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球筋が変わる! 球の強さが変わる! 「可変ウェート」ちゃんと活用してますか?

PHOTO/Hiroaki Arihara THANKS/アコーディア・ガーデン志津

いまや当たり前となった「可変ウェート」だが、意外と活用されていないのも事実。でも、ウェートを調整するだけで、出やすいミスを矯正したり、飛距離をアップできる可能性がある。最新モデルをあらゆるウェートで打ってみて、どう変わるかを調査した。

試打/横田英治
ツアー経験に基づく理論的なアドバイスには定評がある。ドライバーからパターまで試打経験も豊富でギアにも詳しい。女子プロの岸部桃子を指導している

解説/松尾好員
小誌連載「ヘッドデータは嘘つかない!」でおなじみのクラブ設計家。ダンロップでクラブ開発に携わり、その後ジャイロスポーツを設立

可変ウェートには「スライド式」と
「脱着式」の2タイプがある

可変ウェートの効果について、クラブ設計家の松尾好員氏はこう語る。

「ウェートを動かすことでヘッドの重心位置を変え、フェース面上のスイートスポット位置を変える。その結果、球筋や球の高低などが調整できるわけです。ですが、『ドロー』や『フェード』とヘッドの目盛りに書いてあっても、誰もが簡単にドローやフェードが打てるものではありません。あくまでウェートによって重心距離や重心深度が変わるということを理解しておきましょう」

そこで、ギアにも精通する横田英治プロに、可変ウェートを装備した最新ドライバーを試打してもらい、その機能性や進化を分析してもらった。横田プロによると、「ウェート自体の重さや動かせる位置、範囲など、モデルによってその効果は異なりますが、重心位置が変わることは間違いありません。ですから、たとえばスライスの曲がり幅を少し抑えたり、出球の高さを少し高くといった調整は十分に可能です」

可変ウェートには、ウェートの位置を動かせる「スライド式」と、ウェートを取り替えられる「脱着式」の2つのタイプがある。スライド式のドライバーを使う横田プロは、その機能があるならぜひ活用してほしいと語る。

「とくにトウ側、ヒール側に動くウェートは球の曲がりに影響するものですし、重心距離が変わるため、振り心地も違った印象になります。私自身もその日の球筋を見て、ウェート調整することもあるくらいです。使ってみることでヘッドの重心位置もより感じやすくなるかもしれません」

可変ウェートは
素材や製造技術の進化によって実現した

可変ウェートが可能になったのは、素材の進化や製造技術の進化により、余剰重量が生まれたことが大きい。ウェートの可動部や脱着部を作れば、そこに必ず重量が取られてしまうが、余剰重量が確保できたことで、さまざまな調整システムが開発されたのだ


可変ウェートの歴史

04年のテーラーメイド「r7」の登場でウェート調整の開発が本格化。00年前後にカスタムメーカーで脱着式のモデルはあったが、この分野ではテーラーメイドがリードする形で技術革新が進み、さまざまなウェート調整機能が生み出され、今では当たり前の機能になった。

<2004年> 可変ウェートの先駆け
テーラーメイド「r7 クワッド」

「『r7』は市販品としてデザインが完成されていたし、ウェートビスの設計も高水準。トウやヒールを重くすることでフェードやドローが打ちやすくなる画期的な機能に『やられたな』と思いました」(松尾)

<2007年> スライド式の元祖
ミズノ「MP600」
「MP600」に搭載されたウェート位置を自由に変えられる「ファーストトラックテクノロジー」は、スライド式の元祖といえるだろう。ウェート(6g)が2個あり、全部で15通りの設定が可能だった

<2013年> スライド式を世に広めた
テーラーメイド「SLDR」
スライド式ウェートを世に広めたのが「SLDR」だ。18gのウェートを動かすことでドロー系、フェード系の球筋に変わると大きな話題を集めた。このシステムがテーラーメイドのMシリーズに継承された


「スライド式」6モデル

まずはトウ-ヒール方向にウェートが動かせるスライド式6機種を横田プロに試打してもらった。

「スライド式のメリットは扱いが簡単なことと、細かい位置調整ができることです。基本的にトウ-ヒールという左右のウェート変化は球筋に大きく影響してきます。トウ側にウェートを配置すれば、重心距離は長くなり、フェースの返りが抑えられます。逆にヒール側を重くすれば、重心距離が短くなり、フェースが返りやすくなる、つまりつかまりが向上するわけです。ただ、ヘッドに明記されているようなドローが出る、フェードが出るというものではなく、人それぞれの球筋、スライス系なら右の曲がりを抑制するなどの効果で考えるのがベストです」

