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【岡本綾子 ゴルフの、ほんとう】Vol.757「コーチ任せの気持ちで上手くなるはずありませんよね」

米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。

TEXT/M.Matsumoto

前回のお話はこちら


ツアープロを目指しましたが受からず、ティーチングプロの資格を取ってレッスンの仕事をしています。プロを目指す若い子たちにプロとして長く生き残るために必要なことは何かを伝えたいのですが、何に気をつけて接すればいいでしょうか。(匿名希望32歳ティーチングプロ)


最近の若い選手たちのスウィングを見ていて感じるのは、以前ほど個性的なフォームが見られなくなり、どの選手もオーソドックスでシンプルになっていること。

それだけゴルフのジュニア育成が充実して、合理的なスウィング理論や練習施設、指導体制などが整ってきているといえるのかもしれません。

その一方で、独学の経験だけで磨いてきたワザを武器にするといった異端の個性派が姿を消してしまったのは寂しい気もします。

ですが、こうしたタイプのプレーヤーは通常以上に努力や精神力を必要とされ、いったん調子を崩すと修正するのにも時間がかかるともいわれます。

だとすれば、プレーヤーとしての力のピークを長く高く保ち続けるには、やはり体にかかる負担を最小限に抑え、好調を維持しやすいスウィングを身に付けたいでしょう。

ある意味、トッププレーヤーのスウィングが同じような形にそろっていくのは時代の流れなのかもしれません。

ただし、生まれて初めてクラブを手にした時、多くのゴルファーは好きなように振り回しボールを遠くに飛ばす感覚を体で覚えたはずです。

小学生で始めたとすれば、その感覚を頼りに中学生までは伸び伸びとボールを打つことを学ばせ、高校に進学して大人の骨格、筋肉に成熟していくなかで徐々に理にかなった動きをマスターさせていく。


ゴルファーが取り組むべき課題は、その成長や進歩の段階によって違い、その適性は指導者が見極めてあげたほうがいいということです。

ゴルファーそれぞれに適したその人なりの体の動きがあり、理論的に正しいからといって型にはめるのは、教える側の怠慢であり生徒が成長するのを妨害する行為ともいえます。

スウィングを学ぶ際のトラブルは、教わる側よりも教える側にこそ多くの問題が含まれるのではないかと思います。

だからティーチングプロの方たちには、自分の仕事に大きな責任と誇りを持ってほしい。

現在では、さまざまなメソッドも確立されているようですが、要は自分の体をどう生かし上手くスムーズに動かすかということ。そのコツを伝えるための勉強を常に心がけてください。

自分が上達してしまうと、かつて右も左も分からないビギナーだったことを忘れて上から目線になりがちです。

初心者に教えるためには、初心者の立場に立つ必要があります。

なぜなら、そうでないと相手が理解できずに困っている内容が何なのかもわからないからです。

自分がどうやって上達してきたのか、その道筋を思い出すのも指導する際に役立つと思います。

進歩や成長のスピードは人さまざまです。

わたしの場合、初めてゴルフクラブを握ってから1年半でプロテストに合格して、そこから3年でアメリカに挑戦、3年後に国内で賞金女王になってLPGAツアーに本格参戦しました。

腰痛でお休みした時期を経て、3年後にマネークイーンの座を射止める……。

ほぼ3年ごとに自分の人生が変化してきました。

振り返ると3年ごとに自分のゴルフや人生の変化について考えてきたのかもしれません。

だからというわけでもないですが、若い選手の指導に当たる時もわたしは、とりあえずまず3年見るやり方をとってきました。

その間にわたしなりの教え方を理解してもらい、自分で自分のゴルフも考えてもらうためです。

教える側の難しさ、責任、大切さはもちろんです。

でも一番重要なのは、教わって上手くなりたい、強くなりたいと思っている本人の姿勢です。

向上したいのなら、教えてくれる人任せでいいはずがありません。

そういう考え方がなければ、ゴルファーとして自立できないしプロとして生き残れるはずもありません。

プロテストに合格しても、それはゴールではなく、そこからがスタートなのですから。

「今日という一日を大切にできない人に明日は語れません」(PHOTO by AYAKO OKAMOTO)

週刊ゴルフダイジェスト2023年3月21日号より

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