【ゴルフノートの効果】<後編>「心や体の状態をチェック。書くことで頭の中がすっきりします」
週刊ゴルフダイジェスト
世界王者・ドジャースのエース、山本由伸がベンチでノートを書いている姿をご存知だろうか。彼は子ども時代から“手書き”というアナログ行為で成長を続けている。実はゴルフ界でも多くのプロたちがジュニア時代から「ゴルフノート」を使っている。好調の裏にノートあり。前編に続き、その効果を探った。
PHOTO/Tadashi Anezaki、Shinjiro Matsumoto、Getty Images

Case2
「『瞑想』の後に書くことで、潜在能力の扉が開く」
お坊さんコーチのジャーナリング
中村映禅(僧侶、プロゴルファー&コーチ)
昨年9月に史上最年少15歳139日でプロ転向した“金ちゃん”こと加藤金次郎もゴルフノートを付けている。
「昨年の11月から。こういうこともプロの世界で戦っていくためには大事だと思い、始めました。自分からというよりコーチにすすめられて。でも僕もやると決めたら絶対にやるほうです」
毎日、朝と晩に書いているというから驚く。
「習慣になっています。自分のゴルフの状態だけではなく、心や体の状態をチェックすることは大切ですし、安定した成績を残すことにもつながります。書くことによって頭の中がすっきりします」
コーチは「ZENメソッド」を伝授してきた中村映禅。浄土宗の僧侶の肩書を持つ異色のプロゴルファーだ。中村の教えに「瞑想」があり、これと「ノート」はつながっているのだ。「昔からやってほしいと思っていましたが、本人が自分で『やる』と決めた日に始めました。昨年プロとなり、仕事としてメンタルを鍛えること、また決められた時間をきちんと過ごす必要性を感じた。若くしてプロになるというご縁をもらったのだから、それをしっかりと確立するために、どういうふうに生きていけばいいのか考えていきましょうと。常に自分を見つめ直して、都度目標を定め達成していく。達成するための行動を毎日振り返りながらやっていくと決めたのです」
瞑想や記録は、ご飯や歯を磨くように毎日のルーティンとなっている。
「絶対に朝の1時間の瞑想、夜の1時間の瞑想、朝の30分のジャーナリング、夜の1時間のジャーナリングを1日のルーティンに入れると約束したんです」

JPGAのティーチングプロで実家は奈良で650年続く浄土宗の「西迎院」。現在はタイ在住でレッスン活動やタイシニアプロゴルフ協会会長として活動
16歳のプロゴルファー・加藤金次郎も日々綴る!「書くことで、頭の中がすっきりします」
金ちゃんのノートは「ひとり会議」。「僕も若い頃から現在まで、瞑想しながら毎日自分の変化を書き留めてきた。これを『ジャーナリング』と言います。それを『ひとり会議』と名付けていた人がいたので真似させていただきました」(中村)


