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【世界基準を追いかけろ!】Vol.60 コロナ禍でプロも可処分時間が増加。「どう使うか」で明暗が分かれた

松山英樹のコーチを務める目澤秀憲、松田鈴英のコーチを務める黒宮幹仁。新進気鋭の2人のコーチが、ゴルフの最先端を語る当連載。今回は、コロナ禍という特殊な状況下において、成績を伸ばした選手とそうでない選手の差について考察した。

TEXT/Masaaki Furuya ILLUST/Koji Watanabe

前回のお話はこちら

GD コロナ禍でのツアー競技は、さまざまなことがコロナ以前と変わっています。コーチとして見ていて、その影響がプロゴルファーに及ぼすことは、何かありましたか。

黒宮
 ええ。以前も話しましたが、ツアーでは、ギャラリーが入らないことで、ある程度ノンプレッシャーに近い形でプレーができる状況があります。そうなると若手が優勝しやすいというのはありますよね。

GD 昨年は、実質ルーキーイヤーだった古江彩佳が3勝して話題になりました。

黒宮 そして、コロナ禍での試合開催が2年目に入ったことで、また違う傾向が見えてきました。それが、使う時間の問題です。コロナの影響でプロアマが中止になる大会が多くなり、選手は試合前に多くの時間が与えられることになったんです。

GD ギャラリーが入らないことで、ラウンド後にサインを書いたりという、ファンサービスをする時間もかからなくなっていますね。

黒宮 選手が、その空いた時間で何をしたか、どうやって過ごしたかによって、成績の明暗が分かれたと思うんです。僕の知る限りでは、そういった傾向がこのコロナ禍で出たのかなと思いますよね。


GD 社会的にも話題になっている、コロナ禍における「可処分時間」(※1)の問題ですよね。空いた時間を何に使うかということで、さまざまな差が生まれるという。

目澤 確かに、コロナによって時間の使い方は大きな問題になっていると思いますよね。アメリカのPGAツアーは基本的にコーチの入場制限はありませんが、日本では制限されますから、ツアーでの対面でのコーチングは限られています。我々が時間をかけられない分、選手自身がそれをどう埋めていくかが課題ですよね。

黒宮 女子プロは、コロナ前までは、休みの時間を作るのが大変でした。でもプロアマがなくなったことで、時間が多くできるようになった。その時間を何に充てるかですが、休養日にしたり、完全プライベート時間にする選手もいます。一方で、その日をゴルフの練習や課題をこなしていくことに費やす選手もいます。その結果、成績を残しているのは後者の選手が多く、歴然と結果として表れていると思います。ゴルフは試合会場も毎回違うし、本来は勝率はそんなに高くならないのに、このコロナ禍で数人の選手が複数回(※2)の優勝をしている状況を見ると、技術的なこともありますが、意識とかゴルフに向き合う姿勢みたいなものの差が出たかなと思いますね。

GD いい意味での「意識高い系」の選手が、コロナ禍で成績を伸ばしているわけですね。

黒宮 もっともそうした選手は、特別なことをしたというより、本来プロアマの日を、練習やゴルフに向き合う日に充てただけなんです。コロナ禍でも、コロナ前と同じか、それ以上の努力をすることで、生活パターンを変えてしまった選手と差が出たということでしょうね。

(※1)コロナ禍により出勤などの外出を控えるようになり、以前に比べて自分が自由に使える「可処分時間」が増えた。総務省統計局の社会生活基本調査による平均通勤時間を基に推定すると、リモートワークによって月に20~30時間の可処分時間が増えたとも言われる。(※2)今シーズンの女子ツアーの主な複数回優勝者は、稲見萌寧が8勝、小祝さくらが5勝、西村優菜が4勝、申ジエが4勝

目澤秀憲

めざわひでのり。1991年2月17日生まれ。13歳からゴルフを始め、日大ゴルフ部を経てプロコーチに。TPIレベル3を取得。2021年1月より松山英樹のコーチに就任

黒宮幹仁

くろみやみきひと。1991年4月25日生まれ。10歳からゴルフを始める。09年中部ジュニア優勝。12年関東学生優勝。日大ゴルフ部出身。松田鈴英、梅山知宏らを指導

週刊ゴルフダイジェスト2021年11月2日号より