「イップスのおかげでゴルフについて考えるように」カシオで復活Vの堀川未来夢がつかんだ新境地
先日の「カシオワールドオープン」で優勝した堀川未来夢は、「イップスになってよかった」と述懐した。その真意とは?
2年前、いちばんの武器だったパットで、突然イップスを発症したという。肝心なところで右手が悪さをする。
「ブレーキをかけるような感じだったり、水中で打っているような感じ」になり、読んだラインに乗せることなど不可能になったと堀川。
事態が好転し始めたのは1年前、練習グリーンでイップスが発症したことを逆手に取ったことがきっかけ。「本番でなら対処できないが、練習グリーンなら対策を練ることができる」と、10本以上のパターをテストし、あらゆる打ち方や呼吸法を試して、それをラウンドで活用したという。カシオでも14番でイップスが顔を出しかけたが、練習場でつかんだ対処法の1つで乗り切った。
「課題があったほうが練習に打ち込めるし、ゴルフについて考えるようになった。イップスのおかげです」
ちなみにイップスはゴルフに限ったものではなく、『局所性ジストニア』という神経疾患の一種に分類される、れっきとした“病気”。医学界では明確な治療法はまだないとされているが、ゴルフの世界では、名手たちが経験的にその克服法を語っている。
ここで、コース設計家・川田太三氏がトップアマ時代に学んだ2つの方法を教えてもらおう。
「まずはヘール・アーウィン。イップス発症中だった、とある試合で『ボールの左半分、カップの向こう部分を見て打つこと』を実践し、その試合で優勝しました。そしてジャック・ニクラスの恩師ジャック・グラウト。『ドライバーイップスを治すには、スタンスを狭く、ボールに近く、グリップを高く構えてインサイドにテークバックしてフックを打つことで、下半身を使わざるを得なくなる。上半身だけを使うから動かなくなるんだ』と言っていました」
悩んでいる人は、先人たちの英知に頼るのもあり?
週刊ゴルフダイジェスト2021年12月21日号より
こちらもチェック!
- <カシオワールドオープン/Kochi黒潮CC(高知)/7335Y・パー72/11月25日~28日> 高知県のKochi黒潮CCで行われたカシオワールドオープンは、堀川未来夢が初日から首位を譲らない完全優勝で2年ぶりのツアーVを果たした。 PHOTO/Tadashi Anezaki カシオワールドオープンの主役になったのは堀川未来夢。初日に8アンダーで首位に立つと……
- TEXT/Minori Fukushima PHOTO/Shinji Osawa、Hiroyuki Okazawa THANKS/森永製菓トレーニングラボ 7月のニッポンハムレディスでレギュラーツアー初優勝を飾った堀琴音。プロ入り8年目、プレーオフ3ホール目を競り勝っての勝利だった。苦しみ悩んだ時間。“こっちゃん”は逃げなかった――変化の3年を追った。 ほり・ことね。1996……
- PHOTO/Tomoya Nomura、Yasuo Masuda 抜群のスタイルと美貌と飛距離でプロ入り後注目を浴びた高島早百合。いつしか表舞台から姿を消したように思えたが、今やユーチューブでも人気の飛ばし女子。彼女の人生は自分の「存在意義」を探す旅でもあった――。 京都には、千年の都が醸す優美な明るさのなかに、ふとした暗さを感じさせるものがある。それ……
- 一流と称される者には、自身のゴルフスタイルを確立するためのきっかけとなった転機がある。例えばそれは、ある1ホールの苦しみかもしれない。例えばそれは、ある1ショットの歓びかもしれない。積み重ねてきた勝利と敗北の記憶を辿りつつ、プロゴルファーが静かに語る、ターニングポイント。羽川豊の場合、それは、長いイップスから抜け出せた道具との出合いでもあった。 TEXT/Yuzuru Hirayama P……
- PHOTO/Hiroaki Arihara プロの14本のクラブセッティングと、それらのクラブを選んだプロのこだわりを紹介する連載「プロスペック」。今回は、19年にツアー選手権で初優勝を飾った堀川未来夢のセッティングに注目! 堀川未来夢ほりかわみくむ。1992年生まれ。神奈川県出身。日本大学ゴルフ部を経てプロの道へ。19年日本ゴルフツアー選手権で悲願の初優勝を飾る ……