アウトプット、インプットの繰り返し「毎日取り組むことで、素晴らしい“脳みそ”になっていきます」(中村)
データ的なことも書くが、なるべく悪いことは書かない。「復習はするけど反省はしない」。中村が添削を入れ、課題を出し、必要な潜在能力発揮のため誘導もしていく
中村の教えは「潜在能力を引き起こす」もの。
「仏教からひもといていますが、脳科学の先生の話も取り入れてアスリート向けに考案したものです。潜在意識の扉を開くためには、瞑想で『自律性状態』という“いい状態”に入ること。その状態で、成功するイメージや、『僕は必ず上手くいく』など好きな言葉を唱える。そして瞑想後にそれらを紙に書いていく。瞑想で潜在能力にインプットして、書くことでアウトプットし、目で見てもう一度インプットし直す。すると思考が現実化します。また、『こんなことを自分は思っているのか』という“気づき”にもなります」
アウトプット、インプット……の繰り返しで「潜在能力」を引き出す。だから、インプットするときはネガティブな感情は入れない。
「技術面のこと、たとえば球の打ち分けなども瞑想で自律性状態になっている時にイメージしたりします。『筋トレ』と同じですぐに結果が出るわけではなくて、毎日やっていたら素晴らしい“脳みそ”になるという感じなんです」
さて、実際に金ちゃんのノートを見ると大人っぽい奇麗な文字が並ぶ。3種類のノートには何を書いているのか。
『ひとり会議』には、毎回の瞑想で感じたこと、起床時間から1日のスケジュールなどを書いていく。「前夜に明日の予定を書いて、当日の夜に自分の生活を添削しながら、そのときの思いや考えも書く。今日の目標、嬉しかったことや感謝していることなども書きます。それらに対しては『事実と感情』、そして『なぜ』もしっかりと書く。これを積み重ねることで潜在能力を書き換えられますし、日々がただの1日ではなく、目標達成のための1日を過ごしているのだと気づくのです」
『大谷翔平を超えるノート』には、有名な曼荼羅シートと、その9マスの項目別に、毎日やるべきこと、やったことを書き出す。
「曼荼羅シートを書く人は多いですが、それをどう利用して生かしていくか。たとえばあまり文字がない項目、金ちゃんなら『勝利への執念』には、あまり重きを置いていないことがわかるので、『もう少し意識しよう。なぜなら……』と考えるか、必要なければ『違う言葉を入れよう』と考えるのです」
『ほぼ日5年手帳』には、その日行った場所、何を誰と食べたかなど日常の出来事を書く。「いい出会いや美味しいレストランなどもポジティブな要素。1年後に振り返ったりすることも大切です」
さて、これらの効果は?
「自分を見つめられるようになるとスウィングも変化させられるし、ゴルフを組み立てられるようになる。それに、社会勉強にもなり、相手に伝える語彙力も増えます。ただ『よかった』『楽しかった』だけではなく『なぜか』とその理由が出てくる。インタビューでも二言三言深い言葉が出てきます」
確かに16歳とは思えない落ち着きぶりに驚かされるが、「携帯を見る時間を少しでもこういうことに回すことも大切だと思うんです。あ、もちろんめっちゃ携帯も見ますよ」とお茶目に笑う金ちゃん。「金ちゃんには瞑想やジャーナリングを続けられる素質があるからすごい。それこそが16歳にしてプロゴルファーを仕事にしているということなのだと思います」
「プロの世界で戦っていくために大切です」(金ちゃん)
「技術はもちろんですけど、こういうことも強みにしていきたい。目に見えることではなくても、何かしらよいふうに働いていると思います」。今年に入り「中日クラウンズ」は最年少予選通過、「太平洋チャレンジ」は予選ラウンド終了時3位タイとなるなど結果も出てきた


曼荼羅シートにリンクさせ、項目ごとに具体的に深める。「日々書くことで、目標の定め方も『賞金王』から『永久シード』など、より大きなものになったりするんです」
Case3
「どういう状況でパフォーマンスが向上するのか内省する」
メンタルコーチのピークパフォーマンス分析
桐林宏光(プロゴルファー&コーチ)
多くのジュニアも教えている桐林宏光が行う「ピークパフォーマンス分析」とは?「最近一番心に残るよかった出来事や思いなどを書き記してもらう。ゾーンに入るために必要な環境を外部的にも内部的にも書き出して、どういう状況でパフォーマンスが向上するのか内省する作業です」
「書くこと」の重要性について、「もちろん、目標設定やパーオン率などのスタッツを知ることも大事ですが、その中で調子がよいときには何をどう感じてどういう雰囲気でどんなリズムで行っているか、逆によくないときはどんな思いや感じで占められているか、これらは数値化できないので書き出し、なるべくゾーンの状態に近づける環境整備をすることが必要なのです。また、小さい頃から書く習慣をつけることも大事。字を書くときにはまずスペース(余白)を考え、そして筆圧や文字の芸術性をイメージしています。それがパッティングを行うときのラインを脳裏に描くことなどイメージ力につながります」

「書き出せるだけ付箋に書いてもらう。具体性が増し、考えが深まり、自分への集中力がアップします」

週刊ゴルフダイジェスト2026年6月23日号より


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