Myゴルフダイジェスト

【わかった! なんて言えません】Vol.35 選手もメディアもキャラづくりを!

「ゲンちゃん」こと時松隆光がプロを招いてトークをする連載「わかった! なんて言えません」。ゲストは先週に引き続き、JGTO選手会会長経験者の宮本勝昌プロ。今回は技術からちょっと離れたお話ですが、我々の日常生活のヒントにもなるはずです。

ホスト/時松隆光
1993年生まれ、福岡県出身。ツアー通算3勝。プロ10年目。テンフィンガーグリップで戦う。愛称は“ゲンちゃん

ご指名/宮本勝昌
1972年生まれ、静岡県出身。日大在学時から活躍。95年プロ入り後ツアー12勝(メジャー5勝!)。151試合連続出場という“鉄人”記録も

前回のお話はこちら

時松 宮本さんは08、09、11年の3期で選手会長を務められましたが、僕に対して要望やアドバイスはありますでしょうか。

宮本 いやぁ、一流企業の社長さんたちを前にしての挨拶も理路整然としているし、ほんと、よくやっていると思いますよ。

時松
 ありがとうございます。

宮本 ただ、最近の選手会長というか選手会の活動はやりすぎな部分があるのでは、選手はもっと自分のプレーに専念させるべきでは、と思うことはあります。我々の代の深堀(圭一郎)、横田(真一)会長時代からそういう動きが出始めて、(石川)遼や(池田)勇太の会長時代は選手会がアイデアを出して会長自らが動くというのが当たり前になり、今に受け継がれている。もちろん悪いことではないとは思うけれど、少し選手会長に負担がかかりすぎているんじゃないかなと心配はしています。

時松 いえ、そこは去年、VISA太平洋マスターズを開催してくださった御殿場市に選手会から御礼の意味を込めて寄付をさせていただいたんですが、コロナ禍で動きづらい僕の代わりに御殿場にお住まいの宮本さんに御殿場市長さんを訪問していただきましたし。(宮里)優作さんにもAbemaTVツアーの関係で動いてもらったりして、いろんな方に支えていただき今の僕があると思っているので、感謝しかないです。

宮本 まあ、我々が首を突っ込んでとやかく言うことでもないし、今の時代の考え方もあるだろうから、源ちゃんなんかが頑張って引っ張って良い方向に向かえばいいと思います。

時松 はい。頑張ります。あらためて宮本さんから見て、最近の男子ツアーはどうですか。

宮本 今はどの大会も若手が上位を占めることが多くなっています。4月の東建のトップテンの顔ぶれも、僕以外は、ほぼ20代で、僕の知り合いの人などからは「宮本くん以外の選手は知らないよ」って言われました。僕より少し年齢が上の人が、今の若手を知らない。金谷(拓実)くんなんかは、ある程度は知られているのかもしれないけど、他の若手なんかはメディアへの露出の機会が少ないから、せっかくこれだけ活躍をしているというのに、認知度が低いのはもったいないと思うよね。

時松 どうすれば認知度を上げられるんでしょう。

宮本 いやそれは源ちゃんが一時、『ジャンクスポーツ』で原英莉花プロに告白するような形でキャラクターができて(笑)、一般の人にも名前を知ってもらえたけど、ああいうことは大事だと思います。

時松 でも一方で、男子は技術を見せてなんぼやとか言われることもあるんですよね。

宮本 もちろん、ゴルフを一生懸命やるのは当たり前だけど、いくら頑張っていても名前も知られていない状況は何とかしたいじゃない。源ちゃんだってどこまで本気でああいうキャラをやっていたかわからないけれど、その辺は番組MCの浜田さんとかが上手くキャラを仕立ててくれた部分もあって、結果的にそれが好感を持たれて、自分にもゴルフ界にもスポットライトが当たる部分があれば、それは悪くはないことだから。

時松 プロにとって、メディアに取り上げてもらうということは大事なことです。

宮本 女子は話題やコメントをメディア側が拾ってくれるけど、男子はなかなか拾ってもらえないのが現状。選手側も努力じゃないけれど、アピールしないといけない部分もあると思う。僕がゴルフをやり始めた1990年くらいは、プロゴルファーのイメージは、派手なウェアにウールのパンツでちょっと独特な雰囲気だった。それが90年代の中頃から芹澤(信雄)さんが、綿パンに爽やかな色合いのウェアを着てプレーをしたりメディア露出も考えた結果、ゴルフに対するイメージがガラッと変わったんです。でも当時は、そういうことでさえ、今でいう“チャラ男”的な扱いをされて叩かれることもあったんですよ。

横尾要、片山晋呉と“日大三羽烏”の95年プロテスト合格時。メディアも大注目だった。「何か新しいことをするとなると逆風もあるかもしれないけど、アクションを起こすということは大事なことなんです」(宮本)

時松 選手会でもPR担当の遼さんが中心になってファンプロジェクトを立ち上げていますけど、個人レベルでも、発信していくことが大事ですよね。

宮本 インタビューの受け答え1つにしても、「今日はいいプレーができました、明日も頑張ります」よりは、ちょっとした時事ネタや話題を絡ませたりすると記事も書きやすいし、今で言えばネットのヤフーニュースにも上がりやすい。石川遼がメディアに取り上げられることが多いのは、もちろん人気が高いということもあるけれど、彼は記者の1つの質問に対して、2つ、3つと気の利いた答えを返してくる。もちろん、全員が遼みたいにできるわけじゃないけど、それぞれのキャラクターに応じた発信の仕方で、自分にもゴルフにも注目が集まるように考えていくべきなのかなと思いますよね。

週刊ゴルフダイジェスト2021年6月15日号より