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【世界基準を追いかけろ!】Vol.58 全米アマでは試合前から熾烈な“情報戦”が繰り広げられていた

松山英樹のコーチを務める目澤秀憲、松田鈴英のコーチを務める黒宮幹仁。新進気鋭の2人のコーチが、ゴルフの最先端を語る当連載。今回も引き続き、8月に開催された全米アマチュアゴルフ選手権を視察した事情通のX氏を交えてトーク。米国の大学チームが試合前に行っていたミーティングの内容とは?

TEXT/Masaaki Furuya ILLUST/Koji Watanabe

前回のお話はこちら

GD 今の米国のカレッジゴルフでは、350Y飛ばす能力より、300Y先の枠内に的確に打てるショット能力が求められているということですが。

X そうですね。特に今回のUSアマチュアが開催されたオークモントはグリーンが難しいうえにフェアウェイの傾斜がきついので、ピンポジションによって自ずとピンを狙えるセカンドショットの地点が限定されてくるんです。ですから、その地点に的確に打つティーショットが求められ、まさに陣取りゲームのようにピンポイントで攻略地点が決まっていました。そこに的確に打つ能力が求められるわけです。

GD それで、アメリカの大学は試合前にチームミーティングをやっていたとか。

X はい。選手やコーチが取ったコースメモやデータを全員でシェアして、「このピンの場合はこのラインから打て」というふうに、コーチが立てた戦略を全員で確認していましたね。

GD チーム戦ではないUSアマの場合でも、選手たちは情報も戦略も共有するわけですか。

X ええ。アメフトの試合前のチームミーティングみたいに。

目澤 それは、ここ10年ぐらいでネットを通じて情報がだいぶオープンになったことが影響しているんです。

GD どういうことですか?


目澤 僕が学生だった10〜15年くらい前は、その時代に一番強かった選手のゴルフが、「正解で最先端」という感じがありましたよね。でもそれって実は、その選手に合った理論であり、それが他の多くの人にとっても有効かどうかは分からないわけです。でもここ10年くらいで、ネット上に多くのゴルフ理論が出るようになり、状況が大きく変わりました。今の最新の理論は、たくさんのプロのスウィングサンプルをデジタル機器で測定し、解析したデータに基づいた理論が多いことが特徴です。そしてこれらの理論はネット上に公開されているので、誰もが見ることができるのです。

GD 以前の理論が、伝えづらいような秘伝のモノや流儀的なモノだったのに対し、現在の最先端の理論はコモン・セオリー(共通理論)になっているということですね。

目澤 
そうです。だから今の理論はA、B、Cあれば、どれを選んでも100点を取れるというような状況なんです。そして今の若い世代はITリテラシーが高く、誰もが最新の理論に簡単にアクセスできるので、もはや自分だけで情報を独占できる状況ではないわけですよね。

X ある意味、情報戦ですから、アメリカの大学の選手もコーチも練ランはコースの情報集めで本当に忙しそうですよ。

目澤 今年のUSオープンで米国留学中の大学生の山脇健斗くん(※1)と話をしましたが、プロのコーチである僕と普通にディケイドゴルフ(※2)の話題になりましたからね。そういう子は日本にいる学生ではあまりいないので、やはりアメリカの学生の情報への感度は凄いなと思いましたね。

(※1)山脇健斗……コリン・モリカワの出身大学であるカリフォルニア大学バークレー校に2019年から在学。(※2)ディケイドゴルフ……ディケイド(10年)かけて会得する最善のマネジメント術をまとめたもので、スコット・フォーセットがタイガー・ウッズのショットなどを分析し法則化した。①PAR5でボギーは打たない。②150Y以内からボギーは打たない。③スリーパットはしない。④ダブルボギー以上は打たない。⑤簡単なアプローチのミスを犯さない、といった内容

目澤秀憲

めざわひでのり。1991年2月17日生まれ。13歳からゴルフを始め、日大ゴルフ部を経てプロコーチに。TPIレベル3を取得。2021年1月より松山英樹のコーチに就任

黒宮幹仁

くろみやみきひと。1991年4月25日生まれ。10歳からゴルフを始める。09年中部ジュニア優勝。12年関東学生優勝。日大ゴルフ部出身。松田鈴英、梅山知宏らを指導

週刊ゴルフダイジェスト2021年10月19日号より