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【19歳のチャンピオン・後編】プレーオフを戦った笹生優花と畑岡奈紗。恩師が語る2人の共通点とは?

笹生優花の高校の恩師であり、杉並学院時代には石川遼らも指導した経歴を持つ吉岡徹治氏に、笹生優花との出会いと強さの秘密を聞いた

PHOTO/Robert Beck/USGA

【前編】笹生優花について知っておくべき7つのコト

一目見て、この子は将来
すごい選手になると思った

私が笹生優花選手と初めて会ったのは、5年前のタイアマチュア選手権。

当時、日本のジュニアたちの強化のために、4日間の大会を経験させたいと思い、アジア各国のアマチュア選手権に選手を連れて行っていたのです。タイアマチュア選手権はタイだけでなく、周辺の10数カ国から選手が集まる大会でした。すると、子どもたちから練習場に凄いボールを打つ選手がいる、しかも日本人らしいと聞いて見に行ったのですが、それが笹生選手でした。子どもたちが言うように、確かに素晴らしい球を打っていて、その豪快なスウィングは一目見て、これは将来すごい選手になると思いました。

当時の笹生選手はフィリピンを拠点に試合に出ていましたが、日本に戻ってきませんか、と誘ったのを覚えています。そのときは、将来的にはアメリカの大学に行ってプロになると言っていました。その後もアジアの大会で彼女の活躍を知っていましたが、転機になったのは3歳年上の畑岡奈紗選手だと思います。彼女もジュニア時代はタイなどで腕を磨いていましたし、ナショナルチームで海外派遣されることも多く、笹生選手と顔を会わせる機会も多かった。

2016年の世界ジュニアでは畑岡選手が優勝し、笹生選手が2位。でも同じ年の全米女子アマの準々決勝でも2人は対戦し、笹生選手が1UPで畑岡選手に勝っています。これは当時、衝撃的でしたね。中学3年生の笹生選手が高校3年生の畑岡選手に勝った。ジュニアの頃の3歳差というのは、けっこう大きな差ですからね。

そしてその年の秋の日本女子オープンで畑岡選手はアマチュアながら優勝したのですが、その優勝が笹生選手にも影響を与えたと思います。日本を経由してアメリカに行こうという考えになったんだと思うんです。それで、私のところに笹生選手のお父さんから連絡があったんですね。

笹生選手と畑岡選手はお互いに自分の実力を知るものさしになったんだと思います。お互いに最初からアメリカに行くことが目標でしたから。そんな2人が全米女子オープンでプレーオフ。運命を感じずにはいられませんでした。

プレーオフ3ホール目でバーディを奪った笹生が優勝。首位と6打差から出た畑岡の追い上げも見事だった(PHOTO/Darren Carroll/USGA)

2人に共通するのは
「根っからのゴルフ好き」

笹生選手の強さの秘密は、もちろんトレーニングで鍛えられた身体能力の高さにあると思います。アジア人特有のバネのような筋肉のしなやかさです。でもそれよりもすごいのが“根っからのゴルフ好き”ということ。

ジュニアの女の子はたくさんいますが、そのなかには熱心に教えてくれるお父さんに合わせているという子がいます。というかそういう子のほうが多い。だからゴルフは一生懸命にやるけど、練習が終わればプライベートな時間は別のことをやる。それが当たり前です。でも笹生選手は寝ても覚めてもゴルフというタイプ。ジュニアの女の子にはあまりいないタイプですが、そういう子が実は伸びるし成功するんですね。畑岡選手も同じタイプだと思います。

笹生選手も畑岡選手もこれからもっと世界の舞台で活躍するでしょう。今後が本当に楽しみです。

吉岡徹治

杉並学院中学・高校ゴルフ部監督時代に石川遼をはじめ多くのジュニアを指導。現在は、笹生優花も所属した代々木高校ゴルフ部の総監督を務めるほか、アジアジュニアゴルフ協会代表理事としてジュニア育成に尽力

週刊ゴルフダイジェスト2021年6月29日号より