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【インタビュー】菅沼菜々<後編>調子のいいときはグリーンの傾斜が“色”で見えるんです

23年は2勝を挙げ大躍進を遂げた菅沼菜々。後編では、2勝目を挙げたマスターズGCレディースでの知られざるエピソードから、今後のありたい姿まで、さらに詳しく聞いてみた。

PHOTO/Osamu Hoshikawa、Tadashi Anezaki、Shinji Osawa

菅沼菜々 2000年2月10日生まれ。東京都出身。埼玉栄高校卒。2018年プロテスト合格。シード選手として迎えた22年は賞金ランク9位と躍進。23年はツアー初優勝を含むシーズン2勝の活躍を見せた

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――難しいと言われる2勝目ですが、その勝因は?

菅沼 いくつかあります。ひとつはドライバーを替えたことです。この試合で新しいゼクシオXに替えました。ボールが曲がらず、フェアウェイキープ率が高かったし、飛距離も5Yくらい伸びていました。私、意外にフェアウェイキープ率が悪いんです。大きく曲がるわけではなく、ちょっと曲がってちょいラフみたいなのが多くて。たぶん会場で見ているギャラリーのみなさんはナイスショットって思っている人がほとんどだと思います。でもちょいラフなので2打目が厳しいんです。シーズン中にクラブを替えるプロは少ないと思いますが、私は即決でした。いいと思ったものはすぐ使います。それがこの試合で上手くハマってくれました。もうひとつはグリーンが合っていたことです。グリーンのスピードと“色”が合っていたんです。

――色というのは?

菅沼 これを話すと信じてもらえないことが多いんですけど、選手が使うヤーデージブックを見ると、グリーンに色が塗られているんです。濃い部分は傾斜が強くて薄い部分は傾斜が弱いんですけど、その色のグラデーションが実際にグリーン上で見えるんです。その色がバッチリ合っていました。色を見れば、芝目もわかります。ただ、冬になるとグリーンに色を塗るコースがありますよね。色を塗られてしまうと、まったくわからなくなります。


2勝目は3打差で逃げ切り

マスターズGCはグリーンの“色”まで見えていました

――色で傾斜を読むなんて特殊能力みたいですが、パット名手らしい言葉です。苦手なグリーンはないのでしょうか?

菅沼 私は速くて硬いグリーンが得意です。だからグリーンが遅くなるとダメです。夏場はグリーンのスピードが遅くなりやすく、タッチが合わなくなることは多いです。プレーしていると芝が伸びてきているのがわかるし、芝の抵抗が増しているのも感じます。

――マスターズGCレディースはイ・ボミ選手の引退試合でもありました。憧れの選手ですよね。

菅沼 中学、高校くらいのとき、テレビで見ていました。すごく笑顔が可愛くて、ぜんぜん怒らないし、プレースタイルが素敵だなってずっと憧れていました。ボミさんの引退セレモニーもすごかったです。選手みんなが応援Tシャツを着て集まって。あんなことって普通あり得ないと思うんです。あれだけ愛されるゴルファーって本当にすごいなって実感しました。ボミさんみたいに誰からも愛されるゴルファーになりたい! それが将来的な私の夢です。

ボミさんの引退試合で優勝できて嬉しかった

イ・ボミ、21年に引退したキム・ハヌルが菅沼の優勝に花を添えた。菅沼は優勝会見で“スマイル・キャンディ”(ボミの愛称)の後継者に名乗りを上げた

――23年シーズンは初優勝を含む2勝を挙げましたが、成績についてはどうですか?

菅沼 メルセデスランクは22年の8位から11位に下がってしまいましたが、2勝できましたし、獲得賞金が1億円を超えました。1億円突破はひとつの目標でしたし、優勝もできたので、結果的にはよかったなって思います。ただ残念なのはスタッツです。最終戦のリコーカップ前まで、平均パット数も平均ストロークも一桁の順位でした。ところがリコーで75、82、73、78を打ってしまい……。この試合でスタッツを大きく下げてしまいました。私、コーライが苦手なんです。練習できるコースもあまりないんですよね。

獲得賞金は大台を突破

2022年:8619万8649円(9位)
2023年:1億154万149円(7位)

「SNSは応援してくれるファンがいる限り
ずっと続けていきます」(菅沼)

――ツアー2勝を飾り、名実ともにトッププレーヤーとなりましたね。週刊ゴルフダイジェスト1月9・16日合併号では、「2024女子プロカレンダー」にも登場してくれました。カレンダーで掲載できなかった写真を今回掲載していますが、撮影は好きですか?

