Myゴルフダイジェスト

【わかった! なんて言えません】Vol.36「信じる者は、強い」

「ゲンちゃん」こと時松隆光がプロを招いてトークをする連載「わかった! なんて言えません」。先週に引き続きゲストは、開幕から好調を維持する宮本勝昌プロ。48歳になっても活躍を続ける裏に「チーム芹澤」の存在は欠かせません。宮本プロの最終回は、師匠や信念についてのお話。「チーム」と「テンフィンガーグリップ」には、大事な共通点があるようなのです。

ホスト/時松隆光
1993年生まれ、福岡県出身。ツアー通算3勝。プロ10年目。テンフィンガーグリップで戦う。愛称は“ゲンちゃん”
ご指名/宮本勝昌
1972年生まれ、静岡県出身。日大在学時から活躍。95年プロ入り後ツアー12勝(メジャー5勝!)。151試合連続出場という“鉄人”記録も

前回のお話はこちら

時松 先日、宮本さんは、年齢の壁とは共存するけどあっさり受け容れはしないとおっしゃっていましたが、この5月には5試合中3試合で最終日に優勝争いをされ、そのとおりの展開になっています。

宮本 年齢とともに技術も体力も右肩下がりにならざるを得ない。その下がり方をできるだけ緩やかにすることが今後の課題だと思っていて、とくにここ2~3年は右肩上がりは無理でも、なんとか下がらないよう必死に耐えようと思ってやっています。

時松
 練習量はどうですか。

宮本 身近にいる芹澤(信雄)さんや藤田(寛之)さんがものすごく練習量が多くて、どんなに僕がたくさんやったと思ってもなかなかあの2人に追いつけない。そこは20年以上ずっと変わりません。ただ、この歳になると体が痛いとか調子がよくないときもあるので、そこは体調なんかと相談しながら、練習などのオプションが増えましたね。

時松 宮本さんは20年以上、芹澤さんや藤田さんたちと一緒にやっていらっしゃいますが、僕は普段一人で練習をするので、チームのよさを知らないんです。

宮本 チームといっても、元々は藤田さんも僕も個々に芹澤さんにゴルフを教えてもらいたいというのが発端で、たまたま僕と藤田さんのウマが合ったので、皆で練習や行動を共にしているうちに『チーム芹澤』という感じでメディアに取り上げられるようになったんです。藤田さんは3歳年上の先輩だけど、お兄ちゃんのときもあれば友達みたいなときもある。芹澤さんも師匠だけれど遊ぶときはお兄さんみたいだし、何か相談をするときはお父さんみたいになる。

時松 宮本さんにとって、芹澤さんは心強い存在なんですね。

宮本 心強いですよ。僕は、基本的に芹澤さんの言うことさえ聞いていれば、上手くいくと思っているし、そのとおりになってもいます。4月の関西オープンでは藤田さんも僕も予選落ちして、その週の日曜日に太平洋御殿場で2人、芹澤さんに教わりながら球を打っていたんだけど、この光景っていつまで続くんだろうって思いながらやっていました。おっさん2人が未だ芹澤さんに教えを乞うという光景です(笑)。本当にありがたいです。でも源ちゃんにも篠塚コーチという心強い存在がいるじゃない。

「すごく居心地がよい。しなければいけないルールもないから、長く一緒に居られるんだろうと思いますね」(宮本)

時松 僕の場合は握り方がベースボールグリップで普通とは違うので、いい意味で、篠塚コーチしかいないというふうになっちゃっているんですけれど。

宮本 でもその握り方が認知されたら、それが王道になるということがあります。だから、源ちゃんのように“自分”を持っているというのは強いし大事です。藤田さんがそうですよね。悪く言えば頑固なんだけど、ゴルフスタイルとか振る舞いなどに芯があるというか、内に秘めている強さみたいなものを感じる。僕はそういうのをカッコイイと思うほうだから、憧れはありますよね。だから源ちゃんも、その握り方をずっと変えないほうがいいと思うけどね。

時松 そう言っていただき、ありがたいし自信になります。最近はジュニアでもベースボールグリップで握る子が出てきていますけど、これまでは僕しかいなかったので、それが合っているのかどうかもわからない部分がありましたから。

宮本 でも、源ちゃんはそれを信じてやってきたでしょ。信じていれば合ってくるということもある。僕の場合はそれが“芹澤信雄”です。信じて続けてきた。芹澤さんに最初にお会いしたのは高3のとき。18歳からですから、もう思い込み
ですよ。

時松 他の人に教えてもらいたいと思ったことはないんですか。

宮本 ないです。だって芹澤さんの言うとおりにしていたら優勝できたし稼げたから。それを変える必要はないでしょう。源ちゃんがあの握り方を変える必要がないと思うのは、左手の親指を離して握るというのは本当に理に叶っているとつくづく思うから。僕みたいにインターロッキングなんかで握っていると、どこかで指が引っかかるから必ず痛くなる。丸山(茂樹)先輩も左手の親指に負担がかからないようにテンフィンガーにしていた。源ちゃんはパッティングも同じ握り方だもんね。

時松 はい。宮本さんはパッティングのグリップは?

宮本 僕は基本的に不器用だから(片山)晋呉みたいに毎日変えられないので、順手のグリップしかできないんです。源ちゃんはクロスハンドの経験は?

時松 したことないです。

宮本 まあ、あれだけパターが上手ければやる必要もない。今後、ベースボールの握り方が世界ではやるかどうかはわからないけど、でも他の握り方よりは指への負担は少ないから、間違いなく指のケガは減らせると思うので、ゴルフを長くやるためにもよいと思いますよ。

時松 よいアドバイスをありがとうございます。

週刊ゴルフダイジェスト2021年6月22日号より