【岡本綾子 ゴルフの、ほんとう】Vol.845「芯で打って真っすぐ転がすことを徹底的に練習していますか?」
米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。
TEXT/M.Matsumoto
ショットでドローやフェードを打ち分けるならパットでもと思い、私は傾斜や距離など状況によってカット気味に打ったりしています。岡本さんはパットでのインテンショナルについてどうお考えですか。(匿名希望・55歳)
パッティングは、もっともヘッドを遅い動きで扱うクラブということができると思います。
空中を飛ぶショットとは違い、パッティングは地面を転がっていくため、フェースでボールに回転を与えるよりも、地面から受ける抵抗のほうが格段に大きいです。
パッティングはヘッドスピードが遅いこともあり、フェース面ではどんな打ち方をしてもボールにそれほど強い回転を与えることはできません。
パッティングが与えるスピン量程度では、本来、真っすぐ転がるはずの軌道を右や左に大きくカーブするほど変化させられるとは思えません。
意図的にボールを曲げるインテンショナルショットは、ボールにそれなりのスピードとスピン量があるため、空気抵抗はあるものの、地面から受ける摩擦より影響は少ないと思います。
1メートル以内のショートパットでも、ボールの転がりが途中でヨレてカップを外すことはよくあります。
それはボールにスピンがかかっていたのではなく、フェースが開いたりかぶったりする打ち損じ、傾斜、または芝目などの影響が大きい。
ボールがどんな回転をしていたとしても傾斜や芝目には敵わないということ。
そう考えると、ショットでインテンショナルにスライスやフックを打ち分けるように、パッティングしたボールを自在に操ることはほぼ無理だとわたしは思っています。
たまにプロや上級者の方が通常の打ち方ではなく特別なストロークを試みるケースはないことはないです。
傾斜や芝目の影響でフックしそうに見えるラインで、カットに入れて左に行かせたくないように打つというような場合とか。
ショットでいえば、右からの風に対してスライス回転で打ち出し、風とケンカさせて真っすぐ打とうということに似ているかもしれません。
ただ、このようなインテンショナルなパッティングを試みて入ったとしても、それがどのくらい影響があったのかチェックするのは難しい。
もしカットに打たなかったら外したかどうか分からないですし、カットに打ったことで本当にスライス回転を与えられていたかどうかも確認できないからです。
左に行きそうに見えるラインをカット気味に打ち出すことはありますけど、インテンショナルなパッティングの成否は、極端にいえば本人の意思や気持ち次第で決まることも無きにしもあらずかもしれません。
すごく速い下りのラインでは、わざと芯を外して転がらないように打とうとしたり、重くて上りのパットでは、少しでも球足が伸びるようにとオーバースピンをかけるようにこすり上げながらフォローを出すことも人によってはあるかと思います。
でもそのためには、普段の自分のパッティングがどんな球筋で転がっているか、しっかりと自覚できていることが重要です。
もともと、自然にカット気味にストロークするタイプの人、フェースがかぶり気味に押し出してストロークするタイプの人などいろいろいます。
自分はカット気味に入るクセがあるから、このパットはカップの左縁に当たるとカップをクルリと回ってリップアウトする可能性がある、だからボールがフェースのトウ側に当たるようにして打つという人もいるでしょう。
極端にいえば、トウ側で打てばボールには左回転がかかりヒール側で打てば右回転がかかりやすいからです。
これを頭に入れてストロークして上手く成功すれば、「打ち方や当てどころを変えてラインに対応した」と意気揚々と語るかも!?
インテンショナルなパッティングは、ゴルファーの自慢話のネタになるような気もしますね(笑)。
結論として言えることは、インテンショナルなパッティングを考えたり練習をしようと思う前に、真っすぐに打てる技術を高める練習をすることがもっとも大切なことです!
「すごく影響は少ないですが、トウで打てばフック回転、ヒールで打てばスライス回転することを頭の片隅に入れておくだけで十分ですよ」(PHOTO by Ayako Okamoto)
週刊ゴルフダイジェスト2025年1月7・14日合併号より