41週(シンが32週、エルスが9週)だが、ウッズはひとりで683週もの間、1位になっていたのだ。つまり、ウッズと比較できる選手はいなかったということだ。

また、功績は彼の周りの人々の“言葉”からも読み取れる。

オリンピック金メダリストで、元陸上競技選手のジャッキー・ジョイナー=カーシーは、「完璧なアスリートはいないと思う。でももし、その特性をすべて兼ね備えた人を1人挙げるとするならば、完璧なアスリートはタイガー・ウッズかもしれない」と話した。さらに、ナイキの創設者、フィル・ナイトはかつて、「ウッズになぜ多額のスポンサー料を支払うのか?」という質問に対して、次のように答えた。

「マイケル・ジョーダンがバスケットボール界で成し遂げたことと同じことを、タイガー・ウッズはゴルフ界で成し遂げることができる。われわれや世界は、これから彼(ウッズ)がする多くの偉業をまだ目にしていない」

ウッズの功績はこれだけにとどまらない。PGAツアーのコミッショナーを長年務めたティム・フィンチェムは、成績だけではなく「ゴルフというスポーツを変えた」と明言する。

「タイガー・ウッズは圧倒的な強さを持っているだけでなく、ファンを呼び込む力も持っている。彼の行動にゴルフファン以外の人々も魅了され、注目するようになった。その影響でテレビの契約やスポンサーが増えたのだ。彼はゴルフを完全に新しいレベルへ押し上げたのだ」

数字で見るタイガーの凄さ
●メジャー優勝回数:15回(歴代2位)
●PGAツアー優勝回数:82勝(最多)
●世界ランク1位保持期間:683週(最多)(連続で保持していた期間は281週)

取材/コーリー・ヨシムラ(PGAツアー アジア担当ディレクター)

月刊ゴルフダイジェスト2022年5月号より

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