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【さとうの目】Vol.219 パトリック・カントレー「クールでも根はアツい男」

PHOTO/Tadashi Anezaki

鋭い視点とマニアックな解説でお馴染みの目利きプロ・佐藤信人が、いま注目しているプレーヤーについて熱く語る連載「うの目、たかの目、さとうの目」。今週は、今季PGAツアーの年間王者に輝いたパトリック・カントレーに注目。

最終戦のツアー選手権を制し、シーズンの年間王者に輝いたパトリック・カントレー。冷静で黙々と仕事をするタイプは、ボク好みの選手です。

プレーオフの名勝負が多かった今シーズンのPGAツアーですが、そのひとつが最終戦の1つ前のBMW選手権。体も大きく感情を露わにするB・デシャンボーに対し、178㎝・73㎏、「パティアイス」とニックネームをつけられたカントレーは終始無表情でクールにプレーする真逆のタイプ。結果は、カントレーがギャラリーの大声援に押される形で6ホール目に決着をつけました。続くツアー選手権でも、やはりプレースタイルも性格も対照的なJ・ラームに競り勝ち、「パティアイス」の真骨頂を見せつけました。

シーズン4勝は自己最多ですが、ZOZO選手権ではJ・トーマスとラーム、メモリアルトーナメントではプレーオフでC・モリカワ、そして前述のBMWとツアー選手権、いずれも強豪を退けての4勝です。55週連続で世界アマランク1位に君臨した天才。背骨の疲労骨折、目の前で親友でもあるキャディのクリス・ロスがひき逃げ事故で死亡するといった不幸を乗り越え、いよいよ本領発揮です。


読書家のカントレー。成功者の自伝を読み「人に左右されず物事を運ぶ」という共通点を発見したと言います。BMW優勝後、好調の理由を「自分は何も変わっていない。あれこれ変えるタイプではない」と答えています。ツアーに行くと新しいスウィング理論、クラブ、トレーニング、他人の評価と情報が錯綜。それらに振り回される選手も多いなか、「自分がスウィングで何かを変えるときは、それを繰り返し練習し、試合でもやってみて長い時間をかけて評価する。だから次々にいろいろなことはやらない」というカントレー。これこそ彼の凄味でしょう。

注目すべきは、今月末に開催されるライダーカップ。米国チームはランキング上位6人を自動選出、残り6人をS・ストリッカーのキャプテンピックで選ぶと早くから表明していました。カントレーもBMWの優勝でランキング6位に滑り込み出場権を獲得しました。

じつはボクは、我が道を行くタイプのカントレーは、団体戦には興味がないのかと思っていました。ところがBMW選手権の取材で、「ライダーカップには常に意識がある」と答え、別の取材では「高校のチーム戦がゴルフをガッツリやるようになったきっかけ」と答えています。調べてみると17年からダブルス戦となったチューリッヒクラシックは、3年連続でP・リードと組み、今年はX・シャウフェレと組んで出場。日程的に多くのトッププロがスキップしがちな大会。表情には出さずともカントレーのチーム戦に対する思いが伝わってきます。チーム戦での「パティアイス」が、どんなふうにアツくなるのか。楽しみですね。

パットはジャストタッチ

「スウィングは綺麗で“今ふう”、飛距離も出る。でもどこか職人的で穴のないタイプ。パットはジャストタッチ。昨年末のインタビューで松山くんにパットが一番上手い選手を聞くと『ちょうど良く入れる感じが好き』とカントレーの名を挙げていました。バックスウィングを大きくとってフォローが短い独特のストローク。パットの名手、B・クレンショーやJ・レナードらとよく似ています」

佐藤信人

さとう・のぶひと。1970年生まれ、千葉出身。ツアー9勝。海外経験も豊富。現在はテレビなどで解説者としても活躍中

週刊ゴルフダイジェスト2021年9月28日号より

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