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【さとうの目】Vol.217 ガリック・ヒーゴ「ゲーリー・プレーヤーの秘蔵っ子。南アの好青年」

鋭い視点とマニアックな解説でお馴染みの目利きプロ・佐藤信人が、いま注目しているプレーヤーについて熱く語る連載「うの目、たかの目、さとうの目」。今週の注目選手は今年の活躍が目覚ましい南アフリカのガリック・ヒーゴ。

今回紹介するのは、その勢い、強運も含めシンデレラ・ボーイと呼ぶにふさわしい、南アフリカ・ヨハネスブルク出身の22歳、ガリック・ヒーゴです。19年、20歳でプロ転向しましたが、昨年までは欧州の下部ツアーを転戦する無名の選手でした。それが今年、欧州ツアーで2勝するとワールドランクをアップさせ、5月の全米プロに初出場。これがPGAツアーのデビュー戦です。6月には推薦で出場したパルメット選手権で、PGA2試合目にして逆転で初優勝。さらにワールドランクを上げ、東京五輪にも出場しました。

19年のプロ転向後は南アのサンシャインツアーでデビュー。予選落ち、3位タイ、45位の3戦後、アーニー・エルスのニックネームを冠した、南アの下部ツアーのビッグイージーツアーでプロ4戦目での初優勝を果たしました。そしてサンシャインツアーでも2勝を挙げ、ルーキー・オブ・ザ・イヤーに輝きます。20年は南アと欧州の下部ツアーが主戦場。そしてコロナ禍での再開後の昨年9月、ポルトガルオープンで優勝。実はこの大会はレギュラーと下部ツアーの共催で、どちらのランキングにも反映するユニークなシステム。この優勝でレギュラーツアーのメンバーカードを手に入れました。そして今年、4月から始まるスペインのカナリア諸島3連戦で優勝、8位タイ、優勝でワールドランクを51位まで上げ、前述のシンデレラ・ボーイ物語となるわけです。

父親は元クリケット選手で、ヒーゴが9歳のとき、自動車事故で亡くなりました。当時、ヒーゴと家族はゲーリー・プレーヤーの別荘の近くに住んでおり、9歳のとき、ゲーリーと初めて一緒にラウンドしたそうです。ゲーリーは大黒柱を失った一家に、様々な救いの手を差し伸べたようです。幼少の頃に母親を亡くしたゲーリー自身の人生とも重なったのでしょう。中学生になるとゴルフに専念するヒーゴを、頻繁に手紙や電話で励まし、一緒にラウンドする機会を設けていたようです。

2人の関係が明らかになったのは、全米プロ開幕前の記者会見。注目選手の一人として記者に囲まれた際、「毎日のように電話で励まされている」と明かしました。パルメット選手権では、優勝直後にゲーリーから電話があり、まるでお爺ちゃんと話すようなほほ笑ましいヒーゴの姿が映像に残っています。日本でいえば、20歳の若手に青木(功)さんが電話する、といった感じでしょうか。

ヒーゴの受け答えの感じは謙虚で礼儀正しく、それでいてゴルフには自信が溢れている……人として成熟した雰囲気が好感を持てます。同時にゲーリーの人間としての偉大さも感じますよね。プレー中に落胆、怒りの表情を見せることはなく、クラブを投げたこともないというヒーゴ。怒りの抑え方は「秘密」だそう。少し気の早い話ですが、近い将来、レフティのメジャーチャンプに名を連ねる選手になるかもしれませんね!

平均飛距離は310Y!

ふと眉であどけなさが残る22歳。「父も叔父も兄も2mを超える大柄一族のなかで183㎝のヒーゴは『自分は小柄』と言いますが、欧州ツアーでの平均飛距離は310ヤード(12位)とかなりの飛ばし屋。南アにはエルス、グーセン、ウエストハイゼンなど身体能力に恵まれながら体を静かに使う飛ばし屋が多いが、ヒーゴも同じタイプです」(Photo by Andrew Redington/Getty Images)

佐藤信人

さとう・のぶひと。1970年生まれ、千葉出身。ツアー9勝。海外経験も豊富。現在はテレビなどで解説者としても活躍中

週刊ゴルフダイジェスト2021年9月14日号より

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