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【山を動かす】年間王者にビッグボーナス。PGAツアーの「プレーオフ」システム、どう思う?

ゴルフにまつわるさまざまな問題に関し、読者や識者に率直な意見をぶつけてもらう連載「山を動かす」。今回のテーマはPGAツアーのプレーオフシステムについて。PGAツアーのプレーオフシリーズが終わり、2020-21シーズンは終了。おなじみ、最終盤の「ポイントドン、ボーナスドーーン」は、盛り上がる? それとも不公平?


プレーオフシリーズの仕組み

2020-21シーズンのプレーオフシリーズは全3戦。125人が参加し、総額65億8000万円を争った。通常の3倍のポイントが加算される最初の2試合で70人から30人に絞られ、最終戦のツアー選手権でポイントランク1位が10アンダー、2位が8アンダー、3位が7アンダー……という“ハンディ”をもらってスタートする。このシリーズの優勝者が「年間王者」となり、16億円のビッグボーナスを得る。


●07年に始まったプレーオフシリーズは、端的に言えば、タイガー・ウッズを米ツアー最終戦まで出場させるための策でした。それまでは「フォールシリーズ」といって次の年のシード選手を決定する試合をやっていましたが、これにはタイガーをはじめ有力選手は出場しません。これではテレビ中継側は困る。そこで最後の3戦(18-19シーズンまでは4戦)を“1つのツアー”として、ビッグマネー(賞金総額6000万ドル)で盛り上げたんです。米テレビ界は、これでゴルフファンを最後の最後まで引きつけ、さらにその後、野球のワールドシリーズ、バスケット、アメフトになだれ込んでいくという寸法です。それで、元々のフォールシリーズはアジアシリーズへとシフトしていったわけです。しかしながら、日本の男子ツアーでのプレーオフシリーズは絶対無理でしょう。レギュラーツアーでもスポンサーがつかず四苦八苦しているぐらいですから。1970年代~バブル期頃まで、日本ツアーも米国に肩を並べかけたことがあったのですが、そのときに先を見据えて手を打っていなかった差ですかね。米ツアー中興の祖、コミッショナーのディーン・ビーマンはPGAとして自前のゴルフコースを所有しました。それが日米ゴルフの差を広げた分水嶺になったと思います。(タケ小山/テレビ解説者)

●観るプロスポーツにおいて、大逆転のドラマは面白いですよね。その点でいえばプレーオフシリーズはファンの気持ちをワクワクさせるといっていいでしょう。テレビの視聴率も上げられるでしょうし。ただオールドファンとしては、ツアーに“季節感”がないのが不満です。なんだか、いつまでもダラダラやっている感があります。ツアー終了のお尻を決めて、しばらくオフがあって、新たに幕開け、という形だと開幕を心待ちにするという高揚感が出ますがね。かつては新年のハワイアンオープンが待ち遠しかった記憶があります。日本ツアーでは日本シリーズが掉尾を飾りますが、本来のレギュラーツアーが盛り上がらないことには、掉尾もへったくれもありません。男子ツアーはテレビつけると、ああやってるんだ……とそんな気持ちですね。興味がある選手がいないと、すぐチャンネルを切り替えますしね。女子ツアーはその点、ヒロインは週替わりだし、面白い。日本の女子ツアーでプレーオフシリーズをやったら、さらに盛り上がるのではないでしょうか。(川上貴光/ノンフィクションライター)

●優勝ボーナスに16億円出すより、若手の選手の試合を1つでも作ってあげたらいいのにといつも思います。食えないプロゴルファーだらけでしょうに。アメリカンドリームといえばそれまでですが、すごい格差。(40代男性・東京都)

●プレーオフシリーズでシーズン終盤は盛り上がるが、逆に序盤の試合に興味が薄れた。しかし、そうこうするうちにメジャーリーグのポストシーズンが始まって夢中になるから、私はアメリカのテレビ局の思うつぼ。(40代男性・埼玉県)

直近の年間王者は、20-21シーズン=パトリック・カントレー(写真:Golffile/アフロ)、19-20シーズン=ダスティン・ジョンソン、18-19シーズン=ローリー・マキロイ

ゴルフツアーは単なるアスリートスポーツではなくて、やはり興行の側面が大きいから、いかにファンに楽しんでもらうかということは大事です。そのための工夫としてプレーオフシリーズというものもあってもいいんじゃないかと思います。日本のプロ野球のクライマックスシリーズも興行としての工夫だと思います。レギュラーシーズンでは、新人が活躍してもいいですけど、新人はまだ知名度が低いので、なかなか一般のファンに認知されません。事実1勝で消えてしまう選手もいます。それでは興行的に意味がないんですよね。そういう新人が、優勝を重ねて認知度を高めて有名選手へと成長して、ファンを集められれば興行として成功といえるわけです。レギュラーシーズンの終了時点で上位に入って、ファンに認知されている選手がプレーオフシリーズに進出できるわけですから、ファンからすれば見たい選手が揃っています。興行的には、お客に興味を持ってもらわなければならないのですから、僕としては不公平だとは思いませんね。(水巻善典/プロゴルファー)

●日本のプロ野球でもクライマックスシリーズがあります。2007年から始まった比較的新しいシステムで、僕は当初“反対派”でした。長いシーズンを戦ってきて、最後の数試合でひっくり返されるのはやりきれないという選手目線でした。それが10年以上たって、今はすっかり定着してきた感がある。すると、これはこれで面白いなと思うようになりました。シーズン終盤のいわゆる消化試合も減り、ファンにとってはドキドキワクワクが持続しますからね。現状、シーズンを1位で終えたチームにはクライマックスシリーズで1勝のアドバンテージが与えられていますが、これもなくていいんじゃないかと思うようになりました。ホームで試合できるというアドバンテージもあるわけですから。上位3チームが同じラインからヨーイドン。これは盛り上がりますよ。PGAツアーのプレーオフでも、最終戦では1位の選手は10アンダーでスタートするなど大きなアドバンテージが与えられているでしょう。あれもなくてもいいと思うんです。あと、プレーオフに出る選手たちはすでに十分稼いでいるので、ボーナス16億円は多すぎるんじゃないかなあ(笑)。(飯田哲也/元プロ野球選手)

週刊ゴルフダイジェスト2021年10月12日号より


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