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【世界基準を追いかけろ!】Vol.59 報酬は3年で7億円!? 米大学ゴルフ部のコーチ事情

松山英樹のコーチを務める目澤秀憲、松田鈴英のコーチを務める黒宮幹仁。新進気鋭の2人のコーチが、ゴルフの最先端を語る当連載。今回も引き続き、8月に開催された全米アマチュアゴルフ選手権を視察した事情通のX氏を交えてトーク。米国の大学ゴルフ部のコーチ事情とは。

TEXT/Masaaki Furuya ILLUST/Koji Watanabe

前回のお話はこちら

GD アメリカの大学生にとって、コーチはどういう存在なんでしょうか。

X 前回、言ったように、試合会場では選手たちが集めてきたコースのデータを基にコーチが攻め方や戦略を立てて、それを学生に伝えていました。学生はその話を熱心に聞いていますよね。また、今回のUSアマでは、ベスト8の選手のうちの5人がネオマレット型パター(スパイダー)を使っていたんです。日本では男子ツアーでも使用選手があまりいないヘッドですが、オークモントのベントにポアナが混じったグリーンではこのタイプのパターが良いとコーチがアドバイスをしていると思います。

GD コーチの意見は、それほど影響力があるわけですか。

目澤 アメリカ人は、いい意味で、コーチに対するリスペクトが強いように感じます。日本の先生に対する畏敬とは違ったニュアンスのリスペクトですけどね。


X アメリカの大学ゴルフ部のコーチに関していえば、多くのコーチがプロゴルファーということも、リスペクトを集めることと関係していると思いますね。例えば、UCサンディエゴのコーチは、クリス・ライリー(※1)ですからね。あと、ウェイクフォレスト大学(※2)のコーチは、ジェイ・ハースの弟のジェリー・ハースです。日本の大学はアマチュアの監督が多いですが、アメリカは、そうした名のあるプロが大学のゴルフ部の監督をしているケースがけっこう多いです。

GD プロをコーチとして招聘しているということですね。

X はい。アメリカの大学スポーツの監督のリクルーティングはビッグビジネスで、アメフトのヘッドコーチのギャラは3年で7ミリオン(7億円)と言われています。大学ゴルフ部も良い監督の引き抜きが多く、強豪校にステップアップしていく度に高給になるわけです。

GD 目澤さん、将来アメリカの大学のコーチはいかがですか?

目澤 アメフトの監督ですか(笑)。でも将来アメリカで海外の選手を教えるとしたら、大学の監督とかじゃなくて、学生上がりのPGAを目指す選手を教えてみたいですね。NCAAのディビジョン1に所属している選手は、例えば、コリン・モリカワをロールモデルとして、彼のスタイルやデータを意識しながらコーチの指導のもとでPGAツアーを目指すというスキルアップをやっています。それは、自分のスコアリングアベレージ(※3)とモリカワのそれを比較して、目標に向けた対策を立てる。それこそ最短ルートのやり方で、それぞれがPGAツアープレーヤーを目指しているんです。

X そう。アメリカのアマチュアの試合はプロの試合が開催されるコースで、プロと同じコンディションで同じティーからプレーすることが多い。そういう環境があり、しかもデータ比較も正確に出るので、そこは大きいですよね。

GD PGAツアーのプロとバーチャル上で争っているようなものですね。米国の大学がPGAツアー参戦への最短ルートだということが良く理解できました。

(※1)クリス・ライリー。大学時代4年連続オールアメリカンに選出される。PGAツアー1勝。2010年シーズン終了後、家族との時間を大事にするためツアープロとしての一線から身を引く選択をする・(※2)ウェイクフォレスト大学。ノースカロライナ州にあり、卒業生にはアーノルド・パーマーがいる、文武両道のゴルフ部の強豪校。青島賢吾が留学。(※3)コースの難易度を考慮に入れて、フィールドの平均スコアを基準に調整したもの

目澤秀憲

めざわひでのり。1991年2月17日生まれ。13歳からゴルフを始め、日大ゴルフ部を経てプロコーチに。TPIレベル3を取得。2021年1月より松山英樹のコーチに就任

黒宮幹仁

くろみやみきひと。1991年4月25日生まれ。10歳からゴルフを始める。09年中部ジュニア優勝。12年関東学生優勝。日大ゴルフ部出身。松田鈴英、梅山知宏らを指導

週刊ゴルフダイジェスト2021年10月26日号より