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【岡本綾子 ゴルフの、ほんとう】Vol.787「プロは芯で打てるから、あえて芯を外すという技ができるのです」

米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。

TEXT/M.Matsumoto

前回のお話はこちら


あるプロが「打点位置を変えて打つことがある」と言っていましたが、フェース面の広いパターやドライバーならいざ知らず、アイアンでそんなこと、できるのでしょうか。それでどんな利点があるのか教えてください。(匿名希望・39歳)


インパクトでボールがどこに当たっているか正確に認識しているプレーヤーがどれくらいいるのでしょうか?

「ヒールだ!」

「ちょっと薄かった!」

思わず口にするゴルファーは多いと思います。

いずれにしてもボールが当たるべき場所に当たっていないことはわかるわけですが、そういった人がいつも正しい位置にボールが当たるように再現性の高いスウィングができているかというと、そうでもないものです。

スタンス向きやライの状態を含め、方向と距離、風向き、加えて心理状態も同じではないのですから、常にスイートスポットでボールをとらえられるかどうか、それがゴルフの難しさといってもいいかと思います。

スコアメイクの基本はフルショットのキャリーを把握することにあります。

プレーヤーはその距離のスケールを組み合わせて攻略ルートを考えていきますが、そのなかで、どうしても番手間の距離、いわゆるビトゥイーンのショットが出てくる。

その際、短いクラブで大きめに打つか、長いクラブで小さめに打つかの調節が必要になります。


この距離の調節にはクラブを短く持つ、振りを小さくするなど、ほかにもいくつかの方法が考えられ、そこに「打点を変えて打つ」というやり方も存在します。

スイートスポットを外れたショットの飛距離は落ちますが、自分のスウィングを身に付けてきたプロなら、たとえばですが、ドライバーであえてトウ寄りの上めで打ったほうが飛距離が出ることも経験的に知っています。

これを距離の調整法として活用するというわけです。

打点を変えて打つことがあるとプロが発した言葉が、どういう意味で語られていたかは分かりませんが、意図的に芯を外して打つことで飛距離を調整する高度なテクニックであり、多用するプレーヤーはほとんどいないと言っていいと思います。

ただし、ウェッジやパターなどは例外で、芯を外して打つ場合があります。

わたしの場合でいうと、カップまで2メートルほどの少し気持ち悪い軽いスライスラインの場合、トウ寄りの位置でヒットすることがあります。

ボールにフック回転がつきカップまで真っすぐ転がってくれる……というような感じがします。

ほかに、グリーン面がやや荒れた感じの場合は、推進力を強めるためオーバースピンで真っすぐ打ちたいので、意図的にややハーフトップさせることもあります。

アプローチでは、ラフに深く沈んでいる場合などにフェース面の上部で打つなどいろいろと工夫することがあります。

いずれにせよ、意図的に芯を外すのは普通ではないショットではあります。

なぜなら不安定なコントロールショットともいえるからです。

フルショットの飛距離を把握することがスコアメイクの基本であることをお話ししましたが、ここでいうフルは100パーセントのことではありません。

力いっぱいを“10”とすると、わたしの場合は“8”のスウィングがフルショットです。

毎回10で打っていては18ホールももちません。

8を基準のフルショットにしておくから曲がらないし、いざという時に10のマン振りができるのです。

この8割フルショットで、いつも通りの芯を食うショットを安定させること。

それが練習の目標です。

短く持って小さめに振るときも、打点に変わりはなく、常にスイートスポットを外さないことを心得るべきです。

ですから、芯をとらえる練習に励むことが一番大切であって、芯を外す打ち方を学ぶのは、まずは芯で打てるようになってからですよ。

「いろいろ試すことは良いことですが、まずは芯で打てることのほうが大事ですよ!」(PHOTO by AYAKO OKAMOTO)

週刊ゴルフダイジェスト2023年10月31日号より

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