多くのクラブを手掛けてきた設計家・松尾好員氏が最新クラブを徹底的に計測・分析する「ヘッドデータは嘘つかない」。今回はテーラーメイドの『ステルス』アイアンを取り上げる。

低重心設計で球が上がりやすい

今年の話題作といえば、カーボンフェース搭載の『ステルス ドライバー』だが、同じブランドからアイアンも登場。それが今回紹介する『ステルス アイアン』だ。

トウ側に配置していた約10gの重量を取り除き、余剰重量を最適配分した「トウラップテクノロジー」を採用することで低重心設計を実現。番手別にスイートエリアを最適化する「インバーテッドコーンテクノロジー」により、適正なボール初速と高い寛容性を兼ね備えた。

それでは7番アイアンのクラブやヘッドを試打・計測していこう。数値はすべて実測値だ。メーカー純正シャフトである『テンセイ RED TM60』仕様で、クラブ長さが37.0インチと標準的だが、クラブ重量は373.6gと軽く、スウィングウェイトもC8.4と小さいので、クラブの振りやすさの目安となるクラブ全体慣性モーメントが260万g・㎠と小さくなっている。この数値であればドライバーのヘッドスピードが38～39㎧くらいのゴルファーにとってタイミング良く振れる設計といえるだろう。

Point1　クラブ重量が373.6gと軽い
Point2　スウィングウェイトがC8.4と小さい
Point3　重心距離が42.3ミリと長い

シニアでもスウィングしやすい

ヘッド全体はオーソドックスな形状だが、フェースは長め。また、フェースのヒール側の高さが低いので、アドレスした時にアップライト感が出ている。トップラインには少し丸みがついているがフェースのトウ側が高く感じるので、米国モデルらしくアドレスでのフェースの逃げ感が出ている。

実際に試打してみたが、ヘッドはやや大きく感じるがオーソドックスな形状で構えやすい。そして、フェースのヒール側に比べてフェースのトウ側が高いので、球をフェースのややトウ寄りで構えるとしっくりくるだろう。試打クラブは7番アイアンでメーカー純正のカーボンシャフト（Sフレックス）。クラブ重量が軽く、シャフトも軟らかめなので、パワーの衰えたシニアゴルファーでもスウィングしやすく感じるはずだ。

ロフト角が27.6度とストロングロフトだが、カーボンシャフト仕様でクラブが軽く、振りやすいので球は上がりやすい印象を受けた。また、フェース面の素材がステンレススチールのため硬く、その分、打感も硬く、インパクト音も高い。逆に、そのおかげで球の弾き感はよく、適度なスピンも入ってくれる。ソールのバウンス角は3.8度と標準的なので、7番でターフをとるようなダウンブロースウィングでもソールの抜け感はいい。

フェースが長めでヘッドのネック軸周りの慣性モーメントも6454g・㎠と大きいので、基本はダウンスウィングでのヘッドの返りが緩やかになり、ストレート～フェード系弾道が打ちやすいと感じた。

【クラブ&ヘッドデータ実測値】

テーラーメイド

ステルス アイアン

松尾好員

まつおよしかず。往年の名手、S・バレステロス、I・ウーズナム、青木功、加瀬秀樹らのクラブ設計を担当。近年のクラブを知る“現代の知匠”。ジャイロスポーツ主宰

週刊ゴルフダイジェスト2022年7月12日号より