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【2022メジャー最速予想】#3「全米オープン」距離が短い名門での開催。そろそろトーマスが来そうな予感?

若手からベテランまで、役者が揃い、今年も熱戦が予想される男子の海外メジャー。そこでPGAツアー事情に詳しい、佐藤信人、杉澤伸章、内藤雄士、進藤大典の4人がどこよりも早くメジャーの戦いを予想。第3弾は6月に開催される全米オープン!

TEXT/Kenji Oba

誰もがその実力を認めるJ・トーマスだが、メジャーは2017年の全米プロのみ。全米オープンでメジャー2勝目となるか?(PHOTO/Hiroaki Arihara)

全米オープン 2022
ザ・カントリークラブ/6月16日(木)~19日(日)
1882年創設の全米最古のカントリークラブのひとつ。全米オープンを3度開催しているが、前回大会は34年前の1988年。過去3回すべてがプレーオフで決着した

――今年の全米オープンの会場はザ・カントリークラブ。距離も7000ヤードちょっとと、近年の全米オープンとは少し趣が変わるとの指摘もあります。

佐藤 確かにここ数年はダスティン・ジョンソン、ブルックス・ケプカ、ブライソン・デシャンボー、ジョン・ラームと、重量級の飛ばし屋ばかりが勝ってきました。21年のトーリーパインズなんか、選手から出てくるのは、“とにかく長い”という言葉ばかり(笑)。

内藤 その意味では名門コースがどんなセッティングにしてくるのか、それは楽しみですよね。

佐藤 またグランドスラムの話になりますが、王手をかけているのがフィル・ミケルソン。長尺規制がかかって落胆した瞬間、近年では短めの約7000ヤードのザ・カントリークラブ……、もしや、なんて思ったりして(笑)。

進藤 勝っていないとはいえ、全米オープンで2位6回も、ものスゴい記録なんですが……。


杉澤 全米オープンの優勝候補に、ここまで名前の出ていない、とっておきの選手を用意しました。ジャスティン・トーマスです!

一同 おお~(歓声)。

杉澤 実力は申し分ありませんよね。さらに言えば、全米オープンで優勝できず、6回も2位になった人物がミケルソンのほかにもうひとり。それが長年(17年まで)ミケルソンのキャディを務めた“ボーンズ”こと、ジム・マッケイさん。その彼が21年秋からタッグを組むのがトーマスです。ミケルソンの思いも乗せて、トーマスが勝つというのはどうでしょうか?

内藤 ドラマとしては最高だけど、気になるのはパッティング。あれだけ上手かった人が、コーチを代えまくってパットで悩み続けている。コーチはお父さんのままでよかったような気もするし。その辺がそろそろ落ち着いてくれば……。

佐藤 過去のデータを見ると、ここで3回行われた全米オープンは、すべてプレーオフなんですね。強引ですが、昔ながらの全米オープンに戻って、我慢を強いられる大会になるかもしれませんよ。

内藤 イーブンパーでの優勝は考えにくいですが、セッティングによっては意外な選手があるかもしれませんね。

佐藤 いずれにしても僕の予想は、FWキープ率の高い選手。となるとコリン・モリカワビクトール・ホブランエイブラハム・アンサー。それとPGAツアーでは、まだ優勝経験がありませんが、13年にこのコースで行われた全米アマで優勝したマシュー・フィッツパトリックも挙げたいです。

内藤 佐藤プロの言うように、最近はUSGAセッティングの全米オープンとPGAセッティングの全米プロとでは、そんなに差がなくなりました。しかし今回のコースを考えると、ラフが深く、グリーンは硬い、昔ながらの全米オープンになる可能性はあるのかなと。そうなると、やはりここでも安定度の高いモリカワということになるのでしょうか。彼は名門カリフォルニア大学バークレー校で、勉強だけをしていても受賞するのが難しい学業優秀賞も受賞しています。

進藤 メジャーで勝つ選手は、例外なく頭がいいですからね。

佐藤 21年の全英オープンでは前週のスコットランドオープンが自身初のリンクス体験。そこで得た情報から、フェスキュー芝対応で7~9Iをラウンド前にハーフキャビティに替え、それで優勝しています。その翌々週は東京五輪。リンクスとはまったく正反対の霞ヶ関CCで、最初は出遅れましたが、銅メダルをかけたプレーオフに進出しています。この対応力は、まさに頭のよさの表れでしょう。

杉澤 実は彼が優勝した全英オープンで、練習ラウンドにハーフついたんですが、他の選手と明らかに違うんです。ボールを打つことよりも、キャディとの会話に時間をかけているように感じました。戦略を練っているのでしょう。「へえ、そこを見るんだ」「そんなところを狙うんだ」とか、新たな発見がありましたね。ちょうどサッカーの試合を見ていて、「そんなところにパスコースがあるのか!」といった感じで、勉強になったし、面白かったことを思い出します。現場での情報収集力に分析力、そこから戦略を組み立て、また失敗したら修正する力は、並外れていると思います。全米オープンでも優勝候補のひとりでしょうね。

進藤 東京五輪のプレーオフでは、他の選手をまったく見ない集中力の高め方、自分をコントロールする力の強さに驚かされました。それも頭のよさであり、強さの秘密のような気がします。モリカワのキャディは、ライアン・ムーアのキャディを長く務めた“JJ”ことヤコバックさん。若いモリカワを上手くリードしているうえに、ムーアとの経験から、飛ばない選手の攻め方を知り尽くしていますよね。

内藤 モリカワと同じ安定度があり、曲がらない選手となるとパトリック・カントレー。PGAツアーがもっと盛り上がるという視点から、21年年間王者のメジャー初優勝にも期待したいところだよね。

進藤 そんなことはお構いなしに、デシャンボーが驚異の飛距離で、難コースをねじ伏せるかもしれませんよ(笑)。

杉澤 確かに(笑)。

佐藤信人

高校卒業後米国に渡り、ネバタ州立大ゴルフ部で活躍。帰国後プロテストを受験して合格。02年日本ツアー選手権などメジャー3勝、通算9勝。18年からJGTOの広報理事を務める

杉澤伸章

横田真一の専属キャディとしてキャリアをスタートさせ、02年から丸山茂樹の専属キャディとして渡米。現在は若手育成やゴルフ人口増加のために講演会やテレビ解説など多方面で活躍中

内藤雄士

日本大学ゴルフ部在籍中に米国ゴルフ留学し、最新ゴルフ理論を学ぶ。丸山茂樹のコーチとして海外も経験。現在も多くのプロをサポートしながら、ツアー中継の解説などメディアでも活躍

進藤大典

東北福祉大学では宮里優作や岩田寛と同期。宮里、谷原秀人の専属キャディとして活躍した後、13年からは松山英樹の専属キャディとして国内外を転戦。現在はメディアでも活躍する

週刊ゴルフダイジェスト2022年1月11・18日合併号より