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【わかったなんて言えません】Vol.46 浅地洋佑#2「ゴルフをやめようと何度も思った」

「ゲンちゃん」こと時松隆光がプロを招いてトークをする連載「わかった! なんて言えません」。今週のゲストは、先週に引き続き同じ学年の仲良しでもある浅地洋佑。プロ入り後、結果が出ず「ゴルフをやめよう」とまで思ったという浅地。果たしてどのように乗り越えてきたか。

前回のお話はこちら

ホスト/時松隆光

1993年生まれ、福岡県出身。ツアー通算3勝。プロ10年目。テンフィンガーグリップで戦う。愛称は“ゲンちゃん

ご指名/浅地洋佑

東京生まれ。ツアー2勝。ジュニア時代から注目され11年プロ入り。調子を崩す時期があるも復活し、19年ツアー初優勝

浅地 源ちゃんと初めて会ったのは、小学生のときの全国大会だったよね?

時松 僕は全国大会へ出られたのは1回だけだからそのときだね。初日を71で回れてホッとしていたら、洋佑が68で回ってきて、こんなやつがいるなんて、全国はやっぱりすごいなと。

浅地 そこからは頻繁に大会で会うようになって、源ちゃんも目立ってたよ。「時松源蔵」という珍しい名前だけじゃなくて、昔からテンフィンガーグリップだったから、あんな握り方でよく飛ばせるなと。それにスウィングも今と同じように、ゆ~っくりで。

時松 歯の矯正も目立ってたでしょ、レインボーのマウスピース(笑)。洋佑は高校2年のときにはすでにプロのツアーに出ていて、アマチュアなのにダイヤモンドカップで9位とか、チャレンジで最年少優勝とか、この世には天才っているんだなと。

浅地 でも、プロに転向して1年目でレギュラーのシードを取れて、それで満足しちゃったようなところがあった。2年目以降は「勝ちたい!」って強い気持ちがあまりなかったんだよね。

時松 強い気持ち?

浅地 やっぱりプロの世界は甘くない。技術的にどうこう言っても、強い気持ちがないと、上へは行けない。シード落ちしてからは、そこらへんにいるよく遊ぶ大学生みたいだった(笑)。

時松 僕とは違って日本中から期待されていたし、プレッシャーもキツかったんだろうね。

浅地 友だちと飲みにいくほうが楽で、ゴルフそっちのけだった。母親にどんだけ怒られても、反省なんかせずにね(苦笑)。

時松 練習はしてたでしょ?

浅地 してはいるけど、勝てないことがもどかしくて、もうゴルフをやめる、と母親に言ったことも何度かあった。

時松 洋佑がゴルフをやめるなんて、もったいない!

浅地 今思えばそうだよね。母親から「そんなあんたがゴルフをやめて会社に入っても、仕事なんてできるわけない!」と言われて。あそこで「やめれば」って言われていたら、本当にやめていたかも。ちょうどその頃だよ、源ちゃんがチャレンジとレギュラーとで優勝して、「シンデレラボーイ」って騒がれていたのは。同学年の源ちゃんの活躍は、悔しいというより、純粋にすごいなって。僕は成人してるのに自分で稼げていないもどかしさばかりだったのにさ。

時松 僕も12年にプロ転向してから16年まで勝てずにいたときは、交通費や宿泊費を出してくれている実家に、毎回悪い結果を報告するのが申し訳なかった。

浅地 僕は源ちゃんの大活躍が励みになった。高校時代までは勝ったり負けたりと争っていた仲なのに、源ちゃんがレギュラーで勝つのを見て、もしかしたら自分にだってできるんじゃないかなって。だけど、17年からパッティングイップスになって。パッティングが得意な源ちゃんには信じられないかもしれないだろうけど、ヘッドが上げられなくなってしまって……。

時松 ヘッドが上げられない?

浅地 きっかけは17年の開幕戦で、2段グリーン上段でのバーディチャンスを、下段まで打っちゃったんだよね。それ以来、構えても手を動かすことができなくて。ようやく動いたときは、ラインやタッチなんてどうでもいいから早く打ってしまおう、そんな感じ。だから1mから3パットしたことが何回もあったほどで。

「源ちゃんにもパット、教わったね! 考える余地をなくすこと、そして細かく正確な技術まで求めない余裕も大事です」(浅地)

時松 苦しかっただろうね。

浅地 ゴルフを始めて一番苦しかった。順手、クロスハンド、クロウグリップ、それに長尺パター、何でも試してみたけどダメで。いろんな人のパッティングを真似したし。源ちゃんの打ち方もやってみたけどダメだった(笑)。最後は左打ちまで考えたよ。

時松 だけど19年のダイヤモンドカップ、初めて首位で最終日へ。かなり難しいパットも決めていたよね。

浅地 トップに立っていることにビビらないように、逆にプレッシャーを自分で与えてみた。1ホールごとに、これを入れなきゃ脱落だって自分に言い聞かせて。その必死さが、ヘッドが上がるとか上がらないとかいうことを考える余裕さえなくしていたのかもしれない。あのときのパッティングの感覚、まったく記憶にないから。

時松 最終的には元のままの順手に戻して?

浅地 そう。やっぱり、握り方がどうこうではなく、とにかくこれを入れなきゃ! っていう強い気持ち。それと、球とフェースのポイントを正確に合わせなければいけないのではなく、どこに当たったとしても、思ったところに転がせられればいいじゃないかという余裕だよね。

時松 自分へのプレッシャーと、自分への余裕。なるほど、奥が深い話だなぁ。(つづく)

週刊ゴルフダイジェスト2021年9月7日号より