「試打したキャロウェイの2機種はスライドの幅が広く、その違いをより感じやすかったです。『マックス』は高慣性モーメントのヘッドで深重心、一方『マックスLS』は浅重心で、低弾道で強い球が出るのが特徴ですが、ウェート位置の変化で、出球の高さや曲がり具合が変わり、ウェート効果が大きく感じられました」

「タイトリスト『TSi3』は、変わりすぎないのが特徴です。プロや上級者は微妙な感覚が分かるので、変化が大きすぎると球筋が変わりすぎてしまいます。上級者が好むタイトリストらしさを上手く残している印象です」

今回、標準(センター)、トウ側、ヒール側の3つのウェート位置で試打し、弾道測定器とフィーリングの両面で横田プロが分析。なおウェート位置の変化に伴う重心角の違いもデータ化した。重心角は数値が大きいほど、ヘッドが返りやすい、つかまりがいい傾向がある。細かな評価については、各モデルをチェック。

キャロウェイ『エピック マックス』
「ヒール寄りにすると強い弾道に」

●ヘッド体積/460cc ●ロフト角/10.5度 ●ウェート重量/12g ●重心角/36度(トウ側)、37度(センター)、38度(ヒール側)

「ウェートが12gあるため効果を感じやすい。ヒール側にするとクラブが軽く感じられ、振りやすさがアップ。フェースが返るため、ロフトが少し立ち気味になり、弾道が強くなって飛距離が伸びます。逆にトウ側にスライドするとフェースの返りが少し抑えられ、ストレートに飛び出す、きれいなフェードボールが打ちやすくなります。かといって球がつかまりにくい感じもありません」(横田・以下同)

トウ側は高さが出てスピンも入る
「トウ側にするとロフトが少し寝る感じになり、打ち出しが高くなります。当然、スピンも入るので、球が上がらない人はトウ側がいいでしょう」

キャロウェイ『エピック マックスLS』
「ヒール寄りにするとがっちりつかまる」

●ヘッド体積/460cc ●ロフト角/10.5度 ●ウェート重量/9g ●重心角/33度(トウ側)、34度(センター)、35度(ヒール側)

「『LS』は浅重心設計の低スピンモデルですが、ウェートを動かしても球が上がりすぎず、中弾道の強い球が出ました。ヒール側はよりヘッドが走る感じがあり、フェースが返りやすくなります。がっちり球をつかまえるので飛距離も出ました。一方、トウ側はセンターと似たフィーリングでした。それほどフェースの返りが抑えられる感じはなく、フェードヒッターの自分が思い描く球筋が打てました。アマチュアにはヒール側がおすすめです」

スライド幅が広く違いがよく分かる
「『マックス』も『マックスLS』もスライド幅が広く、ウェート調整の自由度が高い。ただハードヒッター向けのヘッドではあるので、ヘッドそのもののつかまりやすさは、マックスのほうが上です」

タイトリスト『TSi3』
「重心が変わりすぎないのがいい」

●ヘッド体積/460cc ●ロフト角/10.0度 ●ウェート重量/8g(実測値) ●重心角/29.5度(トウ側)、30度(センター)、30.5度(ヒール側)

「1発目のセンターで打ったときの打感の軟らかさが抜群でした。その後、トウ側、ヒール側とウェートを変えましたが、どちらも打感が変わらず、軟らかいままなのにはびっくり。基本的にフェード系のヘッドなのでトウ側にするとスライスが助長される傾向があります。ヒール側にすると少しドローする感じなので、アマチュアならヒール側のウェートがベストでしょう。変わりすぎないのがいいです」

ウェートが軽いため弾道変化は小さめ
キャロウェイの2モデルと違い、スライド式だが、無段階で設定はできない。「ウェートの重さが軽めなので位置が決まっているのがかえって扱いやすい。調整しても変わりすぎないのがメリットといえます」

ピン『G425 LST』
「トウを重くするとより振りやすくなる」

●ヘッド体積/445cc ●ロフト角/10.5度 ●ウェート重量/14g ●重心角 /38度(トウ側)、39度(センター)、40度(ヒール側)


「トウ側に配置するとタイミングが取りやすく、振り抜きやすいです。標準(センター)の状態でもつかまりはいいですが、ヒール側にするとさらにつかまりがよくなる。ただし、少し振りにくくなる印象です」

ピン『G425 マックス』
「トウ側にするとヘッドの返りが抑えられる」

●ヘッド体積/460cc ●ロフト角/10.5度 ●ウェート重量/26g ●重心角/39度(トウ側)、40度(センター)、41度(ヒール側)


