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力みが取れる、ヘッドが走る! 魔法のワード「オノマトペ」の驚き効果<ショット編>

TEXT/Kenji Oba PHOTO/Yasuo Masuda、Norio Tsuburaoka
THANKS/サザンヤードCC

物事の状態や動きを音で表現する「オノマトペ」。これを活用することで、ゴルフの上達に効果があるという。いったいどういうことか? 詳しく話を聞いてみた。

解説/北野正之

女子プロやアマチュアの指導経験が豊富。伸び悩むゴルファーへ「気づき」の指導を得意とし、メンタルやコースマネジメントにも精通。埼玉県・松原ゴルフアカデミーでレッスンを行う

理論を言葉で説明するよりも
音でイメージしたほうが分かりやすい

女子プロや多くのアマチュアを指導してきた北野正之プロは、単に技術を教えるだけでなく、上達には欠かせない“気づき”を与えるレッスンに定評がある。なかでも「オノマトペ」を使ったレッスンが大好評だという。

聞き慣れない言葉だが、オノマトペとは「自然界の音や物事の状態を擬音語や擬態語で表したもの」。それがゴルフとどう関係するのか?

「ボールがギューンときたらググッとためてパッと打つ……これは長嶋茂雄さんが巨人の監督時代、松井秀喜を指導したときの言葉です。この『ギューン』や『ググッ』というのがオノマトペ。言葉で丁寧に説明するよりも、頭のなかに動きや光景がイメージとして湧いてきませんか? これがオノマトペの効果なんです」と北野プロ。

たとえば陸上の福島千里は自分の走りを「ス~ッコロコロコロ」と表現。静かに立ち上がり、坂道を転がるようなリズムをイメージしていという。テニスのM・シャラポワや卓球の伊藤美誠が声を出しながら打つのも一種のオノマトペといえる。

オノマトペは動きのコツや流れ、イメージを感覚として伝えやすい。そのため子どもたちのスポーツ教室などでは昔から広く使われてきた。理論で理解させるより「ズドン・パーン・シューン」といった“音”のほうが、どんなボールを投げたり打ったりするのか、感覚でつかみやすいからだ。

「ラウンドではスウィングの形を変えることは難しい。大切なのは、自分の感覚のなかでどれだけできるか、このイメージの世界に入れるかが重要で、そのきっかけがオノマトペにあるんです」

北野プロによればイメージが作れるほど、不安や迷いなどあらゆる雑念が消え、どんなボールを打つかだけに集中できるという。


【オノマトペとは?】

物事の状態や動きを音で表現すること

擬音語、擬態語などで物事の状態や動きを表現すること。ポンと打ったボールとバシッと打ったボール、スーと転がるボールとゴロゴロ転がるボールでは、動きのイメージが異なるはず。これがゴルフの上達にも応用できる

【オノマトペの効果】

体がスムーズに動きやすくなる

ラウンド中にスウィングの形(トップやフォローの位置)を調整することは難しい。ところがオノマトペを利用することで、イメージが先行し、細かい動きを意識しなくなるため、体がスムーズに体きやすくなる


まずはインパクトのタイミングで
『ドーン』と声を出してみよう!

実は日本はオノマトペの先進国だ。たとえば雨音ひとつとっても「ザーザー」「シトシト」「ポツポツ」「パラパラ」など表現は多彩。ならばゴルフに活用しない手はないだろう。そこで北野プロが教えてくれたオノマトペの第一歩がインパクトで声を出すことだ。

「ドーン」でも「バーン」でも「ガツーン」でもいい。少し恥ずかしいかもしれないが、自分の好きな言葉で声を出してみよう。

「アマチュアの多くは、声を出してもインパクト後に出る人が大半です。これは、いわゆる“振り遅れ”の傾向がある人に多く、スライスの原因になっています。反対にインパクト前に出るのは“打ち急ぎ”。こちらは引っかけやフックの原因になります。インパクトに合わせて声を出せるようになると打点もフェースの向きも安定し、ミート率が上がって曲がらなくなるはずです」

CHECK 1
インパクトのタイミングで声を出せるか?

まずはインパクトで声を出してみよう。アマチュアに多いのはインパクト後に声が出るタイプ。このタイプは振り遅れになりやすい。一方、インパクト前に出るタイプは打ち急ぎ、あるいはアーリーリリースになっているケースが多い

自分のスウィングを撮影すれば、タイミングのズレは一目瞭然だ。さらにインパクトで声が出せないアマチュアもいるだろう。

「オノマトペは呼吸にも影響しています。というのもアマチュアは打つときに息を止めてしまう人が多い。ですが呼吸が止まると速くは動けませんし、力みにつながります。プロは吸ってクラブを上げ、吐いてクラブを下ろすのに対し、アマチュアは吸って上げて止めて下ろしています。そこで、スーッと上げ、ビューンと下ろすオノマトペを実践すれば、呼吸を止めずに振り抜けるようになります」

CHECK 2
インパクトで息を止めていないか?

呼吸が止まると速く動けず、体に余計な力が入りやすい。アマチュアの場合、バックスウィングで吸うまではいいが、ダウンスウィングで息が止まってしまうケースが多い。声を出すようにすることで、自然と息を吐きながらインパクトできる

アマチュアのスウィングの特徴は力み(動きの硬さ)と緩み(力感のなさ)。それを防止するにもオノマトペが最適だという。

「力みやすい人は『サ行・ナ行』がいいです。『サァー』『シュー』『ニュー』などのオノマトペを使うのが効果的。一方、緩む人は濁音の『ダ行・バ行』。『ダーン』『ドンッ』『バーン』にすれば、動きに力強さが生まれます。小さな『ッ』は強さが増し、音引き『ー』は動きの長さを生む効果もあります」

ダンとダンッ、ダーンで、インパクトのイメージが変わるわけだ。

CHECK 3
動きが硬くなっていないか?

ミスの多くは動きの硬さ(力み)からくる。力みやすいタイプは「サ行・ナ行」のオノマトペで力感を抜く。反対に力感がない(緩む)人は「ダ行・バ行」のオノマトペで体を締める。声に出すだけで動きの硬さもコントロールできる

インパクト以外でもオノマトペは使える。北野プロが推すのが朝イチショットのテークバック。

「始動から息を吸って上げる動作に『ス~・フ~』のオノマトペを使えば、体が回りやすくなります。オノマトペはテークバックやフォローにも応用できるんです。ただ、大声を出したいドライバーは周りに人がいないときにしましょう。驚かせてしまいますから」

CHECK 4
朝イチやアゲンストが苦手!

体が硬く、回りにくいのが朝イチショット。そんなときは「音引き」のオノマトペでバックスウィングすると体が回りやすくなる。強いアゲンストなど、低い球を打ちたければ、フォロー側で『シュッ』『シューン』などとイメージするとボールを低く打ち出せるという

池越えは「スウ~ッと上げる」

池越えなどの緊張する場面では『スウ~ッ』など、テークバックをゆっくり&長く行うイメージが有効だ。体がしっかり回り、打ち急ぎや体の突っ込みが防げる

実は、オノマトペが最も効果を発揮するのは

「ショートゲーム」

と北野プロ。ザックリ・トップに悩む人は

>>後編をチェック!

週刊ゴルフダイジェスト2021年7月6日号より