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【ゴルフノートの効果】<前編>「後に起きる同様の感情、場面を乗り越える資料になる」

世界王者・ドジャースのエース、山本由伸がベンチでノートを書いている姿をご存知だろうか。彼は子ども時代から“手書き”というアナログ行為で成長を続けている。実はゴルフ界でも多くのプロたちがジュニア時代から「ゴルフノート」を使っている。好調の裏にノートあり。その効果を探った。

PHOTO/Tadashi Anezaki、Shinjiro Matsumoto、Getty Images

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【由伸ノート】ゲームプランを確認する 山本由伸
12歳の頃からノートを付けている山本。試合中もペンを走らせノートを見る。中学時代のチームのルールで始め習慣に。投球時の気づきや体の状態、相手打者への攻め方などを記入するという


Case1
有力ゴルフ部のリベンジノート
「後に起きる同様の感情、場面を乗り越える資料になる」
菊池美幸(日章学園ゴルフ部監督)

今季好調、現在メルセデスランク2位の河本結は、長い間ゴルフノートを付けている。「いつも見直して、試合にも生活にも役立てています」。そして、こちらも今季好調の同級生プロ、同3位の菅楓華、同6位の荒木優奈もゴルフノートを書いていた。出身校、宮崎の日章学園高校ゴルフ部の教えで、その名も「リベンジノート」。

2人とも今はやっていないそうだが、「1年前まで振り返りをしていました。ちょうどゴルフが安定してきたときですね。今日はこんな感じだったと振り返りをすると、1日のスコアにあまりとらわれないようになり、逆にスコアもよくなりました」(菅)。「高校時代書いていました。試合のその日のうちに振り返りができて次に生かせるのです」(荒木)。

ゴルフ部の“みゆき先生”こと菊池美幸監督に聞くと、「実はあるゴルフ雑誌の企画をそのままコピーして使わせてもらっています。やはり自分の記録は残しておいたほうがいい。いい時もですが、特に悪い時のことは記録をして見直すことをやったほうがいいと考え始めました。他のいろいろな部活でも取り組んでいますしね。その日試合で自分が感じたこと、特にダメだった場面でどう思ったか、また今後どうしていくのかを含めて書き残すことで、後に起きる同じような場面、同じような感情を抱いた時に乗り越える資料になると考えています」

みゆき先生自身、高校・大学と体育会で剣道に取り組んできた。「もうだいぶ前ですけど、私も記録して後から読み返して役に立った記憶があります。悪い時は自分がどういう気持ちだったか、負け続けているときに何を考えていたのか、恐怖はあったか、その次の試合に出てどうだったのか、など。技術面も書きましたけど、私自身、一番メンタルで悩んだので。そういう部分は今の生徒たちにも共有できるかなとも思います」

このノート、基本は試合のラウンド後、その日に書いたものを提出する。そこにみゆき先生が赤字で言葉を記入して返すのだ。

「自分で書くことで、“そのとき”と“その経験”を忘れません。スコアや誰と回ったかなども書きますが、できるだけ本人が思ったことや感じたことが知りたい。そこに、私が必要だと思うことを必ず書いて返します」

自分が感じたことを書いて提出。監督の言葉が赤字で入って返信!

表に学校のロゴマークが入った手作りノートを部員に配る。けっして強制ではないが、提出すると監督からの“赤字”のメッセージが記入されて戻ってくる

朝練などでも監督の話をメモする部員たち。「ただ聞くだけでは抜けることも多くて、それをなくすため始まりました。でもこれも、後で見返さなかったら意味はありません」(菊池)

読み返す(振り返る)という行為も大切だというみゆき先生。

「いい時は何も考えないけれど、悪い時は考えますよね。その時に読み返すことで“脱出”のヒントになる。なぜそうなったのか、状況もよみがえると思いますから、私のコメントも含めて参考にしてもらえたらいいなと思います」

けっして強制はしない。今も1年生全員に配り、6月の試合では全員に提出してもらうが、その後は自主性に任せている。

「“出さなくてはいけない”となると、提出の日に、昨日のことを一生懸命書くようになる。ただ人に見せるためのノートになると意味がないのです」

ノートは「自分で考え、自分と向き合う」ことにも役立つのだ。多くのプロを輩出してきた日章学園。卒業までにノートが何冊にもなる部員もいるという。

「荒木優奈や菅楓華も書いていました。楓華はこれまでのトップを争うくらいよく出していましたね。(小浦)和也は今もやっているんじゃないかな。そういえば部の成績がよかった時は書いている部員が多かったかもしれません」

卒業生の小浦和也は語る。

「先生の言うとおり今も書いています(笑)。書くほうが好きですし重みが違う。毎日ではなくてもラウンドの時は、データなども含めていいことも悪いことも振り返ることが大切。ラウンド後すぐだと悶々としていることもあるので、お風呂に入って落ち着いて寝る前などに冷静に書く。悩んだ時に見直しますし、同じ大会が来たら前年のものを見返して、この日はこんな思いでこんなゴルフをしていたんだとわかるのがいいんです」

最近では、監督が行けない試合の報告はLINEでのやり取りにしているという。「ラインでも文字は残りますから。数字だけでなく、状況や気持ちを細かく打ってくる部員もいます。それには私も細かく返します。実は苦手で指1本で打っていますけれど(笑)」。

言葉のやり取りで心をつなぐことが、成長をうながすのだろう。

今季好調・菅楓華も記録!
「“振り返り”でゴルフが安定します」

高3時の菅楓華。笑顔でノートを見せてくれ、「ラウンドでの技術やメンタル面のよいことも悪いことも書きます。試合前などに見直すことで自分を見つめ直せます」と答えた


【結ノート】情報を自分の感覚でかみ砕く 河本結


今季、国内メジャー含め2勝を挙げて好調の河本結もジュニア時代に始めた。「コーチに言われたことを覚えずに繰り返し同じミスをするから母に書くよう言われました。小学校で始めて、中学・高校時代はコーチに習っていなかったので特に書かず、18歳で本格的にノートを付けるように。コーチから聞いたいろいろな情報を、自分の感覚でかみ砕いて、自分に必要な情報を理解してまとめられるようになりました」ノートパワーで人間力もアップし、年間女王へ突き進む!

(左)荒木優奈と菅楓華、(右上)長峰美桜(高1)、(右下)小浦和也
多くのプロを輩出している日章学園。リベンジノートも伝統の一部だ。「書いて振り返る」ことが、22年、緑の甲子園での史上初の団体戦男女アベック優勝にもつながったはずだ


メモを取る部員たち。「福田萌維は、車の中で私が話し始めると、『ちょっと待ってください』とメモを取り出してわざわざ書いていました」(菊池)

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週刊ゴルフダイジェスト2026年6月23日号より