「センターとヒール側では振り心地もつかまり具合も変化が少ないですが、トウ側にセットすると明らかにヘッドの返りが抑えられます。とはいえ重心角の数値からも分かる通り、総じてつかまりやすいヘッドです」

ブリヂストン『ツアーB X』
「センターとヒールは軟らかい打感に」

●ヘッド体積/460cc ●ロフト角/10.5度 ●ウェート重量/5g ●重心角/34度(トウ側)、35度(センター)、36度(ヒール側)

「ウェートをセンターまたはヒール側に配置したときは打感が軟らかく、フェースに球が乗る感覚があります。その結果、スピンが適度に入って球も上がりやすいです。ただ、トウ側になると打感が少し悪くなります」

「脱着式」4モデル

スライド式の6機種に対し、脱着式4機種をテスト。構造部のシステムや余計な重さがないぶん、組み込みやすいのが脱着式だ。

「トウ側、ヒール側でウェートを付け替えるタイプは、スライド式3機種と同じで球のつかまり具合いの調整を狙ったものです。一方で、ソール後方のウェートの重さを変えることで、重心の深さを変えられるタイプもあります。重心位置をフェースに近づける(=浅重心)ほど低スピンになり、逆に重心を深くするほどスピンが入りやすくなります。その結果、球の上がりやすさも変わります。球が上がりにくい人は、深重心、つまりヘッド後方を重くするパターンが有効です。重心が深くなるとスイートエリアも広がるため、ミスヒットにも強くなります」

「トウ側・ヒール側の脱着式では、スリクソン『ZX7』がウェートの入れ替えによる効果が大きかったです。トウ側とヒール側のウェートを入れ替えるだけで、球筋がドロー、フェードと変わりました。ヘッド後方のウェートを交換できるタイプでは、プロギア『R5F』が効果を実感しやすいモデルです。ただ、ヘッド後方を重くしすぎると振りにくくなるので注意が必要です。クラブの機能は重心位置でさまざまに変化します。可変ウェートが付いているのであれば、いろいろ試すことで飛距離アップ、方向性アップが可能になるはずです」

スリクソン『ZX 7』
「ヒールを重くするとかなりつかまる」

●ヘッド体積/460cc ●ロフト角/10.5度 ●ウェート重量/トウ8g、ヒール4g ●重心角/32度(通常時)、33度(トウ4g、ヒール8g)、35度(トウ4g、ヒール12g※別売)


「標準装備の8gと4gの入れ替えで球筋が見事に変わりました。これにはびっくりです。試しに別売12gをヒール側につけましたが、ヒール側を重くすると確実につかまりはアップします。通常時のトウ8g、ヒール4gに戻すと、つかまりが抑えられ、フェードが打ちやすく感じました。もともと操作性がのよいヘッドなので、ウェートの調節で曲がり幅を抑える効果もあります」

プロギア『RS5 F』
「重くすると明らかに上がる」

●ヘッド体積/460cc ●ロフト角/10.5度 ●ウェート重量/トウ8g ●重心角/30度(通常時)、32度(15gウェート※別売)、28度(3gウェート※別売)

「ヘッド後方を重くすると深重心になるので球が上がりやすくなります。標準の8gでも十分に上がりますが、別売15gにするとさらに球が上がりやすくなります。ただし上がりすぎて飛距離をロスする可能性もあり、重すぎることで振りにくく感じるかもしれません。ウェートを軽くすると振りやすさはアップしますが、つかまりが少し悪くなります」

プロギア『RS5+』
「軽くしてもしっかりつかまる」

●ヘッド体積/445cc ●ロフト角/10.5度 ●ウェート重量/5g ●重心角/38度(通常時)、42度(15gウェート※別売)、37度(3gウェート※別売)

「もともと右に行きづらいヘッドのため、ウェートを重くするとつかまりがさらによくなり、左に行きやすくなります。標準の5gか、さらに軽い3gのウェートにすると振りやすさが向上し、適度なスピンで球も上がってくれます」

コブラ『ラッドスピードXB』
「軽くすると低く強い球になる」

●ヘッド体積/445cc ●ロフト角/10.5度 ●ウェート重量/6g ●重心角/35度(通常時)、40度(12gウェート※別売)、33度(2gウェート※別売)

「ウェートを重めの12gにすると少し振りにくくなりますが、飛距離は出ます。これはヘッド重量そのものが上がったからかも。もともとソール前部に8gの固定ウェートがあるので、後方を軽くするとさらに浅重心になり、球が少し強くなります」

週刊ゴルフダイジェスト2021年5月25日号より