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【世界基準を追いかけろ!】「PGAツアーには、“地味だけど上手い”選手がゴロゴロいます」

TEXT/Masaaki Furuya ILLUST/Koji Watanabe

松山英樹のコーチを務める目澤秀憲、松田鈴英のコーチを務める黒宮幹仁。新進気鋭の2人のコーチが、最先端のゴルフ理論について語る当連載。今回はPGAツアーを見てきて目澤が凄いと感じた“地味だけど上手い”選手について話してくれた。

GD 目澤さんがこれまで3カ月近くPGAツアーの現場を生で見てきて、目立たないけどこの人上手いなと思うプレーヤーはいましたか。

目澤 WGCマッチプレーで松山くんに勝ったブライアン・ハーマンは、本当に上手いと思います。

GD そう感じたのはどの部分ですか?

目澤 ハーマンはトータルで上手いですね。つまり、穴がない感じ。例えば、松山くんと戦ったマッチの2日目、彼はノーボギーですからね。決勝ラウンド1回戦のバッバ・ワトソンとのマッチでは、8連続バーディを出して勝っています。あれじゃ、松山くんも勝てないですよ。そうした内容がなかなか日本まで伝わらないので、ハーマンの凄さが認知されないのですが、でもそのレベルの選手がPGAツアーにはいっぱいいるんですよね。

GD ほかにはどんな選手がいますか?

目澤 スコッティ・シェフラーやエイブラハム・アンサーも上手いですよね。

GD 彼らの特長は?

目澤 やっぱり2人ともアプローチとパターが上手いですよね。あとセバスチャン・ムニョスも、一見上手いと思えないのに、結果的に成績が良い選手です。

GD 最近の試合で、上位にきていますよね。

目澤 そうなんですよ。よくホアキン・ニーマンと一緒に練習ラウンドをしていますが、ムニョスのほうがホアキンより下手に見えるのに、試合で上がってみたらホアキンより上位にいたりしますから。

GD パッと見のスウィングが下手に見えるということですか。

目澤 悪い言い方をするとそうですね(笑)。

GD そういう選手って、どうやってスコアメイクをしているんですか。

目澤 データを見たらちゃんとストロークゲイン(※1)していますよね。何においても。

GD つまり、ショットもショートゲームもトータル的に上手いということですか。

目澤 そうですね。だから、そういった可能性のある選手がこのPGAツアーにはゴロゴロいるということですよね。韓国人選手のキム・シウーも、イム・ソンジェもそうだし。マッチプレーの3日目に松山くんに勝ったカルロス・オルティスなんて、当時ワールドランクはかなり低かったですけど、フェデックス(※2)をみたら17位でしたからね。松山くんに勝つのも、まあ分かると思いましたね。

GD その時に調子がボンと上がっていたということですか。

目澤 でしょうね。ですからPGAツアーの1位~30位に入るプレーヤーの顔ぶれはあまり変わらない感じですけど、30位~120位はいきなりポンときて優勝して、トップ30の中に入ってくる選手がたくさんいるという状態です。以前、丸山茂樹さんが、PGAツアーのメンバーの中には、優勝できる可能性を持つプレーヤーは100人はいるって言っていましたけど、本当にそうだなと思います。要するに、120人しか出られなくて、その中の100人は勝てる可能性があるなんて、そんな激戦は世界でPGAツアーしか存在しないですよね。

(※1)たとえばパッティングがスコアに貢献している場合、パットでストロークをゲインして(稼いで)いるといえる。米ツアーの競技データでは、「SG」=「ストローク・ゲインド」という指標があり、パッティングのスコアに対する貢献度が高い選手は、「ストローク・ゲインド・パッティング」の数値が高くなる。(※2)フェデックスポイントはPGAツアー独自のポイントランキングシステム。獲得ポイントの上位 125名に翌シーズンのシード権とプレーオフへの出場資格が与えられる

目澤秀憲
めざわひでのり。1991年2月17日生まれ。13歳からゴルフを始め、日大ゴルフ部を経てプロコーチに。TPIレベル3を取得。2021年1月より松山英樹のコーチに就任

黒宮幹仁
くろみやみきひと。1991年4月25日生まれ。10歳からゴルフを始める。09年中部ジュニア優勝。12年関東学生優勝。日大ゴルフ部出身。松田鈴英、梅山知宏らを指導

週刊ゴルフダイジェスト2021年6月1日号より