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【わかった! なんて言えません Vol.34】ニッポン男子のレベルは上がっている!

「ゲンちゃん」こと時松隆光がプロを招いてトークをする連載「わかった! なんて言えません」。先週に引き続きゲストは、宮本勝昌プロ。以前、PGAツアーに参戦した経験もある宮本プロは、自身がチャレンジした時代と比べて思うところもあるようです。

ホスト/時松隆光
1993年生まれ、福岡県出身。ツアー通算3勝。プロ10年目。テンフィンガーグリップで戦う。愛称は“ゲンちゃん

ご指名/宮本勝昌
1972年生まれ、静岡県出身。日大在学時から活躍。95年プロ入り後ツアー12勝(メジャー5勝!)。151試合連続出場という“鉄人”記録も

前回のお話はこちら

時松 東建の最終日に「レギュラーツアーで全試合出場するのは、おそらく今年が最後になる」というコメントをされていましたけど、あれはどういったことなんですか。

宮本 今年49歳で来年からシニアツアーに参戦できるから、そうなったらシニアにもレギュラーにも出たいと思っているので、レギュラーのフル参戦は今年で最後になるだろうということです。だから、来年はレギュラーの出場試合数は減るけど、シニアと合わせたら、出場試合数は多くなると思います。

時松 ファンの方はレギュラーからの撤退かと心配したと思います。

宮本 いやいや、そうではなく、レギュラーにもシニアにも出たいという欲深さですよ。いつまで出られるかわからないけれど、レギュラーの出場試合数を減らしても、シードを取りたいという気持ちはありますから。今のところ出場試合数は年間16試合くらいをめどにしているので、その16試合でシードを取る気持ちではいます。ここ数年のレギュラーツアーは本当にレベルが上がっているので、そんなに簡単ではないとも思っていますが。

時松 おっしゃる通り、若手も頑張っていますので、ツアーのレベルは間違いなく上がっていると思います。

宮本 ここ数年の予選カットのスコアなんか見ても、本当にレベルが上がっている。1ストロークのなかに多くの選手がひしめいていて、予選を通れば決勝ラウンドでは誰もが上位にいける可能性はある。それくらい今は予選を通ることが大変になっているんです。だから個人的意見では、カットラインを今の60位から世界基準の65位にしたらいいと思うよね。

時松 とくに今年は、松山(英樹)さんのマスターズ優勝の快挙に刺激を受けて、レギュラーツアーでは例年に比べても選手の皆のヤル気が違うと感じますし。

宮本 夜中の3時から起きていたけど、18番ホールは涙しながら見ていた。何の涙かわからないけど、僕らの世代的にも、アレは泣きますよ。

時松 宮本さんは以前(1999年)、米ツアーに参戦されましたが、当時と今のPGAツアーを見て、何か違いを感じますか。

宮本 まず飛距離が違うでしょ。ざっと計算してもデータ的には僕の40~50Y先にいくわけだから。だから飛ばないといわれる選手がそういうなかで活躍をしているのを見ると、本当にすごいと思いますよね。ブライアン・ハーマンとか、以前賞金王になったルーク・ドナルドとか、マット・クーチャーとか。

時松 ご自身は、当時、飛距離ではどうだったんですか。

宮本 いや、これは不思議な現象でね、こ~んな大男たちに対して僕は飛ぶほうに入っていたんです。でもこれはね、当時の日本のテクノロジーが世界に勝っていたということなんです。

時松 どういうことですか。

宮本 当時の日本製クラブの製造技術は世界をリードしていました

時松 でも外国人相手に飛距離で負けないのはすごいです。

宮本 ただね、米ツアーで戦っていくうえでの技術が足りない。この芝はこういう打ち方をするとか、こういう球でグリーンを攻めるとか、バリエーションがない。でも、シードを取れずに1年で帰ってきてよかったと思う。もし生半可に出られて数年向こうでプレーしていたら、その後にもっと悩んじゃったかもしれない。アメリカという国も好きだし、チャンスがあれば米シニアのPGAツアーチャンピオンズにも出たいと思っていますけれどね。

「松山くんのようにすぐに世界のトップで活躍するのは難しいかもしれないけれど、小平智くんのようにポーンと勝ったり、メジャーでいきなりトップ10に入る日本の若い選手が出ることは、大いにあると思います。僕もいつかチャンピオンズツアーに挑戦したいですね」

時松 僕も、全米プロに出ましたが、楽しかったです。全英オープンにも出ましたけど、飛ばない選手でも球が転がってくれるので、チャンスがあるのは全英のほうかなと思いました。もちろんバンカーにつかまったらダメなので、“線”で打てればの話ですけど。日本国内で強くても世界では通用しないというような声をよく聞きますが、今後、松山さんに続いて、世界で活躍していただける選手が増えれば、日本男子ツアーも認めてもらえるのではないかと思うんです。

宮本 僕の感覚では、そういう内弁慶的なことって、あと5年もすればなくなってくると思う。日本のサッカーがそうなりつつありますよね。多くの日本人が世界のクラブチームで活躍している状況が、日本代表の実力の底上げになっている。

時松 そうですね、日本ツアーのレベルも間違いなく上がっていると思うので、今平(周吾)さんを筆頭に、世界で活躍していただける選手が増えれば。

宮本 ゲンちゃんだって(笑)。

時松 はい、頑張ります。そして、松山さんもたまには帰ってきて日本のギャラリーの方の前でプレーをしていただければ、男子ツアーもイイ感じになってくると思います。

週刊ゴルフダイジェスト2021年6月8日号より