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ミケルソンが愛用する「L字パター」使ってみたら意外と“アリ”だった!

PHOTO/Shinji Osawa、Blue Sky Photos
THANKS/クレアゴルフフィールド

全米プロで史上最年長メジャー優勝を達成したミケルソン。その手に握られていたのは、長年使用していたL字パター。難しいイメージがあるL字だが、実際のところどうなの?

解説/堀越良和

小誌連載「ギア選びのウソホント」でもお馴染みの通称“キング・オブ・試打”。毎年発売される新製品を余すことなく試打している

L字はアイアンと同じ感覚で打てる

全米プロの優勝シーンをTVで観戦しながら、ミケルソンの使用するL字パターに目を留めた読者も多かったのではないだろうか。

昔からパットの名手と呼ばれるプロはL字を愛用することが多かったが、その代表選手といえば、マスターズを2度制覇したベン・クレンショウだ。オーガスタで勝つにはガラスのグリーンと呼ばれる速くてアンジュレーションが強いグリーンを攻略することがカギとなるが、1987年にG・ノーマンをプレーオフで破ったL・マイズもL字だし、豪快なドライバーショットとは釣り合わないほど繊細なタッチのショートゲームに定評があるJ・デーリーも全盛期にはL字を使用していた。

なぜ名手と呼ばれる選手の多くがL字を使用するのか。ギアに詳しい堀越良和プロは、「まずL字パターはロフトやライ角の調整がしやすいことが挙げられると思います。速いグリーンではロフトを少し立て、遅めのグリーンでは少し寝かせるという調整をするトッププロは多いです。そして、もうひとつの大きな理由がL字パターの操作性のよさだと思います」とその理由を解説する。

「L字パターは重心深度が浅いのでフェースの開閉もしやすい。また微妙なタッチも出しやすいので、スキルの高い選手が好むんだと思います。さらにL字パターはアイアンと同じ感覚で打てるということも大きな理由でしょう」

アイアンと同じ感覚で打てるというのはどういうことか。

「ゴルフクラブは野球のバットなどとは違い、重心がシャフトの軸線上にないのが大きな特徴で、これがゴルフのクラブの難しさのひとつなのですが、パターに関してはセンターネックやフェースバランスなど、その難しさを解消することができます。しかし、L字パターは重心位置も形状もアイアンと同じような作りになっています。ゴルフクラブ特有の難しさを解消したパターというのもやさしさのひとつの考え方ですが、あえてアイアンと揃えるというのもやさしさと考えることができます。これがL字パター特有の構えやすさを生んでいる要因であり、パットの名手が好んで使用する理由だと思います」

名手がL字を使う理由
「ロフトやライ角の調整がしやすいんです」

トッププロはグリーンの状況や自身の調子などに合わせて、ロフトやライ角を変えることがあり、L字のネックはその調整がしやすい

「構えてみて“いいな”と思ったら
L字を一度使ってみてください」

アイアンと同じ感覚でストロークできると堀越プロがいうL字パターだが、その長所と短所を改めて聞いてみた。

「長所はさきほども述べたように、アイアンからの流れで構えられること。グースネックでボールを包み込むような独特な構えやすさは大きな魅力です。極端な言い方をすれば、その構えやすさを感じないのであれば、あえてL字パターを使用する必要はないとも言えます。というのもL字パターには短所もあるからですが、それがミスヒットに弱いということです。芯を外したときのフェースのブレが大きく、方向性や距離感のズレが大きくなります」

L字パターのメリット

●重心深度が浅いので操作性がいい
●フェースの開閉をしやすい
ストローク式でもタップ式でも打てる
アプローチ感覚でタッチが出せる

重心位置やネックの入り方など、ヘッドの構造にアイアンとの共通点が多いので、構えやすく、アプローチ感覚で距離感やタッチが出せるのがL字パターの最大のメリットだ

構えやすさという大きなメリットはあるものの、ミスヒットに弱いという致命的なデメリットもL字パターにはあるのだ。

「とくにトウ側が弱いですね。昔のL字パターはネックが長いものが多く、重心位置もヒール寄りなのでなおさらです。ショップの試打スペースで構えやすくていいなと思っても、よほど安定して芯で打つことができなければ、コースで打ったらロングパットの距離感が全然合わないなんてことが起こる可能性があるんです」

つねに芯でヒットできる高いスキルを持つ名手たちには強い武器になるが、アマチュアにはやや難度が高いと堀越プロは言う。

L字パターのデメリット

●芯を外したときにヘッドがブレやすい
●フェースが開いたりかぶったりしやすい

L字の最大の弱点はミスヒットに弱いこと。とくにトウ側が弱い。フェースにボールを当てて弾き加減をチェックすればよくわかる

「ではL字パターを諦めないといけないのかという声が聞こえてきそうですが、そんなことはありません。L字の弱点を解消したパターがあります。それが『L字マレット』です。L字のトウ・ヒール側にウェートを配分することで慣性モーメントを高め、さらに重心位置を深くしミスヒットに強くしています。簡単に言えばL字とピン型を合わせたような形状です」

この現代版のL字パターともいえる「L字マレット」であれば、ミスヒットに対する許容度も一気に上がるのだ。今回、堀越プロには昔ながらのL字パター(マグレガー『IMG5』)と最新のL字マレット(スコッティキャメロン『スペシャルセレクト・デルマー』)を試打してもらった。

「昔ながらのL字はネックが長いものが多く、重心がヒール寄りになっていることが多かったのですが、L字マレットはネックが短くなっており、フェースの中央に重心を持ってくる工夫がされています。さらにソールにはトウとヒールに重りも装着されているので、ミスヒット時のフェースのブレがかなり解消されますね。ただ、L字マレットは重心が深くもなっているので、操作性のよさという点ではL字よりもやや薄まっている気もしますが、その点を考えてもメリットのほうが大きいと言えます」

さらに今回の試打で堀越プロは、「L字で構えると無意識にオープンスタンスになる。これはアプローチと同じ感覚で自然に構えるからだと思います」と言う。前出の名手たちの写真を見ると、確かにオープンスタンスのプロが多い。「パットもショットのひとつと考える人には合うと言えるでしょう」

L字のデメリットを解消したのが
L字マレットだ!

●重心深度を深くしトウ・ヒール側にウェートを配分
 >>ミスヒットに強くなりフェースもブレにくい

L字のかまえやすさは残しつつトウ・ヒール側にウェートを配分することで、ヘッド左右の慣性モーメントを大きくしたのが「L字マレット」。ネックの長さをL字と比較するとかなり短くなっているのがわかる

[ココもポイント]

敏感なヘッドには
鈍感なグリップを合わせてみよう

操作性のよいL字パターは「敏感」なヘッドといえる。「敏感すぎるとミスにもなりやすいので、あえて鈍感な太めのグリップと合わせて調整するのがオススメです」

週刊ゴルフダイジェスト2021年7月13日号より