菅沼 嫌いではないです。緊張はしますけど、いい笑顔を届けたいですから頑張っています。ハートポーズもトレードマークみたいになってきましたが、新しいポーズを考えるのは大変なんです。日々、研究しています。

「新しいポーズも日々研究しています」

――菅沼選手といえば、SNSです。発信するたびにネットニュースに取り上げられていて、インスタのフォロワー数は7万人を超えています。自分にとってSNSはどんなものですか?

菅沼 私がやっているのはインスタ、ツイッター(現「X」)、ノート(ブログ)の3つですが、自分にとってファンの人たちとつながれる、大切なツールです。私はアイドル(乃木坂46)が大好きです。好きなアイドルがSNSで発信してくれるとすごく嬉しいです。それで親近感がわくし、勇気や元気をたくさんもらえます。だからこそ、自分もインスタやツイッターはできる限りやっていきたいです。もともと発信することは好きなので、試合中であってもぜんぜん苦になりません。

――SNSはとても便利なツールですが、炎上といった嫌な面もありますよね。

菅沼 アンチは確かにつらいです。つらいですけど、SNSは続けていきたいです。たとえば、ファンが10人いてアンチが1、2人であれば、そんなに多いわけではありません。それなら応援してくれる人に対して発信していきたいんです。10人が10人アンチになって、みんながやめろと言うならやめますけど、そこまでにはなっていません。確かに自己満足も少しはあるかもしれないですけど、ファンがいる限り、SNSは続けていきたいです。私にとって応援してくれるファンは、なくてはならない存在です。たくさんのエネルギーがもらえるんです。毎試合ではないですけど、何試合も見に来てくれるファンがいますし、古いファンだとアマチュア時代から応援してくれている人もいます。そういったファンに対して、私もインスタやツイッターで元気や勇気を与えていきたいんです。

――自称“アイドルゴルファー”で積極的にSNSを発信。小学生のときは、引っ込み思案ということでしたが、目立つのが好きなのでしょうか?

菅沼 どうなんでしょう。自分ではそこまで目立ちたがり屋だとは思っていないんです。ですが、試合に出れば、毎回優勝争いがしたいし、メディアに注目もされたい、という思いはあります。ですから、いい意味で目立ちたがり屋なのかもしれません。

――以前、小誌のインタビューで「試合はアイドルのステージのようなものと考えています」と語っていました。

菅沼 会場に来てくれるギャラリーだけでなく、テレビやネットを通してプレーを見てくれるというのは、アイドルのステージに近いですね。私のプレーを見て「元気がもらえた」って言ってもらえるのは、本当に嬉しいことです。それが私のゴルフのモチベーションにもなっていますから。

●自分のクセは?
「いつの間にか髪の毛を触っている」

●TVドラマに出るなら?
「サスペンスの刑事役で出たい」

●将来の夢
「長生きすること。空飛ぶクルマが見たい」

――24年シーズンが始まりましたが、オフの予定は? 目標や課題を教えてください。

菅沼 23年シーズンが終わって4キロ痩せました。まずは体重を戻します。20-21年はメルセデスランク45位で最終戦には出られませんでした。悔しくてたくさん練習して22年はランク8位まで上がり、最終戦にも出場できました。そして23年はもっと頑張って2勝を挙げることができました。だから、それ以上に努力しないとダメだと思っています。練習もトレーニングも全部きついです。練習は嫌いじゃないですけど、ひとりで朝から晩まで黙々と練習するのはつらいです。ある意味、忍耐ですよ。ずっと父(コーチ)と2人きりですから息もつまりますし。今オフもフジ天城GC(静岡)で合宿を予定しています。大きなテーマとしては、100Y以内で5回に4回はバーディが取れるように確率を高めていくことです。これってほぼ無理なんですけど、そのくらいの目的意識を持って練習するつもりです。目標は年間女王です。

週刊ゴルフダイジェスト2024年1月23日号より