Myゴルフダイジェスト

【ゴルフはつづくよどこまでも】Vol.133「ギャラリーとの“コミュ力”」

高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。

PHOTO/Tadashi Anezaki

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プロスポーツというもんは、技術を披露する側と、それをリスペクトしてくれて見る側がいなければ成り立たんもんですが、それだけではあきません。選手が日頃磨いた技術を披露する場を設けてくれるスポンサーや、チケットを買ってくれるお客さん、そしてテレビを見てくれる視聴者がいなければ技術の披露もできんわけです。

だから選手は、多くの娯楽コンテンツのなかからゴルフを選んでくれたスポンサーやファンに感謝の気持ちを持たなあかんということです。

ここ十数年来のシニアツアー人気も、大会でのギャラリーサービスやプロアマでスポンサー筋のお客さんに楽しんでもらうことに努めてきたことが受け入れられた結果やと思います。

この前、中部地区で行われたある試合でのこと。あいにくの大雨にもかかわらず、朝7時のトップスタートの芹澤(信雄)くんと僕の組についてくれた人がいて応援してくれはったんです。

昼からのスタートのときに前がつかえて時間あったから、そのギャラリーの人らに「写真撮りましょか」と声をかけたらすごく喜んでくれてね。本当は試合中はダメなんですけど、そこはTPOで。20秒足らずのことですけど、僕らはそういうことで感謝の気持ちを表すしかないですから。

もちろん僕かて、優勝争いをしている最中に「写真撮りましょか」なんて言いませんし、お客さんもそこはわきまえています。たまに、わきまえん人もいてますけどね。

だいぶ前ですが、僕が修業してた岡山で開催された試合で、ティーオフまで5分前というときにロープ際に来て知り合いが「おう、応援に来たで」言うんです。それだけじゃ済まずに「おとつい、あの店で待っとったんやで」と大声で言うんですわ。目くばせや会釈くらいでエエ! 言うねんけど、関西方面はそういう人は多いです(笑)。

地域によってファンの対応の違いは出ますね。中部・名古屋地区は熱く、関東はマナーがよい。九州は関西と似ておって試合中にプライベートな話をしてくる人がいます。「プロ、18番終わったら電話してきて」とかね。まあエエんですけど、お客さんもそこはTPOでよろしくお願いしますわ。

「お互い、TPOでいきましょや!」

奥田靖己

おくだせいき。1960年、大阪生まれ。93年日本オープンなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂び、温故知新を追求する

週刊ゴルフダイジェスト2023年6月20日号より